2020年7月12日、F1第2戦シュタイアマルクGPがオーストリアのレッドブルリンクで行われ、優勝を狙ったレッドブル・ホンダは3位、4位に終わった。第1戦のダブルリタイアと比較すると好結果と言えなくもないが、優勝が見えかけていた前戦と違って、この日は勝機を見つけることができなかった。なぜ、レッドブル・ホンダは勝てなかったのだろうか。第2戦シュタイアマルクGPを振り返ってみよう。

ホンダ勢は全車完走、うち3台が入賞

予選土曜日とは打って変わって、日曜日のレッドブルリンクは好天に恵まれたが、気温はあまり上がらなかった。予選がウエットコンディションで行われたため全車自由にスタートタイヤを選ぶことができたが、この涼しいコンディションもあって上位勢のほぼ全車がソフトを選ぶことになった。ここがひとつのレースのポイントだった。

決勝ではスタート1周目にフェラーリの2台が接触するアクシデントは発生し、いきなりセーフティカー導入となるなど、この日も波乱を予感させる立ち上がりとなった。ところが、レースが再開されると、ポールのルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)が後続を引き離しにかかり、これを追うマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)との差を少しずつ広げていくという静かな展開になる。

3番手にバルテリ・ボッタス(メルセデスAMG)、4番手にアレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)がつけるが、ペースが落ち着いたところで、アルボンがトップ3から少しずつ遅れ始める。アルボンになにがあったか明らかになっていないが、後続の追い上げの心配がなくなったボッタスは自由にフェルスタッペンにチャージをかけることができるようになった。

このため、フェルスタッペンは後半勝負のためにタイヤ交換を遅らせることができず、トップ3の中でもっとも早くタイヤ交換を行うことなってしまった。しかもスタート直後以降、大きなアクシデントはなく、セーフティカー導入の混乱もなく、ファルスタッペンが勝負に出るタイミングが訪れることはなかった。それどころか、早めのタイヤ交換のために、レース終盤にボッタスに逆襲を許してしまう結果となった。

画像: 3位入賞もメルセデスAMGの牙城を崩すところまではいかなかったマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。アルボンが遅れ、孤軍奮闘という形になったのが痛かった。今後はチームとして戦えるかがポイントとなりそう。

3位入賞もメルセデスAMGの牙城を崩すところまではいかなかったマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。アルボンが遅れ、孤軍奮闘という形になったのが痛かった。今後はチームとして戦えるかがポイントとなりそう。

アルファタウリ・ホンダの2台はハードタイヤを使うなどほかのチームとは異なる戦略をとってダニール・クビアトが10位入賞、ピエール・ガスリーは他車との接触からマシンバランスに苦しみ15位でレースを終えている。

前例のない同じサーキットでの2週連続開催となったが、この2戦がまったく違う展開になったのは興味深いところ。それにしても、違った展開で2連勝を飾ったメルセデスAMGの速さは見事だったし、トラブル続出の開幕戦からわずか数日で問題をクリアしてしまうF1チームの技術力には感心させられた。

では、レッドブル・ホンダとメルセデスAMGの差は決定的かというと、そんなこともない。今回は気温が上がらずメルセデスAMGにトラブルの心配がなかったこと、アクシデントなどが少なく序盤のリードが効いたことが大きかった。この後、気温が高くなるレースが続くだけにまだまだ予断は許さない。この日のメルセデスAMGのレースペースは速かったが、低い気温も追い風になっていたように見える。クーリングに課題のあるメルセデスAMGは、高温となった昨年は大きく後退している。

開幕2戦を終えて、ホンダの田辺豊治 F1テクニカルディレクターは「先週に続きレッドブル・リンクで開催された第2戦に向けては、特に開幕戦でのレッドブル・ホンダの2台のマシンのリタイア原因の解析および対策を進めてきました。また、先週のレースデータを解析してセッティングの最適化も進めてきました。その中で迎えた第2戦では大きな問題は発生せず、ホンダのパワーユニットを搭載した4台は全車完走を果たしました。 特に、レッドブル・ホンダのフェルスタッペン選手が今シーズン初となる3位表彰台を獲得したという結果はよかったと考えています。また、6番グリッドからスタートしたアルボン選手も粘りの走りで4位、アルファタウリ・ホンダののクビアト選手が10位入賞と、それぞれポイントを獲得できたことも前向きにとらえています。ガスリー選手については7番グリッドといういいポジションでスタートし、レース序盤のペースもよかったものの、その後はマシンダメージによる影響でポジションを落とし、15位フィニッシュという残念なレースになりました。 来週末にはサーキットを変えてハンガリーでのレースが待っています。暑くなる予報も出ているようなので、クーリング設定なども含めて十分に対応を考えて臨みたいと思います」とコメントしている。各ドライバーのコメントは次のとおり。

マックス・フェルスタッペン

画像: 3位に入賞したマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。気温が意外と上がらず、ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)のハードプッシュについていけず。

3位に入賞したマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。気温が意外と上がらず、ルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)のハードプッシュについていけず。

