ロンドンタクシーの最新モデルが日本にやって来た。伝統のスタイリングを踏襲しながら、中身は何とレンジエクステンダーEV! 街中でのチョイ乗りだけど、その印象を紹介しておこう。

こんなクルマが増えれば、日本の街中も明るくなる!?

画像: JPNタクシーと並べてみる。ひとまわり以上も大きいし、ドライバーの目線の高さも違う。

JPNタクシーと並べてみる。ひとまわり以上も大きいし、ドライバーの目線の高さも違う。

ロンドンをはじめイギリスの主要な街でタクシーといえば、黒くて背の高い、いわゆる「ロンドンタクシー」。イギリスへ行かれたことのある読者諸氏には、実際に乗られた人も多いのではないだろうか。見かけよりも中は広く、けっこう快適で、しかもメチャクチャ小回りが利く。このロンドンタクシーにインスパイアされて、日本でもトヨタのJPNタクシーが生まれたのは御存知のとおり。

登場以来70年の歴史を誇るロンドンタクシーだが、そのメーカーは紆余曲折を経て、現在はジーリーホールディンググループ傘下のLEVC(ロンドン EV カンパニー)となった。そんなLEVC社が製造する最新のロンドンタクシーが、今回紹介する「ロンドンタクシー TX」だ。基本的なスタイルは従来型を踏襲しているが、最大の特徴はレンジエクステンダーEVとなったことだ。

フロントには同じジーリーホールディンググループ傘下のボルボにも採用されている1.5Lの3気筒エンジンを発電用に搭載し、モーターで後輪を駆動する。充電池はリチウムイオンで、外部からの急速充電も可能だ。しかもフレームはアルミニウム製で外板は特殊繊維素材で形成されるなど、クラシカルな外観とは裏腹に中身はハイテクの塊だった。

画像: インテリアはボルボと共通のパーツが多い。ATレバーを左右にタップすると回生ブレーキの強さを変えられる。

インテリアはボルボと共通のパーツが多い。ATレバーを左右にタップすると回生ブレーキの強さを変えられる。

初めて実車を目にした印象は「けっこうデカい!」。プロポーションがそっくりのJPNタクシーと並べてみたら、明らかにひとまわり以上大きい。運転席に乗りこむと、ステアリングやスイッチ類、それに縦型のモニターまで、どこかで見たことがある。そう、ボルボのものと基本的に同じだ。まずはボルボ同様にスタート/ストップ スイッチをひねってシステムを立ち上げる。

ATセレクターをDに入れ、アクセルを踏めば音もなく発進・・・といいたいところだが、バッテリーを充電するためにエンジンが始動していたので、それほど静かではない。それでも信号待ちなどで停止するとエンジンも停止するから、車内はエアコンの吹き出し音しか聞こえない。発進時からトルクフルなEVとはいえ、車重は2.3トン以上(車検証では2310kg)あるから、ゼロ発進ではアクセルをベタ踏みしてもグワッとはスタートしない。それでも市街地走行レベルからの中間加速でアクセルを多めに開ければ、けっこうな勢いで加速してくれる。

目線が高く視界が良いので、街中でもあまり大きさは気にならず運転はしやすい。それにロンドンタクシー伝統の小回りの良さ(最小回転半径は4.01m!)は、感動的ですらある。背の高いクルマだからロールが気になるかと思ったが、床下にバッテリーなどの重量物を積んで重心が低いせいか、市街地走行レベルでは無用な心配だったようだ。ボディの剛性感も高い。シフトノブを左右にタップすると、回生ブレーキの強さを2段階に調整できる。いちばん強くするとワンペダル的にアクセルを戻すだけでかなり減速できるが、完全に停止するにはブレーキを踏まなければならない。

画像: おとな3人が楽に座れる客席。3人分の跳ね上げ式対面シートも備わり、車いすでも十分なスペースだ。

おとな3人が楽に座れる客席。3人分の跳ね上げ式対面シートも備わり、車いすでも十分なスペースだ。

せっかくなので、リアシートにも乗ってみた。フロアはフラットで広く、タクシーというよりは小さな電車に乗っているよう。乗り心地も悪くないので、くつろいでロングツーリングしてみたくなる気分だ。スライド式スロープは簡単に出し入れでき、電動車いすにも対応している。しかもフロアが広いから、車内で車いすの向きを変えることもできる。介護する人のスペースも十分に広い。

ロンドンタクシー TXは、日本では8ナンバーの車いす移動車登録の場合、車両価格は1023万円だが非課税となる。各種補助金に関しては、2020年度の金額が決定次第に発表される予定だ。一般仕様では税込1120万円だが、東京都で緑ナンバーで登録すると補助金が適用されて756万円となる。個人で購入するには価格的な面はネックになりそうだが、都内でも約5000台は走っているというプレミアムセグメントのタクシーを、インポーターのLEVCジャパンではターゲットにしているという。

JPNタクシーでは改良されたとはいえ、車いすでの乗降はけっこう大変。誰でも気軽にタクシーが使える、本当にバリアフリーなクルマ社会を実現していくためにも、ロンドンタクシー TXのようなクルマが増えることが望まれるところだ。(文:篠原政明/写真:井上雅行)

画像: 回生ブレーキを強くすればワンペダルに近い感覚で運転できるが、完全停止にはブレーキ操作が必要。

回生ブレーキを強くすればワンペダルに近い感覚で運転できるが、完全停止にはブレーキ操作が必要。

ロンドンタクシー TX「車いす移動車」仕様 主要諸元

●全長×全幅×全高:4855×2036(ミラー格納時は1874)×1880mm
●ホイールベース:2985mm
●重量:2330kg
●発電用エンジン:直3 1.5L ガソリン
●エンジン最高出力:67kW<91ps>/4000rpm
●エンジン最大トルク:160Nm<16.3kgm>/1200-4000rpm
●モーター最高出力:120kW
●モーター最大トルク:255Nm
●駆動方式:RWD(エンジンはフロント、モーターはリアに搭載)
●0→100km/h加速:13.2秒
●最高速度:128km/h
●WLTP欧州コンバインド燃費:111.1km/L
●タイヤサイズ:215/65R17
●車両価格:1023万円(非課税)

This article is a sponsored article by
''.