ガソリン価格は税金が半分以上というのが現実
クルマが走行するときに、必ず必要となるのが燃料だ。現在の自家用車の燃料は様々で、電気や水素もあるが、今回はガソリン、軽油について解説しよう。これらの税金は本体価格にのせられているので、その場で直接ユーザーが支払っている感もあるが、基本的には事業会社に課税される間接税となる。ガソリンや軽油は原油相場価格で変動するので時期にもよるが、本体価格の約半分は税金といってもいい。各燃料ごとにもう少し細かく見ていこう。
ガソリンには「揮発油税及び地方揮発油税(以降、ガソリン税)」、「石油税」、「消費税」がかかってくる。ガソリン税は道路整備のために使用される目的税だったが、平成21年度税制改革により普通税となった国税だ。国が事業社から徴収するが、地方揮発油税分は国から地方自治体に配分される仕組みになっている。ガソリン税の税額は揮発油税分が1Lあたり48.6円、地方揮発油税が5.2円。合計53.8円だ。
本来は揮発油税が1Lあたり24.3円、地方揮発油税が4.4円なのだが、昭和48年に始まった「道路整備五カ年計画」の財源不足を補うため、暫定的に現在の税額に増額された。以後、暫定処置をなし崩し的に延々繰り返し、50年近く経過した現在でも「暫定」処置を行っている。税額規模は平成30年度の税収は揮発油税が2兆3300億円、地方揮発油税が2493億円だ。
ちなみにガソリン税には例外もあって、沖縄県では「沖縄の復帰に伴う特別措置に関する法律」によりガソリン税が1Lあたり7円減税されている。しかし「沖縄県石油価格調整税条例」により1.5円徴収されているので、最終的に1Lあたり5.5円減税されている。このような理由から沖縄県のガソリンは安い傾向にある。
「石油税」は「石油石炭税」と呼び、使途を特定しない普通税で国税だ。ただし、これは一般歳入に計上された後、『石炭並びに石油及び石油代替エネルギー特別会計法』に基づき、特別会計に繰り入れられるというちょっとややこしい使い方をする。使い道は国家と民間の石油備蓄や、石油代替エネルギー対策だ。
石油石炭税にはさらに、「地球温暖化対策のための税」が上乗せされている。「地球温暖化防止対策のための税」は全化石燃料由来の二酸化炭素排出量を削減し、地球温暖化対策を強化するために使用される目的税という名目で国税となる。ちなみにこれはガソリンや軽油だけでなく、電気やガスにも「石油石炭税」に上乗せされて、徴収されている。
「石油石炭税」も間接税としてユーザーが給油に支払う代金に含まれている。その額は1Lあたり2.8円で、平成30年度の税収は8273億円となっている。
この上に「消費税」がかかってくる。消費税は、ガソリン税と石油石炭税を含むガソリン価格に課税される。これに関しては税金がかかっている上に、さらに消費税を課す「二重課税」として問題提起する人がいる一方、政府はガソリン税と石油石炭税はガソリンの製造コストであり、税金の二重課税に当たらないとしている。
安いと言われる軽油にも税金がかかる。軽油には「軽油引取税」「石油石炭税」「消費税」がかかる。「軽油取引税」は軽油を引き渡す行為に対し課税され、普通税で地方税だ。昭和31年の軽油取引税導入当初は、道路維持整備を目的とする目的税だったが、平成21年度税制改革により普通税に変更された。
税額は1Lあたり32.1円で、ガソリンに比べれば割安だ。だが、こちらも特例税率のため高額になっており、本来は1Lあたり15円になっている。
「石油石炭税」は1Lあたり2.8円で、ガソリンと変わらない。軽油を給油する際にも「消費税」が課税されるが、こちらはガソリンのように余り問題視されていない。その理由は「石油石炭税」を含む軽油価格に「消費税」は課税されるものの、「軽油取引税」には課税されていないからだ。軽油の製造コストはあくまで「石油石炭税」のみ、というのが国の姿勢だ。平成30年度の税収は9492億円だ。
クルマには購入、維持、使用の段階でこのように多くの税金がかかってくる。まだ贅沢品だった時代の名残とか、取りやすいところから取るという税務行政の結果ととか、さまざまなことが言われるが、自動車ユーザーとしては払う義務は全うした上で、より公平な税制を求めていく必要があるだろう。(文:猪俣義久)