「今日は表彰台獲得を果たすことができました。もちろん、また表彰台に上がれたことはよかったのですが、優勝争いをするにはまだ速さが及びませんでした。今日は可能な限りプッシュし、ルイス(ハミルトン)についていこうと全力を振り絞りましたが、叶いませんでした。まだ課題は多く、改善に向けてできる限り推し進めていかなければなりません。みんながどれだけ懸命に取り組んでいるか、僕は分かっています。僕にとって、今日は、バルテリ(ボッタス)とのバトル以外、最高にエキサイティングなレースとは言えません。あのとき僕のタイヤはほぼ終わりかけていて、パスされるだろうとは思いましたが、簡単には行かせまいとアウト側から抜き返しました。後続との差は大きく、僕に失うものはなかったので、リスクもありませんでした。3位はいい結果ですが、望んだ位置はもっと上であり、毎週優勝争いをしたいと思っています。次のハンガリーは、ストレートは少なくチャンスは増えそうですし、気温が上がりそうです。次週に向けてリセットしていきます」

アレクサンダー・アルボン

画像: 4位に入賞したアレクサンダー・アルボン(アルファタウリ・ホンダ)。レース中盤、ペースがい落ちついたところでトップ3に離され、フェルスタッペンを援護できなかった。

4位に入賞したアレクサンダー・アルボン(アルファタウリ・ホンダ)。レース中盤、ペースがい落ちついたところでトップ3に離され、フェルスタッペンを援護できなかった。

「先週のレース結果を考えると、今日はレース内容もよかったですし、4位に入賞してチームのためにポイントを獲得できたこともよかったです。 自分が思っていたよりも後ろの方でレースを展開することになり、レースペース自体もあまりよくありませんでした。ただ、先週よりはマシンをよく理解できていますし、どこを改善していけばいいのかも分かっています。ロングストレートや決まったタイプのコーナーでは苦しみがちで、マックスも僕も改善が必要だと考えている部分は同じです。 今日はレース終盤でペレス選手が非常に速く、最終ラップのターン4では抜きにかかられましたが、十分に彼の分のスペースは開けていました。彼が少し膨らんだので接触しましたが、大きなクラッシュにはなりませんでした。ハードなレースの1シーンという感じだったと思います。ハンガリーまで1週間ということで、ここからできることをやっていきます」

ダニール・クビアト

画像: 10位に入賞してポイントを獲得したダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)。ハードタイヤを駆使して、しっかりとポジションを守った。

10位に入賞してポイントを獲得したダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)。ハードタイヤを駆使して、しっかりとポジションを守った。

「金曜、土曜と苦戦を強いられただけに、今日は素晴らしいレースができたと言えます。先週のレースに比べてリタイアしたマシンが少なかったにもかかわらず、きちんと仕事をして1ポイント獲得を果たすことができたので、うれしいです。すべて計画通りに進みました。アタックを受けることも多かったのですが、しっかりとポジションを守り、レース終盤にかけては後続との差を広げることもできました。ここからはまた来週末に迫っているハンガリーに向けて切り替えなければいけません」

ピエール・ガスリー

画像: 15位に終わったピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)。7番グリッドの好位置からのスタートで期待されたが、序盤の接触が響いた。

15位に終わったピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)。7番グリッドの好位置からのスタートで期待されたが、序盤の接触が響いた。

「昨日の予選がよかっただけに、今日の結果にはがっかりしています。いいグリッドだったので、好結果を期待しましたが、スタートからつまずきました。ターン1でダニエル(リカルド)に接触されてスピンしそうになったのです。その後もかなり厳しい状況が続き、リアの感触が少しおかしかったです。2ストップ作戦なども試してみましたが、ペースが上がりませんでした」

なお、タイヤを供給するピレリはこの日の結果を「日曜日はドライコンディションになりましたが、予想どおり、気温と路面温度は先週のレース中よりも低く、スタートタイヤが自由に選択できるにもかかわらず、大多数がソフトタイヤを選択しました。そして、予想どおり、上位勢はソフト→ミディアムタイヤのワンストッパーが占めました。50度を越える路面温度から激しい雨までさまざまな状況がありましたが、すべてのタイヤパフォーマンスに満足しています」と分析している。

画像: 決勝での各ドライバーのタイヤ戦略。路面のコンディションがよく、セーフティカー導入も少なかったので、ソフト-ミディアムのオーソドックスなタイヤ戦略が主流となった。ハードタイヤを装着したのはアルファタウリ・ホンダだけだった。

決勝での各ドライバーのタイヤ戦略。路面のコンディションがよく、セーフティカー導入も少なかったので、ソフト-ミディアムのオーソドックスなタイヤ戦略が主流となった。ハードタイヤを装着したのはアルファタウリ・ホンダだけだった。

3週連続開催となる第3戦ハンガリーGPは7月19日、ハンガリーの首都ブタペスト近郊のハンガロリンクで開催される。

2020年F1第2戦シュタイアマルクGP(オーストリアGP2)結果

優勝 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG)71周
2位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG) +13.719s
3位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ) +33.698s
4位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ) +44.400s
5位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)+61.470s
6位 11 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)+62.387s
7位 18 L.ストロール (レーシングポイント・メルセデス) +62.453s
8位 3 D.リカルド(ルノー)+62.591s
9位 55 C.サインツ(マクラーレン・ルノー) +1L
10位 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ) +1L

15位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ) +1L

F1ドライバーズランキング(第2戦終了時)

1位 V.ボッタス(メルセデスAMG)43
2位 L.ハミルトン(メルセデスAMG)37
3位 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)26
4位 C.ルクレール(フェラーリ)18
5位 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)16
6位 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)15

F1コンストラクターズランキング(第2戦終了時)

1位 メルセデスAMG 80
2位 マクラーレン・ルノー 39
3位 レッドブル・ホンダ 27
4位 レーシングポイント・メルセデス 22
5位 フェラーリ 19
6位 ルノー 8

This article is a sponsored article by
''.