国内外の多くのコンパクトカーが採用し、注目を集めている1.5L以下の直列3気筒エンジン。いったいこのエンジンのどこに魅力があるのだろう? さっそくその秘密に分け入ってみることにしよう。

大トルクと低燃費を両立させる直列3気筒エンジン

マイナーなイメージを持たれがちだった直列3気筒エンジンが、ここ数年で国の内外を問わず1.5L以下エンジンの主流レイアウトになっている。

BMWは1.5L直列3気筒ターボエンジンを現行の1シリーズ、2シリーズとMINIに搭載している。フォルクスワーゲンもTクロスやポロに1L直列3気筒ターボを搭載し、傘下のプレミアムブランド アウディでもQ2に搭載する。

日本ではデビューしたてのダイハツ ロッキー/トヨタ ライズに1L直列3気筒ターボエンジンが搭載され、2020年2月に発売される新型トヨタ ヤリスの1.5L車では、直列3気筒自然吸気エンジンを採用する。

直列3気筒エンジンを搭載する大きな理由は、経済性とコンパクトさ、そして設計を含めた製造の合理化だ。一般にガソリンエンジンは同じ排気量なら、気筒数が少ない方がトルクが太くなる。日常の運転には最大トルクが大きく関係し、最大トルクを低い回転数で発生できる動力ユニットを搭載すれば、俊敏で加速の良い車両になる。

さらに同じ排気量で気筒数が少ないと、シリンダー内の冷却効果が下がるためエネルギーロスが少なくなる。このため、燃費向上が期待できる。つまり直列3気筒エンジンは、同クラスの直列4気筒よりトルク感があり、燃費でも優位に立てる傾向があるということだ。

画像: フォルクスワーゲンの新型コンパクトSUV「Tクロス」には、1L直列3気筒ターボエンジンが搭載されている。

フォルクスワーゲンの新型コンパクトSUV「Tクロス」には、1L直列3気筒ターボエンジンが搭載されている。

エンジンのモジュラー化が追い風に

直列3気筒エンジンは、そのコンパクトさゆえのメリットも大きい。前後輪の荷重車両重量を平均化しやすいフロントミッドシップへの搭載も可能だし、エンジンルーム内に余裕ができるので、電動化用コンポーネントの設置やクラッシャブルゾーンの増大にも貢献できる。もしこれらに充てなければ、フロントオーバーハングを短くできるため、遠心力の影響を受けにくいボディとなり、高速旋回時でもコントローラブルになる。

また、気筒数が少なければエンジンの部品点数も少なくなり車両の軽量化に貢献する。エンジンの軽量化はリニアでシャープなハンドリングを提供し、日常走行での走りの楽しさにもつながる。

エンジンのモジュラー設計が進む中、2L直列4気筒エンジンから1気筒をはずして1.5L直列3気筒エンジンにすることが容易にできるようになったことも後押ししている。

新型トヨタ ヤリスの1.5Lエンジンと、レクサス UXの2Lエンジンはその好例だ。ヤリスの1.5L直列3気筒エンジンのボアは80.5mm、ストロークが97.6mmで、レクサス UXの2L直列4気筒エンジンのボア、ストロークと同一だ。つまりは直列3気筒エンジンの開発費用を抑えることができ、リーズナブルな搭載車両の販売価格を実現できることとなる。

大きな振動音がともすると気になる直列3気筒エンジンだが、それを補って余りあるメリットは、ユーザーにとっても自動車メーカーにとっても大きな魅力だ。コンパクトカーの動力源としての主流の座は当分安泰のようだ。(文:猪俣義久)

画像: 新型トヨタ「ヤリス」に搭載される新開発1.5L直列3気筒エンジン。ハイブリッドシステムとも組み合わされる。

新型トヨタ「ヤリス」に搭載される新開発1.5L直列3気筒エンジン。ハイブリッドシステムとも組み合わされる。

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