eKスペースは癒やし系の顔つきがいい
軽自動車のマーケットは、相変わらずスーパーハイト軽ワゴンが好調だ。2013年は全体の31%だったが、2020年は49%にまでなるのではと予測されている。ちなみにワゴンRやムーヴなどの軽ワゴンは、2013年は47%だったが2020年は25%まで下がると予測されている。
実際、2019年度の軽自動車販売台数トップ10を見ると、トップのホンダ N-BOXを筆頭に、ダイハツ タント、スズキ スペーシア、日産 デイズとスーパーハイト軽ワゴンが続く。ただし、車名による登録のためデイズはデイズとデイズ ルークスを合わせた数字となる。
三菱のeK スペースは、これもeKワゴンと合わせた数字でトップ10の10位に滑り込んだ。だがこの数字は新型が登場する前のもの、フルモデルチェンジで、どれだけ順位を挽回できるか、まずはチョイ乗りのインプレッションを紹介しておこう。
今回試乗したeKスペースは、中核グレードの「G」。今回のフルモデルチェンジで加わったeKクロス スペースのダイナミックシールド顔ではなく、おとなしめの顔つき。しかもノンターボなのでグリルはボディ同色(ターボ車はブラックグリル)なので、最近のクルマとしては癒やし系なのがいい。女性には、こちらの方が好まれそうだ。
インテリアは、ブラック基調のeKクロス スペースに対し、ライトウォームグレーを基調として明るいイメージ。だがメーターやスイッチ類などは、基本的に変わらない。感心したのは、グローブボックスやドリンクホルダーはもちろん、ちょっとした小物入れが車室内に豊富に備わること。また室内の広さも特筆もの。とくにリアシートは左右分割でクラストップの320mmというスライド量を誇り、ワンタッチでシートバックを倒せば登録車のワゴン顔負けの広いラゲッジスペースが出現する。助手席側ハンズフリーオートスライドドア(運転席側はオプション)も標準装備で、さすがはスーパーハイト軽ワゴンといったところ。
今回は市街地を中心に、首都高速も少しだけ試乗してみた。マイルドハイブリッドでモーターのアシストが多少あるとはいえ、パワー感や加速感は「まあ、こんなものかな」といったレベル。それでも、市街地走行なら不満はない。アイドリングストップは頻繁に作動し、ステアリングを動かしたりブレーキを踏む力を緩めれば停車中でも再始動するが、場合によっては再停止する。
首都高速などでの加速時は、やはりターボが欲しくなる。3500rpm以上回ると、エンジンはかなりノイジーになる。CVTのミッションにマニュアルモードはないが、Dレンジ80km/hでクルーズすると、エンジン回転数は約2250rpmといったところ。試乗車はオプションのMIパイロットも装着しており、前車との車間距離や車線中央付近をキープして走行してくれる。この機能がけっこう優秀なので、高速を走行する機会が多いのでMIパイロットを装着したいなら、ターボ車をオススメしたい。
市街地でも高速でも、乗り味はいたって快適。加速時などでエンジンを必要以上に回さなければ、室内も静か。また、ワンタッチで3回だけウインカーが点滅する機能は、輸入車ではけっこうポピュラーで扱いやすいのだが、日本車では三菱車以外には採用されているものは少ない。このeKスペースにも採用されており、車線変更などでは重宝した。
群雄割拠のスーパーハイト軽ワゴン市場だが、eKスペースはデザイン、広くて使い勝手の高い室内空間、走りも十分で、先進運転支援技術も充実と、ライバルたちに引けは取らない。市街地走行が中心なら今回のGグレードで十分。高速道路など長距離走行する機会が多いなら、ターボ車のTグレードを選びたいところだ。(文:篠原政明/写真:井上雅行)
三菱 eKスペース G 主要諸元
●全長×全幅×全高:3395×1475×1780mm
●ホイールベース:2495mm
●重量:950kg
●エンジン型式・種類:BR06型・直3 DOHC+モーター
●排気量:659cc
●エンジン最高出力:38kW<52ps>/6400rpm
●エンジン最大トルク:60Nm<6.1kgm>/3600rpm
●モーター最高出力:2.0kW<2.7ps>/1200rpm
●モーター最大トルク:40Nm<4.1kgm>/100rpm
●トランスミッション:CVT
●WLTCモード燃費:27.2km/L
●タイヤサイズ:155/65R14
●車両価格(税込み):154万2200円