ランドローバー フリーランダー(2001年)
1997年末にはヨーロッパで販売が開始された、ランドローバー初のSUV「フリーランダー」。日本への導入も心待ちにされていたが、ようやく日本デビューを果たし、試乗する機会を得た。
まずはそのスタイリング。写真で見たときは「ランドローバーのマークがなければ、日本製のSUVみたいだな・・・」と思っていたが、実車を見たら、けっしてそんなことはないことが分かった。フラッグシップであるレンジローバーに似たデザインのクラムシェル風ボンネット、ディスカバリー同様に後半が高くなったルーフライン(5ドア)など、ディテールのそこかしこにランドローバーのアイデンティティが散りばめられている。
何よりもその顔つきは、間違いなくランドローバー家のそれである。ユニークなスタイルの3ドア ソフトバックは、リアウインドーにガラス(もちろんワイパー付き)を使っているのはさすがだ。インテリアも、やはりランドローバーらしい。本革をふんだんに使ったESの豪華さ、2トーンのクロスを用いたGSのモダンさ、どちらも悪くない。デュアルエアバッグやエアコン、パナソニック製MDオーディオなど、安全&快適装備も充実している。
車内に乗り込んでみると、他のSUVに比べてアイポイントはかなり高い。フロントウインドーの傾斜角が比較的きついので、座高の高いドライバーはヘッドまわりのスペースに少し不満を感じるかもしれない。だがそれ以外、室内はリアシートも含めて広さは十分で、おとな5人で長距離ツーリングに出かけたとしても、まず不満は出ないだろう。
フリーランダーは、ランドローバー車としては初の横置きエンジンベースの4WDだ。インパネまわりには、後述するHDC(ヒル ディセント コントロール)のスイッチ以外、デフロックやトランスファーなどの操作系はない。だが、それでも問題ないことをラフロード走行で実感した。雪混じりの滑りやすいダート斜面でも、Dレンジのままストレスフリーで軽快に走ってくれる。急な下り斜面ではATセレクターをLに入れ、HDCのスイッチをONにすれば、ブレーキ操作不要でトコトコと歩くような速さで安全に下ってくれる。ラフロード走行に慣れていない初心者には、最高の武器になるだろう。
オンロードでの乗り心地も柔らかすぎず、高速道路ではミシュラン製タイヤが発するロードノイズが少し気になるものの安定感は高い。トルクフルなV6エンジンは3000rpmも回っていれば十分な走りっぷりを見せてくれるが、その気になって4000rpm以上回すと、BMWユニットのような快音を発しする。
5速ATはマニュアルシフトも可能なステップトロニックだ。輸入車の場合、左ハンドルから日本仕様の右ハンドルに変更してもシフトゲートは左ハンドル仕様のままなモデルも多いが、フリーランダーは元から右ハンドルだから扱いやすい。
一見、日本製SUVにも雰囲気は似ているが、走らせてみるとやはり「正当派」の血統をあらためて感じさせてくれた。価格差は若干あるものの、ライバルとなる日本製SUVにとって、フリーランダーは本格派の手強い存在になることは間違いないだろう。
■ランドローバー フリーランダー 5ドアES 主要諸元
●全長×全幅×全高:4390×1810×1770mm
●ホイールベース:2555mm
●車両重量:1580kg
●エンジン形式:V6・4バルブDOHC・横置き4WD
●排気量:2497cc
●最高出力:130kw(177ps)/6250rpm
●最大トルク:240Nm(24.5kgm)/4000rpm
●トランスミッション:5速AT (ステップトロニック)
●タイヤ:215/65R16
●車両価格(当時):335.0万円