2020年1月16日から販売が開始されたフォルクスワーゲンのコンパクトSUV「Tクロス」が売れている。ベースとなったのはポロで、FFレイアウトのみの設定だ。このコンパクトSUVのTクロスと定番ハッチバックのポロはその価格をはじめ、どこがどれだけ違うのか。どちらを選ぶべきなのか、悩ましい選択となる。今回はTクロスの導入記念モデル「TSI ファーストプラス」と、ポロの主力モデル「TSIハイライン」を中心に比較検証してみよう。

TクロスはポロのSUVバージョンと言える存在

2019年11月に登場したTクロスはポロのコンポーネンツをベースに開発されたコンパクトSUV。SUV風に仕立てられた従来までのクロスポロと違い、専用ボディを持つ別モデルとして開発されたオフロードSUVだ。まずは導入記念モデルとして1Lターボエンジンを搭載する特別仕様車「TSI ファースト」と「TSI ファーストプラス」から登場している。

一方のポロは、Bセグメントコンパクトカーの6代目として2018年3月に登場。それまで4m以内に収まっていた全長が65mm拡大されて4060mmとなったこと、全幅が1750mmと5ナンバーサイズの枠を超えたことも話題となった。ホイールベースは80mm拡大されキャビンスペースとラゲッジスペースが格段に広がり、かつてのゴルフに迫る快適性を備えるまでになった。また、この6代目から欧州でも3ドアはなくなり全車5ドアとなったこともニュースだ。

画像: フォルクスワーゲンの新しいコンパクトSUV「Tクロス」(TSI ファーストプラス)と、Bセグメントコンパクトカーではあるが、かつてのゴルフに迫る快適性を備えるポロ(TSI ハイライン)。

フォルクスワーゲンの新しいコンパクトSUV「Tクロス」(TSI ファーストプラス)と、Bセグメントコンパクトカーではあるが、かつてのゴルフに迫る快適性を備えるポロ(TSI ハイライン)。

まずボディサイズを確認しておこう。Tクロスの全長×全幅×全高は4115×1760×1580mm、対してポロは4060×1750×1450mm。全長と全幅はほぼ同じ、印象的にはTクロスのほうがかなり大きく感じるが、その違いは全高の130mm差からくるものだ。ちなみに、ホイールベースはともに2550mmで同一だ。

インテリアはともに明るいカラーの演出で、機能的でありながらポップな雰囲気を出している。居住スペースという点では、室内高があるTクロスがやはり有利で、高いアイポイントにより見晴らしもいい。後席スペースの感覚的な違いはさらに大きく、膝前の余裕はそれほど変わらないが開放感は高い。

画像: TクロスはポロのSUVバージョンと言える存在

Tクロスのスペース効率の高さはラゲッジスペースにも反映されていて、ポロが351〜1125Lであるのに対し、Tクロスは455〜1281Lとなっている。

パワーユニットはTクロスはまず1L直3ターボで登場。通常のカタログモデルでは、「TSI ファースト」はTSI コンフォートライン、「TSI ファーストプラス」はTSI ハイラインにあたると思われるが、そうなると、この後、ポロTSI Rラインに相当する1.5LモデルがTクロスにも設定されるのだろう。駆動方式はTクロス、ポロともFFのみだ。

今回は1L直3ターボを搭載する「Tクロス TSI ファーストプラス」と「ポロ TSI ハイライン」をメインに比較を行っているが、基本的に両者のエンジンは同じ設計ではあるものの、仕様は異なっている。

Tクロス TSI ファーストプラスがup! GTIと同じ高性能版の116ps/200Nm仕様であるのに対し、ポロ TSI ハイラインはベーシックな95ps/175Nm仕様となる。これは車両重量や使用シーンを考慮した上のことで、パワーウエイトレシオで見てみると、Tクロス TSI ファーストプラスが10.9kg/ps、ポロ TSI ハイラインは12.2kg/psとなる。

