静粛性、操安性、乗り心地、ラダーフレームの常識を超えた新プラットフォーム
2002年に登場したランドクルーザー120系プラドは「ニュートラディショナル4WD」をテーマに、オフロード性能は当然のこと、オンロード性能も意識して開発が進められた。そこで着目したのがフレームで、開発陣は「世界最高のラダーフレーム付きSUV」を目指した。
ラダーフレームは、タフさが魅力なボディフレーム構造だが、頑丈がゆえに重く、かつ操縦安定性や静粛性も劣るというデメリットも持っている。このデメリットを極限まで減らすべく、開発陣は5年の歳月をかけて、ねじり剛性を160%も高めながら、静粛性、操縦安定性、乗り心地性能など細心の見直しを図ったラダーフレームを完成させた。
数多くの電子デバイスの搭載で高級SUVへと進化した
フレームのほか、120プラドのポテンシャルを引き上げたメカニズムを挙げると、路面状況や走行状態に応じて前後タイヤへのトルクを配分するトルセンLSDを採用したフルタイム4WD、空転を防止するアクティブTRC、カーブ走行時に車両の姿勢を制御するVSC、高級グレード用の、状況に応じてサスペンションの減衰特性を変化させるH∞TEMSなど、悪路の走破性能を考慮した電子デバイスが多数搭載されている。これらは細かい仕様変更を遂げながらも現行モデルにも採用されるものも多く、信頼性と実用性はお墨付きだ。
サスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーン、リアはコイルリジッド式と先代90プラドと同じ方式だが、実は大きなリニューアルが加えられている。各部のレイアウトや素材を見直した結果、フレーム剛性アップの効果も加わり、無駄な動きを排除しつつ路面をしっかりと捉える高いレベルの走行安定性能を可能にした。
2007年、ついにディーゼルがラインナップから消滅
一方パワーユニットは、90プラドから引き継いだガソリンが2種とディーゼルが1基種。ガソリンが2693cc直4の3RZ-FE型(150ps/24.0kgm)と、3378cc・V6・5VZ-FE型(185ps/30.0kgm)。ディーゼルは今でも大人気のコモンレール式2982cc直4インタークーラーターボ付きの1KD-FTV型(170 ps/35.9kgm)。トランスミッションはMTはなく、すべて4速ATを設定した。
2004年には3RZ-FE型を2TR-FE型(163ps/25.1kgm)に進化させた。さらに翌2005年には5VZ-FE型を、連続可変バルブタイミング機構や2段階可変吸気システムを採用した3955cc V6の1GR-FE型(249ps/38.8kgm)に変更し、全域に至るパワーアップを図った。なおこのエンジン搭載モデルは、道路に応じた変速プログラムを働かせるスーパーインテリジェント5速ATを併用。これらにより120プラドは、ハイレベルなポテンシャルを与えられた。
ただし2007年、オフロード4WDファンをもっとも悩ませただろう「自動車NOx・PM法」が施行されると、ディーゼルエンジン車は国内都市部での登録ができなくなってしまった。これを機に、1KD-FTV型は120プラドから外され、以降はガソリンエンジンのみラインナップされた。
ワイルドなルックスから洗練されたフォルムに
これらタフな内面とは裏腹に、120プラドのルックスはとても洗練されたものになった。北欧マーケットを意識したデザインは、グリルやフェンダーなどランドクルーザーらしさを残しながらも流線型を用いた近代的なフォルムを作り上げている。発売当初設定されたボディは5ドアロングと3ドアショート。その両ボディの大きさをほとんど変えないままホイールベースを拡大し、車内空間の拡大に成功した。また最小回転半径も90プラドとほぼ同等の5ドア5.7m、3ドア5.2mと取り回し性能も十分だった。ただし、モデル末期には3ドアがラインアップから外れるなど、次世代に引き継ぐ準備を始めていく。
120プラドは、ディーゼルエンジンが姿を消すといった激動の時代を請け負いながらも、秀でる走行性能と快適な居住性、ハイセンスなルックスを生かし、ランドクルーザーが新時代に進むべき道を示した車両であった。そして発売から7年が過ぎた2009年、販売を終了し150プラドへとバトンを受け渡している。(文:田尻朋美)