2006年8月、4代目ポロに1.6Lエンジン+6速ATを搭載した「1.6スポーツライン」とSUVテイストの「クロスポロ」が登場している。従来は1.4L+4速ATの仕様しかなかく地味で控えめな存在だったが、2005年12月に登場したスポーツモデル「GTI」もあり、ここからラインアップを充実させて魅力をアピール、フォルクスワーゲンの大きな柱となっていくことになる。今回は登場直後に行われた「1.6スポーツライン」と「クロスポロ」の試乗テストの模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年10月号より)

マイナーチェンジ以降の凄まじいばかりのポロ人気

私は現行型ポロのことを、『昔のサイズで出ています』なゴルフ、と呼ぶことにしている。

ここでゴルフという呼び名で表現したかったのは、もちろん大人気を博している現行型ゴルフそのものの身代わりではない。初代と2代目が体現した、世界のコンパクトカーのスタンダードはフォルクスワーゲンが生み出すという、強烈かつ極めてシンプルなコンセプトワークのことである。それによってゴルフというクルマがベストセラーになったという歴史的事実そのものでもある。そして、現行型ポロのサイズは2代目ゴルフに近いということだ。

代を下るに従い、大きくなってきたゴルフ。これに不満を抱く人のための、昔ながらのゴルフサイズを持つハッチバックカーとしてのポロ。コトはそう単純な話でなかろうが、ゴルフという名前の偉大さを考えるに、その程度の表現でも決してポロを見下すことにはなるまい。

それほどポロというクルマには、ゴルフが築き上げてきたコンパクトカーの欧州スタンダードが詰まっている。だからこそ、目立ちはしないが、着実な人気を博しているのだ。

特に、昨年2005年8月に行われたビッグマイナーチェンジ以降の現行モデル人気は凄まじいようだ。

このセグメント、ここしばらくMINIの天下であったが、月によってはそれを上回る登録台数を記録するという。相手がモデル末期だという点を差し引いても、2ボディタイプあるとはいえ1.4Lモデルと1.8LターボのGTIしかなかったということを考えれば、地味めで目立たないポロが、あの絶大人気なファッショナブルカーに勝つこともあるということに、驚きを禁じえない。

良好な状況をさらに強固に発展させるべく、フォルクスワーゲン ジャパンは積極的な商品ラインアップ拡充に乗り出した。まったく新しい2グレードを追加し、既存グレードの位置付けを見直して、ゴルフの弟分たる地位を揺るぎなきものに仕上げる算段に出たのだ。

そして新規追加になったのがクロスポロと1.6スポーツラインである。

世界的な潮流とも言えるクロスオーバーカー的なルックスをまとって登場したのが、クロスポロである。昨年2005年11月に行われた、エッセンショー(ドレスアップ&チューニングの祭典としても有名)にてデビューした点も注目しておきたい。

あくまでも「風」である。最低地上高が上げられたとはいえ、わずかに20mm。加えて、17インチホイールとルーフレールで全高55mmアップを果たしたのみ。あくまでもオフロードルックスカーであり、決してオフロードを真剣に攻めようなどと思ってはいけないシロモノだ。

こう書くと否定的に聞こえてしまうが、それこそがこのクルマの狙いなのだがら仕方ない。SUV的な要素が作り出す明るくてカジュアルな装いは、乗り手がユニークであろうとする意欲を心地よく刺激し、頭ひとつ抜け出たという軽やかな満足を実感させる。

そう、クロスポロに与えられた役割とは、月見草のように地味だがよくできたコンパクトカーであるポロの性能はそのままに、陽気なイメージリーダーたらんとすること。スポーツ性能に優れたGTIとともに、ポロのイメージを牽引する硬軟の主役が出揃ったというわけだ。

そのことは、ゴルフの弟分たるべく再編されたラインナップを見ればよくわかる。ゴルフの最廉価モデルである1.6Eの価格は、ポロの最も高価なモデルであるGTI 4ドアとほぼ同じ。そして約10万円ずつのステップを設けてクロスポロ、GTI 2ドアと続く。