ちなみに、燃費データはJC08モード同士で比較すると、Tクロス TSI ファーストプラスが19.3km/L、ポロ TSI ハイラインは19.1km/Lと、ともに高い数値をマークしているが、車重が重く、パワーも大きいTクロス TSI ファーストプラスのほうが低燃費となっているのは興味深い。

安全性はともに充実している。今回メインで比較している「Tクロス TSI ファーストプラス」と「ポロ TSI ハイライン」を見てみると、アダプティブクルーズコントロールACC、リアビューカメラ、プリクラッシュブレーキシステム、プロアクティブオキュパントプロテクション、ポストコリジョンブレーキシステムはともに標準装備となるが、レーンキープアシスト、パークディスタンスコントロールシステム、リアトラフィックアラートなどは、Tクロス TSI ファーストプラスは標準、ポロ TSI ハイラインではオプションとなる。

Tクロスには、SUVにも安心感のある走行性能や合理的な作り込みにこだわる、フォルクスワーゲンの真面目さが感じられる。一方でポロは実用的で高い安全性を備えるコンパクトカーとして世界一線級の資質を持っている。

ではこの2台はどう選ばれるのだろうか。ポロはコンパクトカーとしてだけではなくレジャーにも使いこなせるポテンシャルを十分に持っている。このサイズ感が魅力というユーザーも多いだろう。しかし、Tクロスはそれに遊び心というスパイスが加わえられて魅力がさらに増したというところだろうか。ただ、Tクロスで気になる点は大きな魅力でもあるボディサイズだが、全高が1550mmを超えるので、一部のタワーパーキングに入れられないことがネックとなるユーザーもいるだろう。

そしてその価格差は約37万円だが、Tクロスは標準装着される安全装備が充実しているので、実質的な価格差はないと言える。これをユーザーがどう考えるかということになりそうだ。

■フォルクスワーゲン Tクロスの車両価格(税込み)
 Tクロス TSI ファースト:299万9000円 
 Tクロス TSI ファーストプラス:335万9000円
■フォルクスワーゲン ポロの車両価格(税込み)
 ポロ TSIコンフォートライン:262万3000円 
 ポロ TSIハイライン:299万円 
 ポロ TSI Rライン:330万円(1.5Lターボ) 
 ポロ GTI:382万円(2Lターボ)

画像: Tクロス(上)はワイドかつ高さもあるスクエアなフォルムが特徴で、躍動感にあふれる。ポロ(下)は全高を抑えて、ワイド感を強調、複雑なキャラクターラインを特徴とする。

Tクロス(上)はワイドかつ高さもあるスクエアなフォルムが特徴で、躍動感にあふれる。ポロ(下)は全高を抑えて、ワイド感を強調、複雑なキャラクターラインを特徴とする。

フォルクスワーゲン Tクロス TSI ファーストプラス 主要諸元

●全長×全幅×全高=4115×1760×1580mm
●ホイールベース=2550mm
●車両重量=1270kg
●エンジン=直3 DOHCターボ
●排気量=999cc
●最高出力=116ps/5000−5500rpm
●最大トルク=200Nm/2000−3500rpm
●トランスミッション=7速DCT
●駆動方式=FF
●サスペンション=ストラット/トレーリングアーム
●ラゲッジルーム容量=455−1281L
●JC08モード燃費=19.3km/L
●タイヤサイズ=215/45R18
●車両価格=335万9000円

フォルクスワーゲン ポロ TSI ハイライン 主要諸元

●全長×全幅×全高=4060×1750×1450mm
●ホイールベース=2550mm
●車両重量=1160kg
●エンジン=直3 DOHCターボ
●排気量=999cc
●最高出力=95ps/5000−5500rpm
●最大トルク=175Nm/2000−3500rpm
●トランスミッション=7速DCT
●駆動方式=FF
●サスペンション=ストラット/トレーリングアーム
●ラゲッジルーム容量=351−1125L
●JC08モード燃費=19.1km/L
●タイヤサイズ=195/55R16
●車両価格=299万円

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