WRC参戦歴を誇るスポーティでスペシャルなグレード
あのニュルブルクリンク(オールドコース)のレンタルマシンとしても使用されていると言えば、その実力の高さを想像していただけるのではないだろうか。コストパフォーマンスにメチャクチャ優れた本物のスポーツカー。こんなクルマは世界中どこを探してもない!と、断言できるほどの逸車だ。
そんなスイフトスポーツが誕生したのは2003年のこと。愛称は「スイスポ」だ。2000年に誕生した初代スイフトの一部改良の際に登場したのだが、その内容が驚異的だった。いわゆる見た目のみをスポーツ仕様にしたモデルではなく、エアロパーツも空力をテストした本格派を装着。さらにボディ補強、エンジン、トランスミッション、サスペンション、ブレーキまで専用のものを投入。つまり標準車とはまったく違う完全な別物として送り出されたのだ。
その姿勢はずっと変わっておらず、時にはWRC(世界ラリー選手権)にも参戦するなどスペシャルなグレードとしての歴史は脈々と受け継がれ、今回試乗したのは17年登場の4代目スイフトスポーツで、今年5月に一部仕様変更が実施されたモデルとなる。
実は、そもそも4代目のスイフト(標準車)が年に誕生した際、そのあまりの出来栄えの良さに驚いたのを昨日のことのように覚えている。それくらい完成度が高かった。そして、その際に頭をよぎったのは「ノーマルがこんなに良かったら、スポーツはどうなっちゃうんだ?」という疑問と心配。期待感は当然あるのだが、もし肩透かしだったら・・・という不安を抱いてしまうほどだったのだ。
安全装備の充実だけでなく熟成が進んだという好印象
もちろん、登場してみればそんな心配や不安は無用だった。会心の出来栄えで、スイフトスポーツは私を裏切らなかったのだ。
では今回、スイスポでは何が変わったのか?後退時ブレーキサポート/後方誤発進抑制機能/全車速追従機能付ACCがATモデルに採用されたこと。リアパーキングセンサー/標識認識機能/ブラインドスポットモニター/リアクロストラフィックアラートが、ATモデルだけでなくMTTモデルにも追加されたこと。そして以前から装着されていた、車線逸脱抑制機能などの制御がよりきめ細やかになったことだ。
つまり絶対的なニーズが高まっている先進安全技術系のレベルアップだ。確かに安全装備は大切だが、根っからの「スイスポ好き」としては「あぁ、そうですか。で、何か?」とも、言ってみたくなる。
ところが!である。乗ってみたらやっぱり違ったのだ。以前よりも全体的な挙動のスムーズさが増している。それは決してマイルドになったわけではなく、全体的なつなぎ目がより滑らかに磨かれたという感じだ。クルマの動きが、さらに高次元でナチュラルになったように感じられたのである。たとえるなら、どこか金属と金属がこすれあっていたものが、ピカピカに研磨されてツルッと滑らかに動くようになった感じ、とでも言えば伝わるだろうか。
エンジンは気持ちよく高回転まで回り、クロスレシオの6速MTはシフトフィールも気持ち良く入る。ブレーキも完全に自分のコントロール下に置けるので、絶妙なタッチで操作できる。まさにそんな、感性に訴えるかのようなブラッシュアップが施されていた。
いや、もしかしたら本当に何もしていないのかもしれない。量産が進むうちに、細かいところが上手く合わさるようになっただけなのかもしれない。そうだとしても、それでもいい。より爽快感が増したなら、それで十分ではないか。
そう思わせてくれるような、スカッとした気持ち良さがスイスポにはある。今回、車両価格が装備の充実により200万円を1万7400円ほど超えてしまったが、いまだ世界中にこのプライスでこんなクルマは他にない!という事実は、間違いなく健在なのだ。(文:竹岡 圭)
■スズキ スイフトスポーツ主要諸元
●全長×全幅×全高=3890×1735×1500mm
●ホイールベース=2450mm
●車両重量=970kg
●エンジン= 直4DOHCターボ
●総排気量=1371cc
●最高出力=140ps/5500rpm
●最大トルク=230Nm/2500-3500rpm
●駆動方式=FF
●トランスミッション=6速MT
●車両価格(税込)=201万7400円