トヨタ カローラII リトラGPターボ(EL31型):昭和61年(1986年)9月発売
トヨタ初のFF車としてターセル/コルサが登場したのは1978年(昭和53年)のことだった。だが、エンジン縦置きFF機構や全幅1555mmというナローボディにトヨタユーザーはあまり興味を示さなかった。そこで1982年、2代目へのフルモデルチェンジを機にカローラIIを追加し、3兄弟体制をとる。ただ、FF機構などは初代を引き継いだので販売は苦戦を強いられた。
1986年5月、エンジンからシャシまで全てを一新して登場したのが3代目ターセル/コルサ&2代目カローラIIだ。ボディ形状は3ドア/5ドアHBと3ドアリトラが用意されたが、中でも注目されたのが、Bセグメントの小型2ボックスでは例のないフルリトラクタブルヘッドランプを備えた3ドアリトラだった。AE86型スプリンタートレノを彷彿とさせる精悍なフロントマスク、新開発の1.5Lエンジン、120万円を切る価格設定などで多くの若者の心を掴んだ。ただ、エンジンは3バルブSOHCとはいえ79psで、モアパワーを望む声は後を絶たない。
発売から4カ月後の1986年9月、カローラII(3兄弟)に待望のターボ仕様、3ドアリトラGPターボが追加される。エンジンは1.5Lの3E型に空冷インタークーラーターボをドッキングし、燃料供給を可変ベンチュリーのV型キャブレターからEFI-Dに換装した3E-TE型だ。ユニークなのは過給圧を通常モードとLoモードに制御する2モードターボシステムを採用したこと。これは、排気マニホールドにバイパス回路と開閉弁を設け、Loモードスイッチを入れると弁が開き、排気ガスの一部をバイパスさせることで、タービンへの排気ガス量を減らすシステムだ。
パワースペックは通常時110ps/17.2kgm、Loモード時97ps/15.2kgm。トヨタは、ターボゾーンに入ると急激に増大するトルク増幅を抑え雪道発進などでの扱いやすさを高めるとともに、高速道路などの一定速走行時では低燃費の効果もあると説明している。
駆動系はカローラやコロナで熟成を進めてきたエンジン横置きFFに改められたが、トランスミッション搭載の問題を克服して5速MTに加え1987年2月にロックアップ付き4速ATを追加設定したのはトヨタらしい配慮と言えた。ただ、左右ドライブシャフトが不等長なので、とくに5速MTでは急発進時のトルクステアが解消されないなどの問題が残っていたのが惜しまれる。
サスペンションはフロントがL型ロアアームのストラット、リアは左右のトレーリングアームを中空スタビライザーを内蔵した逆U字型リアアクスルビームで結び、左右の位置決めをラテラルロッドで行うツイストビーム式を採用している。もちろん6500rpmまで一気に吹け上がるターボエンジンの高出力化に対応して、ダンパーやスプリングは強化され、フロントにパフォーマンスロッド(ストラットバー)を標準装着して剛性アップも図られた。
フロントベンチレーテッドの4輪ディスクブレーキや185/60R14タイヤもターボ車専用装備だ。また、新プログレッシブパワーステアリングとセットオプションで、ダンパー減衰力をノーマルとスポーツに切り替えられるTEMSが用意されたあたりに、ハンドリング向上に対するトヨタの姿勢が見える。
エクステリアはスポーツパッケージにフロント&ルーフスポイラー、サイドマッドガード、ボディ一体フォグランプを設定してスポーツイメージを強調。さらにボンネットのフードエアインテークとデュアルマフラーカッターでターボパワーを訴求した。インテリアはタコメーターとターボメーターをセットした計器盤、合成革巻き3本スポークステアリング、本革シフトノブ、7種の調整が利くターボ専用フロントスポーツシートでコクピット感を演出している。
トヨタ カローラII 3ドア リトラ1500GPターボ 主要諸元
●全長×全幅×全高:3865×1625×1370mm
●ホイールベース:2380mm
●重量:890kg
●エンジン型式・種類:3E-TE型・直4 SOHCターボ
●排気量:1456cc
●最高出力:110ps/5600rpm<Loモード97ps/5600rpm>(ネット)
●最大トルク:17.2kgm/5600rpm<Loモード15.2kgm/3200rpm>
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:185/60R14
●価格:136万円