クライスラー PTクルーザー(2001年)
昨年(編集部註:2000年)にアメリカ本国で発表されてから間もなく、日本でも発売されたクライスラーのPTクルーザー。クライスラー ブランドのクルマとしては珍しく?(失礼!)日本でもかなりのバックオーダーをかかえるほどの人気を誇っている。今春の東京オートサロンでも、これをベースにしたカスタムカーを数多く見かけたくらいだ。
PTという名は、「パーソナル トランスポーテーション」の略だそうで、開発コード名もPTだっという。1930年代の名車、クライスラー エアフローを現代的にアレンジしたという、ちょっとクラシカルなスタイリングは、アメリカ本国はもちろん日本の街中にもけっこうマッチする。
全長は4330mmと比較的コンパクトだが、1600mmという車高はタワーパーキングによっては入れないかもしれない。室内も外観同様、クラシカルなテイストがあちこちに見受けられる。左右対称のインパネは、右ハンドルを作りやすいようにデザインされたのだろう。日本仕様は右ハンドルのみの設定だ。
スポーツカーに代表されるような、速いクルマやパワフルなクルマが好きな人は、この手のパイクカー的に思えるクルマは興味が湧かないかもしれないが、売れる理由は乗ってみるとよくわかった。スタイルは5ドアハッチバックだが、4ドアセダン的にリアシートを使っても実用性は高い。
運転席は着座位置が高いので、視界はいい。リアシートも居住性が高く、さまざまなアレンジも可能だからワゴン的にも使える。VW ビートルよりは数倍実用性があるから、後席に人を乗せる機会が多かったり、荷物を載せる機会が多かったりとか、普通に使うのだったらこちらをオススメしたい。
アメリカ本国仕様のエンジンは2.4Lなのだが、日本仕様はクライスラー ネオンのものと同じ2Lとなる。しかも本国仕様はメキシコ製だが、日本仕様はオーストリア製だ。つまり、アメリカ車だけれどヨーロッパで生産されているわけだ。141psと19.2kgmのパワーは、1.5トン近い車重に対して、可もなく不可もなくといったレベル。
試乗車のタイヤはグッドイヤーのNCTだったが、市街地走行でもノイズがけっこう大きい。乗り心地は意外と硬めで、路面からの突き上げはそれなりに感じる。これは前/後席とも同じ印象だ。また、最小回転半径が6.1m!とサイズの割りに小回りが利かないのも気になるところだ。
なんて書くといいところがないみたいだが、手ごろな価格で実用性は高いし居住性はいいし、他に類を見ないこのスタイリングがお気に入りなら、ぜひ「買い」だ。50万円高で本革シートなどを装備したリミテッドもあるが、試乗車のクラシックで装備は十分だ。あとは自分で好きにカスタマイズすればいい。
PTクルーザーは、ともすればパイクカーのように思われがちだが、高い実用性で21世紀に十分通用するクルマだった。
■クライスラー PTクルーザー クラシック 主要諸元
●全長×全幅×全高:4330×1725×1600mm
●ホイールベース:2615mm
●車両重量:1450kg
●エンジン形式:直4・4バルブDOHC・横置FF
●排気量:1996cc
●最高出力:104kw(141ps)/5700rpm
●最大トルク:188Nm(19.2kgm)/4150rpm
●トランスミッション:電子制御式4速AT
●タイヤ:195/65R15
●車両価格(当時):230万円