日産 セフィーロ(CA31型):昭和63年(1988年)9月発売
スペイン語の「そよ風」を車名としたセフィーロが日産アッパーミドルのラインアップに加わったのは1988年(昭和63年)9月。ターゲットユーザーを「美しさ・遊び心を大切にする30代前半の知的なヤングアダルト」に絞り込み、自ら運転するオーナーのライフスタイルを演出するのにふさわしいスタイリッシュなパーソナルセダンと位置づけている。オーナーの価値観を重視するため、3種のエンジン/3タイプのサスペンション/3タイプ×2種の内装マテリアル/9色の車体色の組み合わせによる「セフィーロ・コーディネーション」を採用して、従来のグレードによる差別化を廃した。
風の流れと走るイメージを表現したボディフォルムは、車名どおり「空気を切り裂いて走るのではなく、空気となじんで走るためのナチュラルな面構成」でまとめられている。低いノーズを実現するため、全車にクリスタルカバーで覆った4灯プロジェクターヘッドランプとハロゲンフォグランプを採用して、既存のフロントグリルのイメージからの脱却を図ったのも特徴のひとつだ。ボディ形態をプレスドアの4ドアセダンとしたことで、89年1月に発売される姉妹車、C33型ローレル(4ドアHT)よりボディ剛性が高く、車重は約50kg軽く、5速MTも用意されるなど、走行性能で明らかにローレルを超える存在だった。
エンジンはRB20系3種が設定された。頂点に位置するRB20DET型は鋳鉄ブロックに4バルブのペントルーフ燃焼室を持つコッグドベルト駆動DOHCで、これにタービンローター部に新開発のファインセラミックスを採用して慣性モーメントを低減した日産内製のハイフローセラミックターボを装着して205psを発生した。インマニ&ポート内径を一部絞って混合気の流速を高めるADポートや、流速が最高値となる部分に燃料噴射するためのインジェクター位置最適化、冷却効率に優れ通気抵抗を減らしたインナーフィンタイプの空冷インタークーラーなどの採用もあって、このエンジンの登場時(1985年10月)から+25psを達成している。
サスペンションはスポーツに特化することを避け、フラットでしなやかな乗り味が重視されている。フロントはストラット式で、リアとのバランスをとるためジオメトリーにハイキャスター&コンスタントトーチェンジ/アンチダイブ/ハイトレールを採用。さらにゼロコンプライアンスステアとすることで高速直進安定性と高いコーナリング性能を実現していた。リアはマルチリンク式で、付加機能のない標準型/乗り心地重視派向けDUET-SS/スポーツドライビング派向けHICAS-Ⅱの3種が、オーナーの使い方に合わせて用意されている。
とくにHICAS-IIは走行条件に応じて、最適な量とタイミングで後輪を前輪と同じ向き(同位相)に操舵して後輪の舵角制御を行うシステムで、操舵タイミングをわずかに遅らせるディレイ制御を入れたことで、高速コーナリングで圧倒的な安定性を示した。リアデフに標準装備したビスカスLSDも大きな効果を上げている。
数々の先進技術を投入したセフィーロは、高剛性ボディやRB20DETと5速MTの組み合わせで多くの注目を集めたものの、当時全盛を誇ったトヨタのマークII/チェイサー/クレスタ軍団の壁を破ることはできず、さらにモータースポーツファンが1989年8月に登場したR32スカイラインGT-Rに目を移したため、芳しい販売実績を上げることはできなかった。
テコ入れのため1990年5月のマイナーチェンジで電子制御トルクスプリット4WDのATTESA E-TSや5速ATを追加したものの、1992年5月のマイナーチェンジで2.5LのRB25DE搭載モデルの追加と同時に全車5速ATのみとなり、本来の良さが薄れたまま、94年のフルモデルチェンジを迎えたのが惜しまれる。
日産 セフィーロ スポーツクルージング 主要諸元
●全長×全幅×全高:4690×1695×1375mm
●ホイールベース:2670mm
●重量:1330kg
●エンジン型式・種類:RB20DET型・直6 DOHCターボ
●排気量:1998cc
●最高出力:205ps/6400rpm
●最大トルク:27.0kgm/3200rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:205/60R15 89H
●価格:285万円