フェラーリ 599GTB フィオラノ(2006-2012年)
V型12気筒エンジンを搭載した2シーターのフラッグシップ フェラーリとしては久しぶりにFRに回帰して1996年に発表された550マラネロは、2002年に575Mマラネロへと進化したが、その後継モデルが、ここで紹介する「599GTB フィオラノ」だ。新たなフラッグシップとなった599GTB フィオラノも、駆動方式はFRを踏襲した。
599GTB フィオラノのワールドプレミアは、2006年のジュネーブ モーターショーだった。車名の599とはエンジン排気量(約5.99L)、GTBは以前にも採用されたようにグランツーリスモ ベルリネッタ(イタリア語のクーペ)の頭文字、そしてフィオラノはフェラーリのファンなら御存知のとおり、テストコースであるフィオラノ サーキット(フィオラノとはサーキットのある地名)に由来する。
550マラネロ同様、ロングノーズ/ショートデッキのファストバック スタイルはいかにもFRらしい美しいプロポーションだ。そのスタイリングを手がけたのは、当時はピニンファリーナに在籍していたジェイソン・カストリオタ。彼は、のちにベルトーネに移籍し、マセラティ グラントゥーリスモなどもデザインしている。
ボンネットのパワーバルジ、左右の大きなフェンダー、ボリューム感のあるリアホイールアーチなど、ボディは彫刻的で筋肉質だ。フロントグリル左右やボンネット上、フロントホイール後部などにエアアウトレットやインテークを配している。テールランプは丸型だが伝統の4灯式ではなく、大型のLEDとなった。リアバンパー下部はエクゾーストエンドと一体化したディフューザーとされている。
空力特性も重視され、これまでの12気筒をフロントに搭載したフラッグシップ フェラーリとしては最も優れた空気抵抗係数(Cd)の0.336を達成している。200km/hで走行すれば70kg、300km/hなら160kgものダウンフォースが発生する。
フロントに搭載されるパワーユニットは550マラネロや575Mマラネロのものとは別もので、エンツォフェラーリに搭載されたものの基本アーキテクチャーを踏襲しており、より扱いやすくデチューンされている。最高出力は620ps、最大トルクは608Nmというパワースペックを発生しながら、燃費は低くおさえられ、しかも最新の排出ガス基準に適合していた。
トランスアクスルでリアに搭載されたミッションは、6速MTとAMTの「F1スーパーファスト」が設定されたが、日本仕様は後者のみだった。なお、日本仕様は登録商標の関係で、車名は単に「599」とされていた。
フェラーリ 599GTB フィオラノ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4665×1962×1336mm
●ホイールベース:2750mm
●重量:1750kg
●エンジン種類:65度V12 DOHC
●排気量:5998cc
●最高出力:620ps/7600rpm
●最大トルク:608Nm/5600rpm
●燃料タンク容量:105L
●駆動方式:トランスアクスルFR
●トランスミッション:6速MT(AMTもあり)
●タイヤサイズ:前245/40ZR19、後305/35ZR20
●当時の価格:3458万7000円