2006年3月のジュネーブオートサロンでデビューしたプジョー207に、この年の秋、1.6Lハイプレッシャーターボエンジン搭載モデルが追加されている。かねてよりアナウンスされていた、BMWとの共同開発によるニューエンジンだった。「207の本命」ともいうべきモデルはどんな走りを見せたのか。フランスで開催された国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年12月号より)

207の中でも最も豪華でスポーティな位置づけ

7年間で550万台を売る大ヒット作となった206の後を継ぐのが、今年2006年3月のジュネーブショーで発表されたプジョー207。先代譲りの前進感の強いフォルムをさらに磨きつつ、新生プジョーの「ビッグマウスグリル」までも手に入れたスタイリングはなかなかに魅力的。サイズも昨今のBセグメントの流れに乗って全幅1720mmと適度に拡大され存在感と居住性を向上させたから、「日本に入れば再びプジョーを代表するモデルになるな」と僕が密かに期待している一台だ。

この207、欧州では4月からすでに販売が始まっているが、日本への導入は来春以降。遅れているには理由があって、実はBMWとプジョーが共同開発した新エンジンの搭載を待っていたのである。

今回南仏のソレイズ周辺で試した1.6L THPこそがその新エンジン。ちなみにTHPは「ターボハイプレッシャー」を意味する。1598ccのガソリン直噴エンジンにツインスクロールタイプの小型ターボを組み合わせ、2L NA級の150psの動力性能とより良い燃費を実現しようという、昨今流行のダウンサイジングターボである。

とは言え、プジョーの中でTHPはシリーズきっての高性能版という位置づけ(さらにパワフルな175ps版の計画もあるようだが)にあり、今回試乗したモデルは3ドアで、最も豪華でスポーティなトリム&装備が与えられていた。インテリアにも手動シェードのグラスルーフやアルミペダル、カーボン風のトリムなどが添えられる。

それにしても207の質感向上は目覚ましい。パターンシボと革シボを使い分けたインパネや、リングで囲われたメーターなどを見るにつけ、プラスチック然とした206とは別世界の印象を強く持った。

画像: プジョー207 1.6 THP(ハイプレッシャーターボ)。グリル内にフォグランプを備えるスポーツ系のボディ。まず3ドアボディが発表されたが、その後5ドアボディも追加される。

プジョー207 1.6 THP(ハイプレッシャーターボ)。グリル内にフォグランプを備えるスポーツ系のボディ。まず3ドアボディが発表されたが、その後5ドアボディも追加される。

トルクバンドの広さ、なめらかな回転が魅力

走りは、直噴化に伴う高圧縮比化とツインスクロールターボの恩恵を最大限生かし、わずか1400rpmから240Nmの最大トルクを発生するエンジンのため、ともかく出力特性が柔軟だ。クラッチミートの瞬間から大きなトルク変動を感じさせずグイグイと車速を乗せていくあたりは、2L NA級の狙い通りである。

ただ、そのぶん高回転の伸びはそこそこ。レブリミットは7000rpmからだが、実質は5500rpmあたりで一通りのドラマは終了する。とは言えそこまでが十分トルクフルで、軽いペダルとタッチの良い5速MTもサクサクと決まるから十分楽しい。それに、滑らかな回転フィールや静粛性の高さといったマナー面も格段に進化した印象だ。

パワーに合わせてフロントサスの支持剛性を上げ、リアもトーションビームの剛性を12.5%アップ。ダンパーの内部構造も見直した上、タイヤはピレリPゼロ・ネロの205/45R17を履く。

フットワークはタイヤサイズもあってやや硬めな印象。しかしギャップでの突き上げを適度にいなして伝えるあたりはやはりフランス車だ。ガチガチに動きを規制するのではなく、いい感じのボディアクションと、良く動く足が的確に路面を捉えていることを感じながらのコーナリングは痛快そのものである。

据え切りでは異様に軽くて驚かされたブラシレスモーター式のパワステも、走り出すとすぐにしっとりした重さに変わる。そんな中で、センター付近は緩めでちょうど良いのに、切り込みが増すと急にゲインの増す感覚があるのは気になった。

このTHPエンジンは来春の日本導入にも用意される予定。ただ3ドア/5速MTはマニア向けのモデルとなるのは否めず、日本での売れ筋は5ドアに搭載される1.6LのNAになると思うが、これはBMWとの共同開発版ではなく、プジョーオリジナルのエンジンで、トランスミッションはAL4と呼ばれる4速ATになる。

プジョー製エンジンは、このほかに1.4Lもあり、こちらは3ドアが5速MT、5ドアには2トロニックと呼ばれる2ペダル式のMTが組み合わされる模様だ。

ちなみに、207はノーズ形状にも2パターンが存在する。ピノキオのように鼻が伸び、グリルの桟を強調したスポーツ顔は、グラスルーフとのセットで1.6LのNAとターボに用意。鼻の尖っていない標準顔は通常のルーフとのコンビで1.4Lと1.6Lの一部に設定される。

選ぶ楽しみも大きそうな新生207。もちろん今後はさらにバリエーションの拡張も進む。パリサロンでは燃料電池を積むコンセプトモデルとしてすでにCCのカタチが見えて来たし、SWも来春のジュネーブショーあたりにお目見えするはず。ハッチバックに乗る限り、走りも質感も向上が著しいので、今後しばらくはお楽しみが続きそうだ。(文:石川芳雄/Motor Magazine 2006年12月号より)

画像: 新開発の1.6Lハイプレッシャーターボエンジン。ツインスクロールターボの採用で、2L自然吸気エンジン並みのトルクフィールを実現。

新開発の1.6Lハイプレッシャーターボエンジン。ツインスクロールターボの採用で、2L自然吸気エンジン並みのトルクフィールを実現。

ヒットの法則

プジョー207 1.6 THP 主要諸元

●全長×全幅×全高:4030×1720×1472mm
●ホイールベース:2540mm
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:150ps/5800rpm
●最大トルク:240Nm/1400rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:FF
※欧州仕様

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