昭和は遠くなりにけり・・・か。以前に連載した「昭和の名車」では、紹介しきれなかったクルマはまだ数多くある。そこで、1960年代以降の隠れた名車を順次紹介していこう。今回は「スバル レオーネ3ドアクーペ RX/II」だ。
スバル レオーネ3ドアクーペ RX/II(AG6型):昭和61年(1986年)4月発売
1986年に富士重工(現スバル)が発売したレオーネ3ドアクーペRX/IIは、駆動方式がパートタイムからフルタイム4WDとなったことでエポックメイキングなクルマとなった。ドライブトレーンは、前輪と後輪の間にセンターデフを設けることで前後の回転速度差を吸収し、タイトターンブレーキング現象を解消しスムーズなコーナリングを可能とするセンターデフ式フルタイム4WDだ。直前にマツダがファミリアにフルタイム4WDを採用したため日本初とはならなかったが、それまで乗用車型4WD車の先陣を切ってきたスバルの意地ともいえるメカニズムだ。
ライバルのファミリアとの最大の違いは、レオーネにはスバルが独自に開発したベベルギア方式のセンターデフが採用されていたことだ。ベベルギア方式の最大の特徴はコンパクトなサイズに収まることで、デフケースが従来のパートタイム4WDとほぼ同じサイズとなったのは大きなメリットだった。シンプルな機構のため耐久性が高かったのも特筆される。ファミリアはセンターデフにプラネタリーギアを使用していた。こちらも合理的ではあるが耐久性に難があったといわれる。
フルタイム4WDといってもセンターデフが差動して1輪でも空転してしまえば駆動力は伝わらないのはオープンデフの宿命だ。それではアイスバーンなどの極低ミュー路を走る場合には都合が悪い。そこでデフロックシステムが搭載された。これはコンソール部のダイヤルスイッチによって行われる。
さらにレオーネでは、デュアルレンジ・システムと称しトランスミッションギヤ比をHi/Loの2段階切り替えとしていたのも特徴に挙げられる。これはいわゆるエクストラロー的な使い方ではなく、Loレンジではエンジンの回転を高めに保ち、加速性能を重視したスポーティ走行を、Hiレンジではエンジン回転が抑えられて燃費・静粛性に優れた走りを実現するものだった。
エンジンは基本的には1984年発売のレオーネターボに搭載されたEA82ターボとなる。1.8Lの水平対向4気筒エンジンをターボチャージャーで過給したもので、スバル得意の低重心・コンパクトな水平対向エンジンの完成度を高めた。それまでのOHVからSOHCとし、ピボット部を油圧調整式にしたHLA(ハイドロラッシュアジャスター)を採用することで静粛性向上とメンテナンスフリー化も図っている。ターボは直径約50mmのタービンとコンプレッサーが一体化された小型軽量ユニットを採用。これに加えEGI(電子式燃料噴射装置)で吸入吸気量に合わせたガソリンを緻密にコントロールすることにより、より効率的に過給している。
サスペンションはフロント:ストラット/リア:セミトレーリングアームというオーソドックスなもの。RX/IIでは、この4輪独立サスペンションをベースにスポーツチューニングを施した。具体的には4WDスタンダードに比較してスプリングレートをフロント4%、リア12%強化し、ショックアブソーバーの減衰力を約2倍に高めた。さらにリアスタビライザーも追加している。ブレーキも進化した走りに対応して、フロントにベンチレーテッドディスクを配した4輪ディスクブレーキを採用した。
スタイルは従来のレオーネ3ドアクーペを踏襲するものだ。直線基調のボディは洗練された・・・とは言い切れないが、グレーをワンポイント的に配したホワイト外装と、大型フロントエアダムスカート、大型リアスポイラーにより、スポーティ感覚や若々しさを強調したものとなっている。1986年の全日本ラリー選手権ではファミリア4WDを抑えてチャンピオンに輝き、スバルの高い4WDの技術力を大いにアピールした。
スバル レオーネ3ドアクーペ RX/II 主要諸元
●全長×全幅×全高:4370×1660×1405mm
●ホイールベース:2465mm
●重量:1110kg
●エンジン型式・種類:EA82型・対向4 SOHCターボ
●排気量:1781cc
●最高出力:120ps/5200rpm(ネット)
●最大トルク:18.2kgm/2400rpm
●トランスミッション:5速MT×2
●タイヤサイズ:185/60R14
●価格:191万円