A1スポーツバックの新しさとQ2のポテンシャルの高さ
2017年7月に登場したアウディQ2は、Q3よりもさらに小さいコンパクトSUV。Q2やQ3が属するコンパクトSUV市場は日本メーカーが得意とする実用的なクルマがひしめくジャンルで、ここにプレミアムブランドであるアウディが参入してきたこと自体にまず驚かされたものだ。
その後、SUV人気はビッグサイズからコンパクトサイズにまで広がりを見せ、Q3だけでなくこのQ2も、登場以来、人気を集めているのはご存知のとおり。最近ではメルセデス・ベンツやBMWもGLAやX2でこの市場に乗り出しており、俄然、販売競争は激しくなっている。
2019年11月に登場した2代目アウディ A1スポーツバックも、プレミアムブランドが手を出しにくい、コンパクトクラスに属するモデルで、メルセデス・ベンツやBMWがFFモデルに注力し始める中、初代A1は2010年に登場と、アウディは一歩先を走っている。そして、実用性が重要視されるこのセグメントではプレミアムブランドの成功は難しいと言われる中、そうした常識を打ち破って人気となっている。
さて、コンパクトクラスのハッチバックであるA1スポーツバックと、SUVのQ2、この2台に共通点はあるのだろうか、そしてどのように違うのだろうか。
A1スポーツバックのラインアップは、まずFFの1.5L直4ターボでスタート、この後、販売のメインとなるだろうFFの1L直3ターボが加わることになっている。一方のQ2のラインアップも、FFの1.4L直4ターボと1L直3ターボの大きく分けて2種類と構成はよく似ている(特別なモデルとして2L直4ターボを搭載するクワトロののSQ2もあるが)。また、価格もA1スポーツバックが365万円から391万円、アウディ Q2が312万円から419万円(SQ2をのぞく)とかなり接近する。
■アウディ A1スポーツバックの車両価格(税込み)
35TFSI Advanced:365万円
35TFSI S-line:391万円
■アウディ Q2の車両価格(税込み)
30TFSI:312万円
30TFSI sport:386万円
35TFSI cod(clinger on demand)sport:419万円
SQ2:599万円
サイズ的にもこの2台はかなり近い。A1スポーツバックの全長×全幅×全高は4040×1740×1435mm、それに対してQ2は4200×1795×1500mmとひと回り大きい。ホイールベースもQ2が35mm長い。
デザイン的にも幅広のCピラーや力強いフェンダー、どことなく可愛いキャラクターなどに共通性が感じられる、A1スポーツバックにはQ2のような多角形をモチーフとしたゴツゴツとしたラインはなく、かわりにかつてのアウディスポーツクワトロから引用されたフロントグリル上部のスリットが個性を主張しているが、似ていると感じる人も多いことだろう。
こう見ると、この2台は近い関係、兄弟関係にあるように思えるが、その成り立ちは実は少々異なる。
Q2はMQBプラットフォームを使って開発されたモデルで、ホイールベースは2595mm。MQBプラットフォームはホイールベースの自由度が大きいのでこれだけでは判断できないが、実はQ2はメカニズム的にはA1スポーツバックよりもA3スポーツバックと共通する部分が多い。
一方のA1スポーツバックは、MQBプラットフォームの中でも、MQB/AOと呼ばれるものを使うのが特徴。フォルクスワーゲン ポロにも使われるプラットフォームだ。ホイールベースは2560mmで、現在のところ、ポロも含めてMQB/AOにはクワトロは設定されていない。先代のA1/A1スポーツバックにはクワトロモデルのS1/S1スポーツバックが設定されているように、技術的にはクワトロ化は不可能ではないが、リアアクスル近くにデフを置くことによる室内空間の圧迫やコスト的なことを考えると、この世代では用意されないかもしれない。
室内の広さ、開放感という点では、ほぼ互角。ホイールベースが長く、アップライトな姿勢で座ることになるQ2のほうが有利となるはずだが、A1スポーツバックはウインドウレベルを下げて開放感をうまく出している。ただしラゲッジスペースはA1スポーツバックが335L、Q2が405Lと、Q2がやはり大きい。
一方で、インパネまわりのデザインや装備には、2年ほどの登場時期の違いが感じられる。Q2ではダイヤル式のMMIが、A1スポーツバックでは液晶のタッチ式となり、ライトスイッッチもQ2のロータリー式がA1スポーツバックではボタン式となっている。
クラスの違いを感じさせるのがパーキングブレーキ。最新のA1スポーツバックがメカニカルな手動式であるのに対し、Q2は電動式となる。これは単に快適性が異なるだけでなく、アクティブクルーズコントロールやトラフィックジャムアシストといったシステムの作動にも関わってくる重要なポイントだ。
