クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第39回は「ピニンファリーナ ミトス」だ。

ピニンファリーナ ミトス(1989年)

画像: 写真は1989年の東京モーターショーに展示されたときのもの。その量感あるスタイルに誰もが圧倒された。

写真は1989年の東京モーターショーに展示されたときのもの。その量感あるスタイルに誰もが圧倒された。

この特集では何台ものフェラーリを紹介してきたが、フェラーリとピニンファリーナとは、当時は切っても切れない関係にあったということは読者諸氏には今さら説明の必要もないだろう。その密接な協力関係によって、量産車だけでなく多くのショーカーやコンセプトカーが送り出されてきた。

1989年の東京モーターショーにサプライズでワールドプレミアされた「ミトス」は、1984年に発表されたフェラーリ ピニン以来、5年ぶりにピニンファリーナの名を冠したフェラーリだった。車名の「ミトス(Mythos)」とは、英語で神話などを意味する言葉だ。

ベースとなったモデルは、フェラーリ テスタロッサ。そのデザインの最大のポイントは、イタリア語でオープン2シーターを意味する「バルケッタ」を基本コンセプトとしたことだ。つまり、ソフトトップや折りたたみ式ハードトップなどは、あえて設定されていない。これは、スポーツカーとレーシングカーがもっと近い関係にあった時代、フェラーリのレーシングカーの多くはピニンファリーナが手がけたバルケッタ ボディを採用したことへのオマージュを表現したためだという。

画像: インパネのデザインはテスタロッサとはまったくの別ものだが、メーターは流用されていたようだ。

インパネのデザインはテスタロッサとはまったくの別ものだが、メーターは流用されていたようだ。

デザイン的に圧倒されるのは、2100mmまで拡幅されたリアセクションの量感。トレッドも、フロントはベースのテスタロッサと変わらない1518mmだが、リアは70mmほど広げられて1728mmもあった。だが、ミトスはデザインコンセプトであったから、ベースとなったテスタロッサからパワーユニットなどは特にチューンされておらず、最高出力390ps/最大トルク55.0kgmというパワースペックは変わっていない。

それでも、車速が100km/h以上になるとフロントノーズ下面のリップスポイラーが30mm前にせり出し、同時にリアウイングが300mmもライズアップするという空力デバイスが採用されていたのは、コンセプトカーらしいといえるだろう。

ミトスは生産を目的としたモデルではなかったが、ミリオネアなどのオーダーに応じて、数台が実際に生産されたらしい。そのうちの1台は、日本の某自動車ミュージアムに展示されていたこともあった。ピニンファリーナの傑作のひとつとも言われるミトス、そのコンセプトは後に登場するフェラーリ F50に引き継がれたと言われている。

画像: リアセクションの全幅は2.1m以上もあった。リアウイングは100km/h以上で30cmライズアップした。

リアセクションの全幅は2.1m以上もあった。リアウイングは100km/h以上で30cmライズアップした。

ピニンファリーナ ミトス 主要諸元

●全長×全幅×全高:4305×2110×1055mm
●ホイールベース:2550mm
●重量:1250kg
●エンジン種類:60度V12 DOHC
●排気量:4942cc
●最高出力:390ps/6300rpm
●最大トルク:55.0kgm/4500rpm
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:前245/40ZR17、後335/25ZR17

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