2006年2月、すでに日本市場で確たる人気を得ていたMINIに新しいバリエーション「Seven(セブン)」「Park Lane(パークレーン)」「Checkmate(チェックメイト)」が追加されている。オリジナルミニに由来する名前と内外装が与えられた魅力的なモデルで、これがMINIの人気をさらに高めていくことになる。当時の試乗記からもMINIの魅力がうかがえる。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年4月号より、タイトル写真はクーパーS チェックメイト)

MINIはなにか特別の「オーラ」を発している

昨年2005年に登録されたMINIは約1万3600台。この数字はボルボ全シリーズの登録台数約1万3400台を凌ぎ、アウディの約1万5400台に迫る。

MINIで興味深いのは、コンスタントに月1000台以上を売り上げていることだ。これはなぜ? BMWが造っているから? それはある面ではアタリだが、そればかりではなく、なにか特別の「オーラ」を発しているからではないだろうか。

オリジナルミニは1959年に登場した。その時点でのミニはさほどスポーティでもオシャレでもない、斬新だがちっぽけなFF経済車だった。当時はスエズ動乱のあおりを受け、原油供給が滞った英国では燃費がよく、必要最低限の装備を持った実用車を造る必要に迫られていたのだ。しかし見かけがあまりにチープなので、一般ユーザーはすぐには飛びつかなかった。

目をつけたのはむしろリッチ層の方。今の日本でいうセレブたちである。セカンドカーとしてまことにユニークで乗って楽しいクルマじゃないか、というわけである。それを見ていた中間層が次々とミニのオーナーになり、それが庶民に広がっていった。

さらにジョン・クーパーという御仁が手を入れたミニ・クーパーなるスペシャルモデルが世に出て、モンテカルロラリーでポルシェ911をやっつけて優勝するというドラマもあり、一気にミニのブランドは世界に知れ渡る。なのでミニとは「ミニ・クーパー」のことである、と認識されてしまったほどだ。そんなわけで、ミニにはこうした由緒正しい「物語性」があるのだ。

新生MINIはオリジナルのDNAを巧みに取り入れて造られた。そのスローガンは「年齢、性別、階層を問わず、乗って楽しいクルマにしよう」ということだった。こんなコンセプトのクルマは見当たらない。クルマは「クラス」にこだわって造られる工業製品だからだ。どうもこのあたりが成功のキーワードではないかと思う。

画像: MINIクーパーとMINIクーパーSに設定されたパークレーン(258万3000円〜305万5500円)。モデル名はロンドンの地名に由来し、高級、ゴージャス感を訴求した。各部分にクロームを使い渋くまとめている。

MINIクーパーとMINIクーパーSに設定されたパークレーン(258万3000円〜305万5500円)。モデル名はロンドンの地名に由来し、高級、ゴージャス感を訴求した。各部分にクロームを使い渋くまとめている。

セブン、パークレーン、チェックメイトが仲間入り

さて今回、新しく3種のバリエーションが加わった。サブネームはセブン、パークレーン、チェックメイトを名乗る。

セブンは「素」の持ち味を訴求したモデル。レザーステアリング、専用クロスシート、デルタスポークのアルミホイールに1755/65R15タイヤ、専用ロゴなどを装備。ノーマル比で価格アップは約2万〜3万円高と小幅だ。

パークレーンはロンドンの大使館や高級ホテルが立ち並ぶ地名に由来し、高級、ゴージャス感を訴求。手の込んだパイピングレザーのシート、ブリッジスポークのアルミホイールに195/55R16タイヤ、各部にクローム仕上げを施したインテリア、エクステリアを有する。MINIクーパーとMINIクーパーSに設定され前者が16万8000円、後者は7万4000円高。

チェックメイトはチェッカーフラッグをボディサイドにはためかせ、レーシングムードを訴求。クロス&レザーの専用バケットシートのカラーはスペースブルーで、同色を配した3本スポークのレザーステアリング、フレームスポークのアルミホイールに205/45R17インチタイヤを装備する。MINIクーパーとMINIクーパーSに設定され前者が18万9000円高、後者が9万5000円高。

試乗したのはMINIワン セブンから。インテリアの仕上げに好感。エンジンの出力は90psとごく控え目だがモタモタ感はない。タイヤが15インチ、しかも、サスペンションがソフトな設定なので乗り心地は良好。その分キビキビ感は多少スポイルされている。次に乗ったのはミMINIクーパー パークレーン。クロームのデコレーションは派手過ぎず、いいセンスでまとまっている。走ってみるとワンとクーパーの身のこなしの差は歴然。ゴーカートのフィーリングとはよく言ったものだ。足まわりのチューニングが実に巧みで、敏捷性はたいしたもの。出力は116psと適度で、とてもリズミカルに走れる。

MINIクーパーS チェックメイトはドライビングに本当に自信のある人向き。スーパーチャージャー付きの170psは時として手に余る。余裕といえば余裕なのだが、常にバトルを急き立てられる感もある。タイヤも17インチで足もクーパーよりさらに締め上げられているからハーシュも強い。一人で楽しみたい分にはグッドではあるが。

それで私の結論。ノーマルより2万1000円しか高くないMINIクーパー・セブンがベストチョイス。ホイールが15インチなのがよろしい。ファット過ぎるタイヤは実はスポーティではないのです。(文:御田昌輝/Motor Magazine 2006年4月号より)

ヒットの法則

MINI クーパー 5MT(ベースモデル:2006年) 主要諸元

●全長×全幅×全高:3650×1690×1415m
●ホイールベース: 2465mm
●車両重量:1270kg
●エンジン:直4SOHC
●排気量:1598cc
●最高出力:116ps/6000rpm
●最大トルク:149Nm/4500rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:FF
●車両価格:241万5000円(2006年当時)

MINI クーパー S 6MT(ベースモデル:2006年) 主要諸元

●全長×全幅×全高:3655×1690×1415m
●ホイールベース: 2465mm
●車両重量:1310kg
●エンジン:直4SOHC+SC
●排気量:1598cc
●最高出力:170ps/6000rpm
●最大トルク:220Nm/4000rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●車両価格:282万4500円(2006年当時)

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