ホンダ フィット(初代:2001年)
ロゴの後継車として登場したフィットは、まず第一印象としてロゴよりも立派になったな、と感じられた。ノーズを思い切り短くして、キャビンのボリュームを大きく取り、安定感のあるリアビューや力強いフェンダーラインなどで構成されたスタイリングが、そう感じさせてくれるのだろう。しかも、コンパクトカーにありがちな、小さくまとまった雰囲気がないのもいい。
全長3830×全幅1675×全高1525mmというサイズながら、おとな4人が乗っても狭さを感じることはない。リアシートのヘッド&フットスペースも十分に広い。このサイズで、この広さを生み出しているのは、高い衝突安全性を持たせながらのショートノーズ化と、新発想のフロントシート下のセンタータンクレイアウトを採用したプラットフォームによるところが大きいだろう。
コクピットまわりでは、Aピラー付け根の小さな三角窓が効果的で、室内は明るく開放感がある。アルミのリングに囲まれた3眼式メーターの視認性は良好で、メタリック塗装が施されたインパネもモダンな雰囲気だ。専用にデザインされたオーディオや、その下に配されたエアコンの丸いスイッチ類の処理もユニークだ。このあたりは、今までのホンダのコンパクトカーに比べると演出が巧くなったと感じさせる。
運転席の周辺に小物入れが多く、使い勝手もいい。少し硬めのシートも座り心地は悪くなく、長時間のドライブでも疲れにくい。リアシートは先に述べたように広さは十分で、座面を起こすチップアップモードやラゲッジフロアに折りたたんでしまうダイブダウンモードなど、アレンジは多彩だ。ラゲッジスペースも、普通の状態でもこのクラスとしては十分な広さがある。
走りも、期待に違わないものだった。ツインプラグのi-DSIエンジンの感触は良く、1.3Lから86psと12.1kgmというパワーとトルクはハイチューンとはいえないが、効率の良いCVTとの組み合わせでスムーズに車速を伸ばしていく。ロードノイズや風切り音も控えめで、遮音対策が効いているようだ。
足まわりも、悪くない。コーナーではロールが抑えられ気味でキビキビとした動きになっている。大きく負荷がかかった状態では、きちんとストロークしてくれる。ただし、路面の継ぎ目や細かい凹凸では、少しアタリの強さを感じさせる。このあたりは、もう少し熟成させる必要がありそうだ。ステアリングは電動パワステを採用しているが、全体的にタッチは軽め。もう少し、しっかり感が欲しいところだ。
とはいえ、フィットは基本がしっかりと作られているコンパクトカーであると感じさせてくれた。とくに、高い剛性を感じさせるボディが、全体の質感を大きく上げているようだ。広さやユーティリティも文句なし。素晴らしいプラットフォームを得たことで、ホンダのスモールカー全体の未来が、楽しみになってきたことは間違いない。
■ホンダ フィト W 主要諸元
●全長×全幅×全高:3830×1675×1525mm
●ホイールベース:2450mm
●車重:990kg
●エンジン形式:直4・SOHC・横置きFF
●排気量:1339cc
●最高出力:63kw(86ps)/5700rpm
●最大トルク:119Nm(12.1kgm)/2800rpm
●ミッション:CVT
●タイヤ:175/65R14
●当時の価格:126万円