創刊以来、65年の歴史を刻むモーターマガジン(MM)が持つアーカイブから、ちょっと懐かしく珍しいクルマを紹介する大型連休の短期連載企画。最終回となる今回は、ブリティッシュ スポーツの「TVR グリフィス」だ。

TVR グリフィス(1992-2001年)

画像: 全長は4mあまりだが全幅は1.7mを超える。それでも21世紀のスポーツカーから見ればコンパクトだ。ヘッドランプはプレクシグラスで覆われている。

全長は4mあまりだが全幅は1.7mを超える。それでも21世紀のスポーツカーから見ればコンパクトだ。ヘッドランプはプレクシグラスで覆われている。

TVRとは、第二次大戦後にイギリスのリバプールにトレバー・ウイルキンソンが設立したバックヤード ビルダーだ。1982年にピーター・ウイラーが社長に就任してからは、自社開発のエンジンなど精力的なモデル展開を行った。その後はロシア資本に買収されたりといった紆余曲折の末、2020年現在はFIA世界耐久選手権に参戦するレベリオンとの提携など再建の動きはあるが、実車の生産再開までは時間がかかりそうだ。

ここで紹介する「グリフィス」は、ピーター・ウイラー時代の1991年にバーミンガム モーターショーで発表されたスポーツカーだ。TVRは1960年代にもグリフィスというモデルを生産しており、また2020年現在に復活を目指しているモデルの名もグリフィスである。

さて、2代目にあたるグリフィスは、ロングノーズ/ショートデッキのFRオープン2シーターで、角および丸断面の鋼管をトラス状に組み上げたスペースフレームにFRPボディを被せるという方式は踏襲しているが、それまでのTVR車とはデザインを一新した。エアアウトレットまでデザインしたフロントフードや、それに合わせてドアやフロントフェンダーの見切りにカットを与えるなど、独特のものだ。

画像: ローズウッドのパネルにメーターを組み込む。エアコンやカーオーディオも装備している。

ローズウッドのパネルにメーターを組み込む。エアコンやカーオーディオも装備している。

インテリアでは、ドアオープナーをセンターコンソールに配したり、ローズウッドのメーターパネルに、アルミニウム削り出しのシフトノブやドアノブを用いるなど、ハンドメイドの香りを残した趣味性の高いスポーツカー造りのツボを良く心得ているようだ。

フロントに搭載されたエンジンは、レンジローバー用の3.9L V8 OHVがベースだ。NCKコベントリーがライトチューンし、最高出力は240ps、最大トルクは37.3kgmというパワースペックを発生する。走り出して驚かされたのは、ボディ剛性の高さと軽量なボディにもかかわらず走行感が落ち着いていたこと。走行中にスロットルを強く踏み込むと、極太のトルクのおかげでどこからでも力強い加速体制に移る。その加速感はアメリカンV8を思わせる重低音を伴って、かなりの迫力ものだ。

ハンドリングも素晴らしい。ステアリングはノンアシストだが、乗り手の意思に忠実に従い、気持ち良くワインディングを流そうと思えば程よく切れ、振り回そうとすればシャープに反応する。英国の古典的な味わいをそのままに、強力なストッピングパワーとグリップ指向のサスペンションも与えられている。

TVR グリフィスは、走ることに対するピュアな感覚を忘れない、クルマとの一体感をごく自然に教えてくれる、1990年代には数少ないスポーツカーであった。

画像: 写真のようなフルオープンにも、センタートップを外してタルガトップにもなる。ボディの剛性は高かった。

写真のようなフルオープンにも、センタートップを外してタルガトップにもなる。ボディの剛性は高かった。

TVR グリフィス 主要諸元

●全長×全幅×全高:4070×1730×1200mm
●ホイールベース:2285mm
●重量:950kg
●エンジン種類:90度V8 OHV
●排気量:3949cc
●最高出力:240ps/5300rpm
●最大トルク:38.1kgm/3500rpm
●燃料タンク容量:53.5L
●駆動方式:FR
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:前205/55ZR15、後225/50ZR16

※モーターマガジン社アーカイブからの懐かしく珍しいクルマの紹介は、今回でひとまず終了します。また機会をあらためて、アーカイブから秘蔵のクルマ?を探し出して紹介する予定です。

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