エヴァンテ 140(1987年)
1960〜70年代、イギリスを中心とするレーシングシーンで活躍した、フォードやロータスのエンジンを得意とするチューナー「ヴェガン チューン」は、やがてオリジナルのDOHCヘッドまで製作するような、小さなスポーツカー コンストラクターとなっていった。このヘッドを載せたフォード製エンジンはVTAと呼ばれ、ケイターハム スーパーセブンなどに搭載される。
1982年、ヴェガン チューンはVTAエンジンを搭載したオリジナルのスポーツカー「エヴァンテ」を発表。だが、月産4台程度ながら販売が開始されたのは1986年のことだった。エヴァンテ(EVANTE)という車名は、ロータス車が「E」で始まる車名にこだわるところを意識し、あとの5文字はヴェガン チューンの略語と思われる。のちに同社はエヴァンテ カーズへ社名を変更している。
エヴァンテのスタイルは、1960年代の名車「初代 ロータス エラン」をオマージュしたものだ。それでも、バンパーレスのフロントノーズをはじめ、ライト関係/エアインテーク/エプロン回りはオリジナルのデザインだ。リアエンドはダックテール化されている。ボディパネルはFRP製だが、一部にカーボンも用いられていた。
インテリアではウッドパネルにメーターがレイアウトされた、古き佳きブリティッシュ スポーツカーそのもの。いかにも手作りといった感じも、いい雰囲気だった。
シャシは角断面のスチールパイプと鋼板を組み合わせたバックボーンで、サスペンションは前後ともダブルウイッシュボーンを採用し、エランよりも近代化が図られていた。
VTAエンジンは1.7Lの排気量で、デロルトのツインチョーク キャブレターを2連装し、140psと17.8kgmのパワースペックを発生した。思ったよりも低速域のトルクはフレキシブルだが、このエンジンが本領を発揮するのは3000rpmを超えてから。1〜4速をクロスさせた5速MTを駆使してワインディングを走れば、700kgを切る軽量ボディも相まって、文字どおりのファン to ドライブが楽しめる。
とはいえ、ステアリングはノンアシスト、ブレーキもサーボはあるが踏力は必要と、イージーに乗りこなせるクルマではない。それでも、その持ち味を積極的に引き出して乗りたいというスポーツカー ドライバーには、貴重な1台と言えるだろう。
エヴァンテ 140 主要諸元
●全長×全幅×全高:3720×1490×1130mm
●ホイールベース:2140mm
●重量:687kg
●エンジン種類:直4 DOHC
●排気量:1699cc
●最高出力:140ps/6500rpm
●最大トルク:17.8kgm/5250rpm
●駆動方式:FR
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:195/60VR14