なぜメートルとインチが混在するの?
一般に乗用車用タイヤのサイズは、【タイヤ断面幅】/【扁平率】R【リム径(=ホイール直径)】を示している。アルファベットのRはラジアル構造を意味する。
たとえば「255/40R21」であれば、「タイヤ幅255mm、扁平率40%のラジアルタイヤで、21インチホイール用」ということになる。そこで疑問なのが、なぜタイヤ幅はミリメートルで表記し、ホイール直径は体系の異なる単位のインチで表記されるのかということだ。
現在のラジアルタイヤを発明したのは、フランスのミシュランだ。フランスはメートル法を発案した国であるため、タイヤ幅のサイズにミリメートル表示を使用した。しかし、先ほどの例のリム径21インチをメートル表記すると533.4mmとなり、表記が長くなってしまう。そもそもリム径がわかりづらい。そこでタイヤ断面幅のみミリメートル表示とし、リム径はインチ表示にしたというのが定説だ。インチ、ミリメートル混在の「255/40R21」とミリメートルだけの「255/40R533」。慣れもあるだろうが、どちらが分かりやすいかは一目瞭然だ。
ミリメートルとインチが混在するタイヤサイズ表記は、実は国際標準化機構が定めた国際標準規格で公式に定められている。「ISO 4000-1(Passenger Car Tyres and Rims)」の「4.1.2 Nominal section width 」によれば、タイヤ断面幅はミリメートル、リム幅はインチ表示するルールとなっているのだ。この規格に従い、世界中のタイヤメーカーはこの方式でタイヤサイズを明記している。
なぜタイヤ断面幅は「5」で終わるの?
タイヤ断面幅は、自動車用タイヤなら必ず末尾が「5」で終わる。これはどうしてなのか。
まずタイヤ断面幅だが、実は実測値ではない。日本工業規格(JIS)による「自動車用タイヤ−呼び方及び諸元(JIS 4202-1994)」によれば、タイヤ断面幅と設計上のタイヤ断面幅には数ミリの違いがある。205サイズなら207mm、215サイズなら213mm、235サイズなら236mmといった具合だ。
このようにタイヤ断面幅は設計断面幅のキリのいい近似値となっており、この場合のタイヤ断面幅は「呼び幅」と呼ばれ、キリの良い近似値にすることを数字を「丸める」といい、キリの良い近似値を「丸め幅」という。
この数字の丸め方は日本工業規格の「JIS Z 8401 数値の丸め方」に従っている。ただしこの数字の丸め方は元々は工業用であり、自動車タイヤ用ではない。そのため、日本工業規格には、タイヤの丸め幅を5に指定する規定はない。では、何が自動車用タイヤのタイヤ断面の呼び幅を「5」に丸めさせているのだろうか。
実はこれも国際標準化機構が定めた国際標準規格で定められている。「ISO 4000-1(Passenger Car Tyres and Rims)」の「4.1.2 Nominal section width 」によれば、乗用車のタイヤ断面幅の末尾を「0または5」にするよう定めている。さらに乗用車用の5度テーパーリムに取り付けられるタイヤの断面幅は、必ず5になるよう指定している。この規格に従い、乗用車用タイヤの断面幅は必ず5で終わるよう、丸め幅を5とし、設計上の断面幅を5に丸めているのだ。
ちなみにJIS規格では乗用車だけでなく、15度テーパーリムに取り付けるトラックやバス用タイヤもタイヤ断面の呼び幅の末尾も5で終わるように規格化しているのだ。(文:猪俣義久)