この3グレードは実質的にゴルフとポロの間に立てられた車格の壁のようなもので、例えば値段が同じだからと言ってゴルフEとポロGTI 4ドアを比較検討する消費者はまずおられまい。ゴルフとポロを象徴的にはっきり区分けしながら、ポロのイメージを引き上げるのが、壁たる3グレードの役割なのである。

画像: 2005年11月エッセンモーターショーでデビューしたクロスポロ。ポロをベースにクロスカントリー風に仕上げる手法が話題を呼んだ。日本仕様はポロシリーズに1.6L+ 6速ATが設定されるのを待っての投入となった。

2005年11月エッセンモーターショーでデビューしたクロスポロ。ポロをベースにクロスカントリー風に仕上げる手法が話題を呼んだ。日本仕様はポロシリーズに1.6L+ 6速ATが設定されるのを待っての投入となった。

重要な役割を担う1.6スポーツライン

これでもう、新たに加わった1.6スポーツラインの大切さがおわかりいただけたことだろう。出で立ちからして注目を集めるのはクロスポロの方であろうが、日本のマーケット戦略的に重要なモデルはむしろ、ひっそり加わった1.6スポーツラインの方だ。

ディーゼル投入が叶わず非力なガソリンエンジンしか投入できない今の日本市場においては念願のテンロクモデル誕生であり、フォルクスワーゲン ファンにとってみれば嬉しくも悩ましい選択肢がひとつ増えたことになる。

219万円という絶妙な値付けがなされた1.6スポーツラインだが、実はこのエンジン、ゴルフのFSI直噴BLF型とは異なったユニットだ。今年2006年6月にポロへ新搭載されたばかりで、パワーこそ11ps劣るが実用トルクで上回り、静粛性やメンテナンス性、耐久性も向上した。

1.4Lモデルと比べれば、30psの大幅アップである。日本のユーザーに多かったパワーへの不満もこれで一掃されるに違いない。

しかも、ゴルフと同様に6速ATが積まれた。オートマチックモデルの後進性が欧州コンパクトカーの最大の弱点であったから、その価値は計り知れないというべきだろう。

もちろん、これまでの主力グレードであった4ドアの1.4Lは価格据置きで存在する。そして、1.4Lの2ドアモデルは今はなきルポの輸入車エントリーモデルという役割を担うことになる。

2つのニューモデルの追加によって、日本市場におけるポロの商品ラインナップは万全なものになった。フォルクスワーゲンの中でも最も充実したラインナップを有するゴルフの弟分として、まず見劣りしない商品=ブランドになったと言っていいだろう。いや、ポロからゴルフまでをひと繋がりとして見れば、これほど強強固なラインナップもないだろう。(文:西川 淳/Motor Magazine 2006年10月号より)

画像: ポロに新たに設定された1.6Lモデル「1.6 スポーツライン」。1.4Lモデルでも実用域でのトルクが十分に出ているので走りになんの問題もないが、比べてみると、プラス30psの痛快さと6速ATの小気味よさは明確だ。特に6速ATによる、静かで軽快な加速フィールは大きな武器となりそうだ。

ポロに新たに設定された1.6Lモデル「1.6 スポーツライン」。1.4Lモデルでも実用域でのトルクが十分に出ているので走りになんの問題もないが、比べてみると、プラス30psの痛快さと6速ATの小気味よさは明確だ。特に6速ATによる、静かで軽快な加速フィールは大きな武器となりそうだ。

ヒットの法則

フォルクスワーゲン クロスポロ 主要諸元

●全長×全幅×全高:3920×1670×1535mm
●ホイールベース:2470mm
●車両重量:1180kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1597cc
●最高出力:105ps/5600rpm
●最大トルク:148Nm/4500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●車両価格:239万円(2006年)

フォルクスワーゲン ポロ1.6スポーツライン 主要諸元

●全長×全幅×全高:3915×1665×1465mm
●ホイールベース:2470mm
●車両重量:1180kg
●エンジン:直4DOHC
●排気量:1597cc
●最高出力:105ps/5600rpm
●最大トルク:148Nm/4500rpm
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●車両価格:219万円(2006年)

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