クルマ好きなら一度は憧れたことがあるだろうスーパーカー。その黎明期から現代までをたどる連載企画。第48回は「マクラーレン F1」だ。

マクラーレン F1(1993-1998年)

画像: 顔つきはコンベンショナルなレーシング プロトタイプ風だが、中身は当時のハイテクの塊であった。

顔つきはコンベンショナルなレーシング プロトタイプ風だが、中身は当時のハイテクの塊であった。

自らの名を冠したレーシングマシンを製作し、F1をはじめ多くのレースで勝利を得たブルース・マクラーレン。1970年に事故死した彼の果たせなかった夢は、マクラーレンの名を冠したロードゴーイングスポーツを世に送り出すことだった。

1992年、マクラーレン カーズ(現マクラーレン オートモーティブ)は、創始者の夢を実現した初の高性能市販車「マクラーレン F1」をモナコで発表した。エンジニアリングを手がけたのは、F1グランプリ マシンの設計でも知られるゴードン・マーレイ。デザインは、ピーター・スティーブンスが手がけた。

F1という名前が示すとおり、そのテクノロジーにはF1グランプリ マシンからのフィードバックが盛り込まれている。カーボン(CFRP)製のモノコックに縦置きミッドシップ搭載されるエンジンは、BMWから供給された6.1LのV型12気筒を4バルブDOHC化し、最高出力は627ps、最大トルクは69.3kgmを発生。当時「世界でもっとも出力の高いクルマ」として、ギネスブックに掲載されて話題となっている。

組み合わされるトランスミッションは、エンジンの後方に横向きにセットされた6速MT。最高速度は400km/hに迫っており、タイヤの性能にもよるが、もはや後2輪駆動では限界に近いものだった。

画像: 運転席右にシフトノブとエアコンのスイッチ類、左にパーキングブレーキとオーディオのスイッチ類。ルームミラーは2つ装着していた。

運転席右にシフトノブとエアコンのスイッチ類、左にパーキングブレーキとオーディオのスイッチ類。ルームミラーは2つ装着していた。

スタイルもパフォーマンスもアグレッシブだったが、けっして奇をてらったものではなく、とくにスタイルはスーパーカーのデザイン手法に則ったもので理解できた。現在のマクラーレン車にも継承される、前ヒンジのディヘドラルドア(バタフライドアとも呼ばれる)を開けると、衝撃的なシート配列が目に入る。

中央に運転席を置き、その両脇に少し後方へオフセットした助手席を左右にセットするという、特殊な3シーター レイアウトを採用していた。その採用理由は、1名乗車時の左右重量配分を適正化でき、しかもホイールハウスが邪魔しないので最適なペダル配置ができるというメリットがあると説明されている。

まるで人工衛星のようにエンジンルームの内側には遮熱用の金箔が貼られ、排気系にはインコネル合金を、ボディ外板や構造材にはCFRPを採用するなどコストを惜しまずに徹底した軽量化が図られ、車重は1140kgにおさえられていた。1億円ものプライスタッグが付けられたのも、納得できるハイパフォーマンスマシンだった。

マクラーレン F1はモータースポーツでも活躍し、1995年のル・マン24時間レースでは総合優勝を果たしている。

画像: F1デザイナーの作品だけに空力が重視され、リアエンドには速度感応型リフトアップスポイラーを装着する。

F1デザイナーの作品だけに空力が重視され、リアエンドには速度感応型リフトアップスポイラーを装着する。

マクラーレン F1 主要諸元

●全長×全幅×全高:4290×1820×1140mm
●ホイールベース:2720mm
●重量:1140kg
●エンジン種類:60度V12 DOHC
●排気量:6064cc
●最高出力:627ps/7400rpm
●最大トルク:69.3kgm/4000-7000rpm
●駆動方式:縦置きミッドシップRWD
●トランスミッション:6速MT
●タイヤサイズ:前235/45ZR17、後315/45ZR17

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