スーパーカー御三家のひとつ、マクラーレンの最新モデルがグランドツアラーの「GT」だ。これは従来のスーパーカーでは考えられないほどの実用性と快適性を持つと言われているが、実際のところどうなのか、さっそくインプレッションをお届けしよう。

ゴルフバッグやスキーも積めるスーパーカー

画像: マクラーレンといえば、最大の特徴はこのディヘドラルドアといえるだろう。

マクラーレンといえば、最大の特徴はこのディヘドラルドアといえるだろう。

2009年に設立されたマクラーレン オートモーティブは2011年に初の量産車となるMP4-12Cを発売。日本市場には2012年から参入し、以来順調に販売台数を伸ばす。2019年は前年比+59%の353台を販売した。これはスーパーカー ブランドとしてはフェラーリ(870台)、ランボルギーニ(678台)に次ぐ台数で、老舗のアストンマーティン(314台)を抜いて、いまや「スーパーカー御三家」の地位を確立したようだ。

そんなマクラーレンの最新モデルが、2019年に発表された「GT」だ。マクラーレンのラインアップは「アルティメット」「スーパー」「スポーツ」とパフォーマンスの違いで3つのシリーズに分けられているが、このGTはシリーズとは独立した、車名のとおりマクラーレン初のグランドツアラー(=GT)として誕生した。

今までのモデルとの最大の違いは、リアにラゲッジスペースを備えたこと。ミッドシップながらエンジンの搭載位置を下げ、その上に420Lの容量を確保している。深さはあまりないが長さはあるので、フルサイズでなければゴルフバッグやスキーも積載可能だ。フロントには他モデル同様の比較的深いラゲッジスペースが150Lあり、合計570L。これなら二人分の小旅行用荷物くらいなら積めるから、まさにグランドツアラーという名にふさわしい。

画像: インパネまわりは他のマクラーレン車と大きく変わらない。ナビの画面は、最近のクルマとしては少し小さい。

インパネまわりは他のマクラーレン車と大きく変わらない。ナビの画面は、最近のクルマとしては少し小さい。

顔つきは今までのマクラーレン車とは少し異なるのだが、それでも佇まいは間違いなくマクラーレン。そのアイデンティティであるディヘドラル ドアを跳ね上げ、コクピットに滑り込む。シートはフル電動でかなり細かくアジャストできるし、ステアリングも電動でチルト&テレスコピック調整できるから、ほとんどの人が最適なドライビングポジションをとることができるだろう。ただし、ペダルは内側にオフセットしており、ブレーキと思って踏んだペダルがアクセルだった。まあ、慣れてしまえばさほど気にはならないが。

センターコンソールのボタンを押すと、一瞬のラグの後に4LのV8ツインターボが目覚める。スイッチ式のシフトでDを押し、アクセルを少し踏み込めばマクラーレンGTは穏やかに発進する。今までにマクラーレン車は何台か試乗しているが、コクピットから見る風景は大きく変わらない。GTカーとはいえ1.2mちょっとの車高は低く、街中では隣に並んだミニバンすら巨大にみえる。車幅は2mオーバーだが、車両感覚は比較的つかみやすいので街中でも路地に入り込まない限りは問題ないだろう。

今回は動画撮影がメインで、その合間のチョイ乗りインプレッション。とはいえ、市街地や高速など、そのパフォーマンスを少しは堪能できた。ステアリングとミッションの特性は変えられるが、今回はコンフォートで走ってみる。V8ツインターボは、7速80km/hでは1500rpm以下、100km/hでも1700〜1800rpmくらい(タコメーターは細かく表示していない)しか回っていない。日本の法定速度+アルファの領域でも、もちろん速さは十分に感じるのだが、とてつもなく速い!という感じではない。このクルマにとっては、それ以上の速度域が本領を発揮する舞台だからだろう。

画像: リアのラゲッジスペースは420L。この下に搭載されるエンジンは、ふだんは見ることはできない。

リアのラゲッジスペースは420L。この下に搭載されるエンジンは、ふだんは見ることはできない。

GTとはいえ、乗り心地は硬め。だが不快なレベルではなく、締まった乗り味というべきか。いわゆるスーパースポーツのレーシングカーに近いハードな乗り味ではなく、グランドツアラーらしく長時間のツーリングでもパッセンジャーに疲労感を与えないものになっているようだ。しかも室内に入り込むエンジンサウンドも抑えられているようで、少し元気な走りをしても同乗者と問題なく会話ができるレベルだ。

カーボンファイバー製モノセルによるシャシの剛性は高く、しかもそのサイズよりも小さく感じられるほど軽量に仕上がっている。ヒラヒラという感じまではいかないが、動きは見た目から想像されるより軽快だ。しかも、日常での低速域の使用を考慮したブレーキやステアリングの特性は、街中のゴーストップや右左折などでも扱いやすい。最低地上高も110mmあり、しかもスイッチひとつでフロントを20mmアップできるから、小さな段差なら注意して走れば問題ない。

今までのマクラーレン車は、純粋に走りを楽しむための、まさにピュアなスポーツカーだった。だが、このGTなら多少は実用性もあり、快適性も犠牲にしていない。それでいながら、マクラーレンらしい走りの楽しさは損なわれていない。そう考えると、マクラーレン GTは日本に最も適したスーパーカーと言えるかもしれない。(文:篠原政明/写真:井上雅行)

画像: 可動リアスポイラーなどはないが、高速走行はきわめて安定している。

可動リアスポイラーなどはないが、高速走行はきわめて安定している。

マクラーレン GT 主要諸元

●全長×全幅×全高:4683×2045×1213mm
●ホイールベース:2675mm
●重量:1530kg(DIN、オイル類+ガソリン90%)
●エンジン種類:V8 DOHCツインターボ
●排気量:3994cc
●最高出力:456kW<620ps>/7500rpm
●最大トルク:630Nm<64.2kgm>/5500-6500rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:リア縦置きRWD
●タイヤサイズ:前225/35R20、後295/35R21
●最高速度:326km/h
●0→100km/h加速:3.2秒
●WLTP 複合燃費:8.4km/L
●税込価格:2645万円

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