その運転支援システムをチェックすると、さすがにプレミアムコンパクトらしくいずれも上級モデル譲りの内容だが、Q2のほうがやや充実したものとなっている。
A1スポーツバックは、レーダーセンサーで前方をスキャンし危険な状況を検知すると警告また必要に応じて緊急自動ブレーキを作動する「アウディプレセンスフロント」を全車に標準装備。オプションの「アウディプレセンスベーシック」を搭載すれば、万一の際、フロントシートベルトを締め上げ、ウィンドウを自動的に閉じ、ハザードライトを点滅するなど、フルブレーキや衝突に備えて衝撃を緩和する。これ以外にも「アダプティブクルーズコントロール」や「アクティブレーンアシスト」、「ハイビームアシスト」、「アクティパーキングシステム」も用意する。
Q2 は、「アウディプレセンスフロント」、「アダプティブクルーズコントロール」(一部車種はオプション)、「アクティパーキングシステム」(一部車種はオプション)を標準装備。オプションで「アウディプレセンスベーシック」、「アクティブレーンアシスト」、「ハイビームアシスト」を用意するほか、渋滞時(0-50km/h)に前走車にあわせて加速・減速.ステアリング操作を行う「トラフィックジャムアシスト」、駐車スペースからバックで出る際に見えない後方の死角をセンサーがフォローしてドライバーに知らせる「リアクロストラフィックアシスト」もオプションリストに加えられている。
こうして技術的な部分も含めて見てくると、同じ価格であれば、ひとクラス上(0.5クラス上?)のQ2にアドバンテージを感じるが、 A1スポーツバックには最新モデルらしい魅力が感じられるところが悩ましい。
A1スポーツバックに搭載される1.5L 直4ユニットは、従来のQ2にも搭載される1.4TFSIに代わる新世代ユニットで、高圧の直噴システムの採用などにより最高出力150ps、最大トルク250Nmを発揮する一方で、効率を上げる気筒休止システム シリンダーオンデマンド(COD)も採用したもの。またMMIナビゲーションシステムや多機能のアウディバーチャルコックピットなどのインターフェイスも最新の仕様となっている。
今回はA1スポーツバック 35TFSI AdvancedとQ2 35TFSI cod sportを比べてみたが、走りの心地よさ、快適性では、やはり設計が新しく車高も低いハッチバックのA1スポーツバックがやや有利。ともに駆動方式はFF、サスペンションはストラット/トレーリングアームで、軽やかだが速度を上げるとともにどっしり感を増すステアリングフィール、高いボディ剛性はアウディらではの世界を見せてくれるが、とくにA1スポーツバックの洗練されたアクセルレスポンスや軽快感は気持ちのいいものだろう。
この比較では登場から3年が経過するQ2のポテンシャルの高さを実感しながら、A1スポーツバックの新しさに大きな魅力を感じることになった。さて、あなたならどちらを選ぶ?
アウディ A1スポーツバック 35TFSI Advanced 主要諸元
●全長×全幅×全高:4040×1740×1435mm
●ホイールベース:2560mm
●車両重量:1220kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1497cc
●最高出力:150ps/5000-6000rpm
●最大トルク:250Nm/1500-3500rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:FF
●サスペンション:ストラット/トレーリングアーム
●ラゲッジルーム容量:335L
●タイヤサイズ:215/45R17
●JC08モード燃費:17.3km/L
●最小回転半径:5.1m
●車両価格:365万円
アウディ Q2 35TFSI cod sport 主要諸元
●全長×全幅×全高:4200×1795×1500mm
●ホイールベース:2595mm
●車両重量:1340kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1394cc
●最高出力:150ps/5000-6000rpm
●最大トルク:250Nm/1500-3500rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:FF
●サスペンション:ストラット/トレーリングアーム
●ラゲッジルーム容量:405L
●タイヤサイズ:215/55R17
●JC08モード燃費:17.9km/L
●最小回転半径:5.1m
●車両価格:419万円