クルマ購入時や車検(自動車継続検査)を通すときになどに加入している自賠責保険。みずから選択する任意保険とは異なり、強制的・自動的に加入しているためその補償内容を知らないという人も多いのではないだろうか。先日、自賠責保険料値上げのニュースもあったが、ここでは自賠責の内容について、もう一度確認してみた。

自賠責保険は被害者の救済を目的としたもの。しかし、それだけでは不十分

自動車損害賠償責任保険、いわゆる自賠責保険は交通事故による被害者を救済するために昭和の中ごろに創設された保険。それ以前は無保険のままクルマを運行することもでき、相手方に事故による損害を与えると賠償できずに破産するということもあった。これが社会問題化したのは、クルマを買えるほどなのに(当時は裕福でないと買えなかった)被害者が救済されず、泣き寝入りになることが多発したこと。交通事故が現在よりずっと多かった時代だ。

そこで、クルマやバイクなどすべてのクルマ(原動機を持たない軽車両を除く)に対し、基本的な対人賠償を確保することを目的とした保険への加入が義務付けられた。これが自動車損害賠償責任保険の目的で、名前が長いため通称は「自賠責」や「強制保険」などと表現されることが多い。

この保険の特徴は「被害者の救済を目的」としたもののため、相手のクルマや事故によって破損した信号機や電柱などの「モノ」は補償の対象になっていない。あくまで「人」のためだけに使われる、というのが大きなポイント。

この保険は無保険車による事故で被害者が不利益を受けないためのものだが、賠償範囲は限定的である。例えば、クルマにはねられた歩行者に過失がない場合、被害者1人につき支払われる保険金は、死亡した場合で3000万円。後遺障害を認定された場合は段階に応じて75万円から最大3000万円となっていて、常に介護が必要となる重度の後遺障害(第1級)を負っても4000万円までしか支払われない。

現代の賠償基準からすると、自賠責から支払われる保険金ですべての賠償をカバーすることはできない。だからこそ、自賠責での支払額を超える部分をカバーする任意保険に、ほとんどの人が加入するわけだ。

交通事故の例を照らし合わせると、任意保険の重要性が浮き彫りに

任意保険は契約内容を自由に選べるが「対人・対物」の補償として「無制限」を選ぶユーザーが多い。交通事故の民事裁判の例では、死亡事故は被害者1人で1億円前後、信号機を損壊させた場合の復旧工事を含めて数千万円の賠償を命じられるケースもある。そのため、任意保険に加入しないまま自賠責だけでクルマを運行するのは、無謀としかいいようがない。クルマに乗るなら任意保険に加入して、対人・対物への補償を無制限にするのが賢明である。

前述したように原動機付自転車(原付バイク)を含むすべての車両は自賠責保険に加入しないと運行できないのだが、最近は無保険車が増加して問題になっている。車検(自動車継続検査)を受ける場合は、車検の有効期間分以上の自賠責保険に加入していないと合格しないシステムになっている。しかし、車検切れの場合は対応できない。

もし自賠責に未加入のクルマを運転した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられる。さらに交通違反にもあたり、違反点数6点で即座に免許停止処分。また、車検が切れているクルマを運転すると「無車検運行」にあたり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金、違反点数は6点となる。無保険と無車検は同時であることも多く、その場合は1年6カ月以下の懲役または80万円以下の罰金、違反点数は6点となる。

画像: 車検に合格すると発行されるステッカー。

車検に合格すると発行されるステッカー。

国土交通省は、こうした無車検車に対する新たな対策を2018年から行っている。スピード違反を取り締まる最新のレーザーレーダー式装置に似たものを使う。道路に可搬式の「ナンバー自動読取装置」を設置し、公道を走行する車検切れ車両を補足して直接指導・警告するというものだ。

車検証はすでにデータ化されているし、将来は電子化される。この車検データから割り出した無車検と思われる車両のオーナーに、ハガキを送っているという。今後はより無車検車と無保険車の問題がクローズアップされることになるだろう。(文:丸山 誠)

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