フェラーリ 812スーパーファスト(2017年-)
2017年のジュネーブ モーターショーで、フェラーリは新たなフラッグシップ モデルをワールドプレミアさせた。その名は「812スーパーファスト」。フェラーリのネーミング流儀には何種類かのパターンがあるが、今回の812は最高出力が800psで12気筒エンジンを搭載していることを意味している。スーパーファスト(Super Fast)とは、まさに超高速という意味であり、1960年代のフラッグシップ モデルであったフェラーリ 500スーパーファストのサブネームを復活させている。
それまでのフラッグシップであったF12ベルリネッタの発展モデルともいえる812スーパーファストだが、デザインも含めて全方位的に進化している。デザインはピニンファリーナの手を離れ、フェラーリのスタイリングセンターによるものだ。サイズ的には、F12ベルリネッタより全長、全幅ともわずかに拡大されている(全高とホイールベースはほぼ同じ)。
ロングノーズ/ショートデッキのファストバッククーペだがリアエンドはキックアップしたハイテールを採用し、フェラーリ的には「デイトナ」と呼ばれた名車、365GTB/4をインスパイアしているという。とはいえ、ヘッドランプには最新のフルLEDが採用されており、またリアコンビランプには丸型4灯を採用(F12ベルリネッタは丸型2灯)するなど、伝統と革新を融合したスタイリングといえるだろう。
フロントミッドシップに搭載されるパワーユニットは、65度のV型12気筒 DOHCと形式こそF12ベルリネッタのものと変わらないが、排気量は234cc拡大されて6496ccとなり、最新の直噴システムも採用。パワースペックは、最高出力が800ps、最大トルクが718Nmを発生。F12ベルリネッタより60psもパワーアップされ、自然吸気で8500rpmまで吹け上がる。しかも、3500rpmから最大トルクの80%を発生している。公称の最高速度は340km/h、0→100km/h加速は2.9秒とされている。
操縦性に関しても新機軸が盛り込まれ、フェラーリ初の電動パワーステアリングを採用し、これを車体電子制御システムと連携させている。その電子制御システムとは、従来からの「サイドスリップコントロール」の最新版や、後輪操舵システムの「バーチャルホイールベース 2.0」で、ドリフト走行をアシストするなど、フェラーリのフラッグシップにふさわしい痛快なドライビングを演出する。
超弩級の性能ながら、リアのハッチゲート下には十分なラゲッジスペースも備えた実用性も携えるのはFRならでは。812スーパーファストは、現代のフェラーリのフラッグシップにふさわしく、使いやすさとスーパースポーツカーのパフォーマンスを併せ持ったモデルといえよう。
2019年には、あのデイトナ スパイダー以来50年ぶりにV12エンジンをフロントに搭載したフェラーリのオープンモデルとなる、リトラクタブル ハードトップの「812GTS」が追加設定された。車速が45km/h以下なら走行中でも14秒でトップの開閉が可能だ。
フェラーリ 812スーパーファスト 主要諸元
●全長×全幅×全高:4657×1971×1276mm
●ホイールベース:2720mm
●車両重量:1630kg
●エンジン種類:65度V12 DOHC
●排気量:6496cc
●最高出力:800ps/8500rpm
●最大トルク:718Nm/7000rpm
●燃料タンク容量:92L
●駆動方式:トランスアクスル式FR
●トランスミッション:7速DCT
●タイヤサイズ:前275/35ZR20、後315/35ZR20
●当時の価格:3910万円