2006年秋、アウディのニューモデルとして、2代目TTクーぺのほかに、もう1台注目すべきモデルがあった。それはアウディで初となる本格的なプレミアムSUV「Q7」。Motor Magazine誌は「アウディ特集」の中で、ドバイで行われた国際試乗会の模様を掲載している。その試乗記を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年12月号より)

セルフデフロックを使った機械式の第三世代クワトロ

3列シートを持つ7人乗りのアウディQ7は、全長5086×全幅1983×全高1737mm、ホイールベース3002mmという立派なボディを持つ。多少キャラクターは異なるかもしれないが、マーケットで競合するであろうライバル車とサイズを比較してみると、改めて、その大きさがわかる。

たとえば、レンジローバー、カイエン、X5などの中で最も大きなボディを持つレンジローバーよりも、Q7は136mm長く、28mm幅広く、128mm高い。いかに、Q7が大きいかがわかるだろう。Q7に近いのは、同じ時期に発表されたメルセデス・ベンツGL(5100×1955×1840mm)やキャデラックエスカレード(5100×2040×1950mm)などになる。

大きく口を開けたシングルフレームグリルの上縁は、小生の腰よりも高い位置にある。その巨体と併せて、Q7には飲み込まれそうな迫力がある。

そのQ7には、今年3月にアラブ首長国連邦のドバイで行われたアウディのイベントで乗った。車内は、A8ばりの豪華さだ。たっぷりとしたサイズのシートとドア内張りには滑らかなタッチの革がふんだんに奢られている。

メーターパネルからダッシュボード、そしてセンターコンソールにいたるデザインは、最新のアウディに準じている。エンジンの吸排気カムの断面のような形をしたスピードメーターとレブカウンターが向き合うレイアウトはA6に似ている。6速ティプトロニックSのシフトレバー付け根の四隅にスイッチを配したMMIも変わらない。

眼を引くのは、ダッシュボードに埋め込まれた大型情報モニターだ。

ナビゲーションシステムやMMIの動作状況が映し出されるのはもとより、Q7では新たな機能が加わった。それは、大型SUVならではの安全装置で、「アウディ・パーキングシステム」と呼ばれる。巨体ゆえに目視点検がしづらい車体後部をCCDカメラで映し出すものだ。左側ドアミラー下にもカメラが埋め込まれ、サイドビューを映す。同種の装置は、日本車ではコンパクトカーにも備えられている。もしかしたら、今後、他のアウディにも採用されるかもしれない。

Q7独自の装備は他にもあり、急勾配の下り坂で自動的に極低速を維持して下る「ヒルディセントアシスト」や、RSP(ロールスタビリティプログラム)など複数の機能を一体化した統合スタビリティコントロールシステム「ESP」(エレクトロニック・スタビリゼーション・プログラム)が標準装備されている。ヒルディセントアシストと同種のシステムは、ランドローバー各車とカイエンなどにも採用されている。

サスペンションは、「アウディ・アダプティブ・エアサスペンション」。最低地上高やダンピング強度を選ぶことができる。「オフロード」モードや荷物積載時に最も低くできる「ローディング」モードを含め、6つのモードが選べる。これは、新しいA6オールロードクワトロの5モードよりもひとつ多い。

ドバイの砂の浮いた道を走り始めると、Q7はその体躯を感じさせないほど軽快に加速していく。スピードメーターの針の上がり方を見れば相当の加速をしているはずなのだが、強力なエアコンで快適な温度に保たれた車内は穏やかなものだ。エンジンは、350psを発生する4.2L V8FSI。新世代のクワトロシステムは、通常40:60に駆動力を配分する。

同行者と運転を代わり、3列目のシートに座ってみたが、200km/hで巡航しながら普通の声で会話が交わせると言えば、その類い稀な快適性の高さが想像できるだろう。

立っていると足首まで埋まってしまうほど柔らかな砂が続く砂漠でも、緩急自在にQ7は走り回った。

A6オールロードクワトロ4.2に可能なことのほとんどはQ7でも可能だろう。少々乱暴に言い切ってしまえば、両車間で可能なことと不可能なことは、ボディの大きさに起因している。だから「大きくて良い」という人と「大き過ぎて困る」という人で、Q7に対する評価はおのずと異なってくる。

7人を快適に運びながら、オンでもオフでも走り切ってしまう性能に不満を抱く人はいないだろう。容易にはその死角が見付からないほどの優等生だが、優等生であるが故の印象の希薄さは否めないと言ったら、贅沢過ぎるだろうか。Q7は大型SUVであるのは間違いなのだが、乗るほどに他に直接的に比較の対象となるクルマがないことを思い知らされる。

2015年までに、現在の約83万台という年間生産台数を140万台に引き上げることをアウディは標榜しているから、既存のプレミアムカテゴリーの間隙を埋めると同時に、このQ7のような新しい価値を持ったクルマを作り出していく必要があるのだろう。(文:金子浩久/Motor Magazine 2006年12月号より)

画像: Q7は、スポーツ性、多機能性、プレミアム性、ラグジャリー性を先進テクノロジーを用いて融合したニューモデル。全長5086mm、全幅1983mm、全高1737mmの堂々たるサイズで、3列シートレイアウトの室内には最大7名が乗車可能。

Q7は、スポーツ性、多機能性、プレミアム性、ラグジャリー性を先進テクノロジーを用いて融合したニューモデル。全長5086mm、全幅1983mm、全高1737mmの堂々たるサイズで、3列シートレイアウトの室内には最大7名が乗車可能。

ヒットの法則

アウディ Q7 4.2FSI クワトロ 主要諸元

●全長×全幅×全高:5086×1983×1737mm
●ホイールベース:3002mm
●車両重量:2240kg
●エンジン:V8DOHC
●排気量:4163cc
●最高出力:350ps/6800rpm
●最大トルク:440Nm/3500rpm
●トランスミッション:6速AT(ティプトロ)
●駆動方式:4WD
※欧州仕様

This article is a sponsored article by
''.