センターボア直径が走りにかなり影響する
前回はホイールサイズの基本的な見方をあげた。その他に、ひとつ気をつけておきたいこととして、センターボア直径をあげよう。これはハブ側の円形で突出している部分と、ホイールのセンターとかみ合う部分のことだ。
純正ホイールの場合ハブ側とホイール側のセンターボア直径がピッタリ合うようになっているので、ホイールの回転がスムーズになる。社外のホイールに交換した場合、ここに隙間ができてしまうとホイールのセンターが出ないために走行時の振動が出る場合があり注意が必要な部分だ。
車外のホイールは汎用性を持たせるためにここを大きめにしていることが多いので、適正なサイズのハブリングを使用することで改善できる場合もある。
こうしてみていくとホイール交換もただ買ってきて付けるだけとはいかない。そこはメーカーの適合表と照合してみたり、信頼できるショップとの相談が必要になるだろう。
大前提として気をつけたいのがホイールに付いているJWLやVIAというマークだ。JWLは「乗用車用軽合金製ディスクホイールの技術基準に適合している」という表示。VIAは前記が自主認定であるために、それを第三者公的機関の自動車用軽合金製ホイール試験協議会が確認したという証明になる。これらのマークが付いていることで、安全なホイールであると確認できるわけだ。
もう少しマニアック?になるとアルミホイールを製造工程から見るという方法がある。いわゆる鋳造と鍛造だ。冒頭に書いたように鋳造アルミホイールは溶かしたアルミ合金を金型に流し込んで成形するものだ。比較的コストが抑えられデザインも自由度が高いメリットがある。
鍛造アルミホイールはアルミ合金に圧力を加えて作られる。圧のかけ方は二つあって、圧縮したアルミ合金を流し込む方法(溶湯鍛造法)と、加熱しながら圧をかける方法(熱間鍛造法)にわけられる。コスト的には前者の方がかからないが、分子の密度的には後者の方が高くなる。いずれにしても鍛造ホイールは圧をかけたことにより、素材の分子が均一化し強度も高くなる。同じ強度ならば鋳造より肉薄にできるので軽量となり高性能と言える。
ホイールが軽量ということは、いわゆるばね下重量が軽いという状態にできる。厳密には分けられないがバネ上とは、エンジン、ボディなどクルマの上部にある本体側で、バネ下とはサスペンションの構成パーツ、ハブナックル、タイヤ、ホイール、ブレーキシステム、駆動輪ならばドライブシャフトなどが含まれる。
サスペンションはスプリングとショックアブソーバーで衝撃を吸収したり余分な動きを抑制しているが、同じばね定数(スプリングレート)とショックアブソーバの減衰力ならば、基本的に軽いホイールの方が路面への追従性が向上する。
例えばホイールが重い場合を想定すると、不整地などでサスペンションに大きな入力が入った場合、スプリングが大きく縮む。次に縮み終わって伸び始めるとその反力で大きく伸びる。ここは伸び側の減衰力との関係になるが、重いホイールは軽いホイールと比べれば相対的に速いスピードで伸びて、その後の振動の収まりも悪くなる。逆にホイールが軽ければ、スプリングとショックアブソーバの負担は小さくなり、ショックアブソーバも十分な減衰力を発生する。結果として路面への追従性も良くなり操縦性安定性が向上するというわけだ。これもばね下が軽いメリットだ。
ホイールの軽さは乗り心地だけに限った話ではない。高速で回転しているときは、軽いホイールの方がステアリング操舵がしやすいというメリットもある。また、エンジンの力で重いホイール、タイヤを回転させるのと、軽いタイヤ、ホイールを回転させるのでは、後者の方が少ない力で済む。
ブレーキにかかる負担も、重いホイールが回転しているのと、軽いホイールが回転しているのを止めることを比較すれば、後者の方が力が少なくて済む。さらにブレーキへの負担も減る。ただしホイールは軽ければいいといっても強度の問題があるので、おのずと限界はある。逆に見た目重視のアルミホイールは重くなりがちなので注意が必要だ。このようにホイールひとつをとってもけっこう奥が深いのだ。