定評のあった静粛性、快適性にもさらに磨きがかけられた
新しいエクスプローラーについてフォードが強調するのは、「すべての進化はあくまでユーザー達の声を積極的に採り入れた結果」ということだ。日本市場でも販売台数トップを走るベストセラーSUVは、デザイン、走り、クオリティなどありとあらゆる面で彼らの意見や提案を聞き、常にそれを製品に反映させてきたと胸を張る。
そう聞いた上で実物を目にして思うのは、今もっともユーザー達が強く望んでいるのは、主にヨーロッパから発信されるいわゆるプレミアムSUVに負けない内外装、そして走りのクオリティ感なのだろうなということだ。そしてフォードは、見事その要求に応えてみせたと言えそうである。
ボディ構造やサスペンションなど多くの部分を継承する新型は、そういう意味ではビッグマイナーチェンジとも括れるが、実際は先代のままという部分はほぼ皆無だ。
たとえば外装。フロントまわりはパネル類が一新され逆台形のグリルも大型になり、表情がグッと逞しくなった。さらにインテリアは完全にリデザインされて、従来のチープさを払拭している。よく見ると成形品質は今イチだし、ダッシュ上面がウインドウへ映り込んで視界を遮るなど、まだ甘さはあるのだが、少なくともひと目見ただけでガッカリなんてことは、もうない。
乗ったのは上級グレードのエディバウアー。アシストグリップに手をかけ、左側の運転席に身体を滑り込ませる。先代では右ハンドルが主体だったが、新型は当面、左ハンドルで行くという。これもユーザーのニーズに応えた結果だそうだ。
当たりはふんわり、けれどコシもある大きなシートに座り、太くて大径のステアリング、やはりゴツめのシフトノブを操作して走り出すと、まずはこれまでも定評のあった静粛性、快適性にもさらに磨きがかけられたことがわかった。
特に印象的な静粛性に効いているのは、吸排気音の抑制や防音素材の広範採用、空気抵抗の低減などだという。そして快適性の面では、曲げで63%、捩りで55%も向上したフレーム剛性の影響が大きそうだ。独立フレームらしいユサユサとした動きは確かにまだ若干あるが、むしろそれが直接的な入力をやさしく受け流して、ゆったりした乗り味に繋がっている。せっかくSUVに乗るなら、こうじゃなくちゃという味である。
ステアリングの反応は穏やかだが、それを不満とする人はいないはず。車両姿勢安定化を図るアドバンストラック、横転を抑止するロールスタビリティコントロールなど、最新デバイスの搭載もありがたい。
エンジンはこれまで同様、エディバウアー用の4.6L V8、そしてXLT用4.0L V6の2種類を用意。特に前者は3バルブヘッドや可変バルブタイミング機構などを採用、従来の242psから296psへと大幅な出力増を実現。ATも6速へと進化を果し、燃費は10・15モードで6.0km/Lから7.3km/Lへと改善されている。
この4.6L V8、トルクに十分以上の余裕があるのは予想通りとして、回して気持ち良いのは意外だった。V8らしいビートを聞かせながら力強くも滑らかに吹け上がる様は、なかなか爽快だ。ただし、このエンジンに対しては、見直されたというブレーキがまだまだ容量不足と感じた。
他にも、3列目シートの座面高アップによる視界の改善や、2/3列目シートの折り畳み機構の改善による従来あったラゲッジフロアの傾斜の解消など、ユーティリティの面でもユーザーの声に応えた改良が施されている。一方、従来3分割だった2列目シートが40:60の2分割となったが、おそらくこれもリサーチの結果なのだろう。
あらゆる面でユーザーのニーズを汲み取り、実力を向上させた新型エクスプローラーは、きっとまた厚く歓迎されるに違いない。それは至って当然の成りゆきのはずだが、その当たり前のことができていないクルマは少なくないわけで……。ナンバー1SUVがナンバー1であることには、なにも特別な理由などないのである。(文:島下泰久/Motor Magazine 2006年1月号より)
フォード エクスプローラー エディバウアー(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4930×1870×1835mm
●ホイールベース:2890mm
●車両重量:2230kg
●エンジン:V8SOHC
●排気量:4600cc
●最高出力:296ps/5750rpm
●最大トルク:407Nm/4000rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:520万円