三菱のスーパーハイトワゴン「eKスペース」がフルモデルチェンジ。単にeKワゴンの背を高くしたということに止まらず、新しい価値を盛り込んで登場。果たして一番厳しいと言われる軽自動車のカテゴリーで存在感を示せるのか。(Motor Magazine 2020年6月号より)

三菱はスーパーハイトワゴンのパイオニア

軽自動車だから小ささを生かしてという考え方もあるけれど、外は小さく、中はなるべく広くという気持ちもわかる。というのも、いまや軽スーパーハイトワゴンは、イメージ的にはミニバン並みに荷物が積めるほどに広いスペースを有しているのだ。けれども軽規格による制限があるから、幅が狭い駐車場にも楽に入り、最小回転半径も4m台前半と小回りも利く。オマケに税金も安い、場所によっては車庫証明も要らない場合など、超コストパフォーマンスが高く仕上がっていて、このカテゴリーのモデルはどれも人気がある。

ところが、そんな人気のスーパーハイトワゴンのパイオニアが、三菱自動車だということを知らない方が意外と多い。1990年に登場したミニカトッポの全高を7cm伸ばした、ミニカトッポ スーパーハイルーフがそれに当たるのだが、それだけ長く作ってきたからこそ、三菱にはノウハウがしっかり蓄積されており、今回のモデルに繋がっていると思うのだ。

たとえば、圧倒的な広さを生かした320mmというクラストップの後席ロングスライド。一番後ろに下げた時の広々感は半端ではない。であるからして寛ぐための装備、シートバックテーブルに、プラズマクラスター付きリアサーキュレーター、リアロールサンシェードと至れり尽くせり。まるで新幹線のグリーン車に乗っているかのようだ。しかもその後部座席へ乗り込む際には、ハンズフリーオートスライドドアで、脚の動作だけで扉が開く。このおもてなし感は軽とは思えないものだ。

画像: 限られたサイズの中で最大限の室内空間を実現。

限られたサイズの中で最大限の室内空間を実現。

背の高さがネガにならずしっかりした走りを実現

もっとも、これだけ背が高いと、ちゃんと走らせるのは大変だ。どうしてもロール(横方向の傾き)が大きくなってフラフラしたり、横風の影響を大きく受けたりと、安定させるのが難しくなるからだ。しかし、今回の試乗でeKスペースは、吹き流しが真横にたなびく海上の橋の上でも、ハンドルを取られることもなく、急カーブで必要以上に倒れこむこともなく、しっかり走ってくれた。

実は先代もよくここまでしっかり走らせられるものだと感心させられる出来栄えだったのだが、今回は一新されているため、そのあたりの作り込みは逆に楽だったのかもしれない。それほど余裕が感じられるのも、長年のデータの蓄積の成せる技なのだろうなと改めて思う。

とはいえ、今回の試乗車2WDのNAエンジンモデルは、正直なところロングドライブとなると、パワー的には少々物足りないのも事実だ。NAとターボ、それぞれに2WDと4WDがラインナップされているので、長距離をよく走る方はターボモデルをチョイスするのがベターだろう。というのも、ロングドライブをサポートしてくれるマイパイロットが装備されていることもあり、ついつい遠出したい気分にさせられるからなのである。

マイパイロットとは高速道路同一車線運転支援技術で、中身は軽自動車専用開発会社NMKVとしてタッグを組む日産車が、このところ力を入れているプロパイロットなのだが、これがしっかり進化を果たしている。カメラにプラスして、ミリ波レーダーを加えたことで、2台先のクルマの動きまでチェックするようになったのである。当然、よりスムーズに追従走行してくれるわけで、クルマの動きが自然な分、同乗者も楽に乗っていられる。

またハンドルサポート機能の方もしっかり働いてくれるので、たとえば、お仕事帰り少々お疲れ、ついつい漫然とした運転になってしまいがちな時や、小さいお子様にどうしても気を取られることの多いママには、相当ありがたい装備なのではないかと思う。(文:竹岡 圭)

画像: 13km/h以下でアイドリングストップに入り、発進時はモーターでアシストするマイルドハイブリッド採用。

13km/h以下でアイドリングストップに入り、発進時はモーターでアシストするマイルドハイブリッド採用。

■三菱 eKスペース G主要諸元

●全長×全幅×全高=3395×1475×1780mm
●ホイールベース=2495mm
●車両重量=950kg
●エンジン= 直3DOHC
●総排気量=659cc
●最高出力=52ps/6400rpm
●最大トルク=60Nm/3600rpm
●モーター最高出力=2.7ps
●モーター最大トルク=40Nm
●駆動方式=FF
●トランスミッション=CVT
●車両価格(税込)=154万2200円

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