日産 サニー(B10型):昭和41年(1966年)4月発売
初代サニーが登場した1966年(昭和41年)はすでに名神高速道路が完成し、1969年には東名高速道路も開通しようかというモータリゼーションが本格化する時代だった。これによって東京〜神戸間をクルマで6時間で走れるわけで、サニーはそうした高速走行に耐えうる最低限の性能を備えたモデルとして登場した。当初の設計は800ccクラスだったとも言われるが、高速化する環境に対応するために1000ccとされた背景がある。
サニーは、オーソドックスなセダンスタイルに止まらず個性的な部分もある。ノーズがかなり長く、逆にトランク部分の出っ張りが小さくされ、リアウインドーの傾斜したスタイルは、いわゆるファストバック的なもので当時としては斬新だった。ボディの仕上げの良さも目立った。サイドにプレスラインを1本入れてあるが、当時のクルマには珍しく粗雑さがまったく見られない。ドアの立て付けも正確でボディにぴたりとはまり込んでいる感じに仕上げられている。この仕上げの良さは当時の国産乗用車の中で最高級と言えるものだ。
ボディに関しては補強メンバーなどを使用しないフルモノコックボディとなっており、強度と軽量(スタンダード:625kg)を両立させるのにひと役買っていた。
搭載されるエンジンは1Lの直4 OHVだ。クランクシャフトを3メインベアリング支持とし、カムシャフトがシリンダーブロックの上部にあるハイマウントカムとした。これによってプッシュロッドを短くすることができるので、高回転でのバルブの追従性が高められるメリットがあった。
また、シリンダーヘッドにはアルミを用いて熱効率の向上が図られるなど、当時の最先端の設計となっている。ヘッドにアルミを使っているため、エンジン単体重量が91.5kgというのも軽量化、操縦性の向上に役立っていた。このエンジンは最高出力56psを発生するが、正確には988ccで56psなので1Lあたり56.6psとなり、これだけ見てもこのクラスでは当時の高性能エンジンといえた。パワー/ウエイト レシオは11.2kg/psだった。
トランスミッションはコラム式の3速MTを採用した。当時、すでにフロア式の4速MTが多くなっていたが、3速にしたのはフレキシブルなエンジンと合わせてイージードライブを狙った結果だった。7.7kgmのトルクを3600rpmで得られるというエンジン特性も、1つのギアのカバーする範囲を広げ、このトランスミッション採用の理由となっている。最高速度は135km/h、0→400m加速は20.9秒と発表されており、これは当時のコンパクトカーでは高性能で1.5Lクラスに匹敵するといわれた。
サスペンションはフロントが横置きリーフスプリングを使用したダブルウイッシュボーン式、リアは半楕円のリーフスプリングを採用したリジッドアクスルだ。最小回転半径が4mと当時としても小さく、まだ矮小な路地が残る都市部の道を走るのにも利便性が高かった。ブレーキはフロント/リアともに油圧によるドラムブレーキを採用した。
ボディサイズは当時の1000ccクラスのクルマの中でもコンパクトな方だったが、室内に関しては広さを確保していた。シートはフロントがセパレートシート、リアがベンチシートとなっている。とくにフロントは、このクラスの乗用車のシートとしてはかなり本格的なものとなっていた。
発売後、初代サニーは高い評価を受けることとなり、以後、日産の大衆車の代名詞としてサニーの名は長く使われていくこととなる。サニー1000発売直後にトヨタがカローラ1100を発売。以降、サニーとカローラは大衆車のライバルとして競合していくことになる。
ダットサン サニー1000 スタンダード 主要諸元
●全長×全幅×全高:3800×1445×1345mm
●ホイールベース:2280mm
●重量:625kg
●エンジン型式・種類:A10型・直4 OHV
●排気量:988cc
●最高出力:56ps/6000rpm
●最大トルク:7.7kgm/3600rpm
●トランスミッション:3速コラムMT
●タイヤサイズ:5.50-12 4P
●価格:41万円