1980年-90年代、超ド級のレーシングカーが壮絶なバトルを繰り広げていた。最高出力1000ps、最高速400km/h、決められた燃料使用量でレースをいかに速く走り切るか、メーカーが知恵を絞ったことで様々なマシンが誕生したこともレースを面白くした。この短期集中連載では、そんなグループCカー時代を振り返ってみよう。第3回は「ポルシェ962C」だ。

最強を誇った1985-86年にはプライベーターも大挙参戦

1985年、ワークスポルシェは962Cにアップデートする。まだ充分なポテンシャルを発揮していた956を代替えしたのは、FISA(当時の国際モータースポーツ連盟)がドライバーの足先を前輪車軸より後ろに置く新しい安全規定を導入したためだった。

ポルシェはこの安全規定を先行して導入していた北米のIMSAシリーズに参戦するため、956をIMSA・GTP規定に合わせた962(956がツインターボなのに対し、こちらはシングルターボ)を開発、1984年から出場させており、この962をグループC仕様に仕立て直したのが962Cというわけだ。

956と962Cの大きな違いは、ドライバーの足元を後退させたことによるホイールベースの延長で、外観上ではフロントのホイールハウスからドアまでの長さの違い(962Cの方が150mm長い)となって現れている。そのほかにもフロントカウルの変更やリヤタイヤ大径化などのモディファイが施されていた。

エンジンは当初は956の2.65Lエンジンを引き継いでいたが、その後、ポルシェ独特のモジュラー型のシリンダー構造を利用して2.8L、3Lと排気量を拡大。最終的には3.2L仕様まで登場している。

戦績面では1985~86年までは最強を誇ったものの、次第にジャガー&メルセデスの新世代グループCマシンを相手に防戦一方となり、1987年にWSPC(前年にWECから名称変更)のタイトルをジャガーに奪われ、1988年にはついにル・マンの王座からも陥落。この年をもってワークス活動は終焉し、以降はヨーストレーシングにワークスマシンを託し、1993年まで製造が続けられた。

後期にはプライベーター用マシンのモノコック製作を請け負う外部会社も登場して、夥しい数の962Cが誕生し、IMSA用の962を含めその総数は約150台近くになると言われている。

画像: 956に比べてホイールベースが120mm延長され、安全性能とともに走行性能もアップしている。

956に比べてホイールベースが120mm延長され、安全性能とともに走行性能もアップしている。

ポルシェ962C(1988年)主要諸元

●全長×全幅×全高:4770×1990×1015mm
●ホイールベース:2770mm
●車両重量:900kg
●エンジン型式:935/83
●エンジン:水平対向6気筒DOHCツインターボ
●ターボチャージャー:KKK
●排気量:2994cc
●最高出力:850ps
●駆動方式:MR

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