プジョー 206CC(2001年)
オープンカーは楽しいけれど、クーペの快適性も捨てがたい。それに雨の多い日本という国の気候を考えると、オープンカー好きでも手放しでオープンカーを選ぶというわけには、なかなかいかないだろう。開放感を味わいたいときはオープンで、悪天候や落ち着きたいときにはクーペに乗るという2台持ちが理想という人は、けっこう多いはずだ。
そんなゼイタクな希望を叶えてくれるクルマ、プジョー 206CCが登場した。CCとは「クーペ・カブリオレ」の略で、まさしくクーペとカブリオレの両方の性格を併せ持つクルマだ。1999年に発表されたコンセプトカーでは「20ハート」という名称だったが、正式名称は206CCとなった。
ハッチバックの206をベースに、リアのラゲッジスペースに折りたたみ式のメタルルーフを収納する。ルーフの開閉は電動油圧による制御で、操作はボタンひとつだから快適なことこの上ない。じつはプジョーは1934年に402エクリプスというモデルでクーペカブリオレの提案をしており、プジョーらしいユニークな発想と最新の電子制御技術が、これを現代に甦らせたともいえるだろう。
さて、ハッチバックもキュートなスタイルだったが、クーペカブリオレ化された206CCのスタイルも、なかなか可愛らしい。それも、オープンでもクローズドのクーペでも、流麗さとキュート感が兼ね備わっているのがいい。日本でも発表されるやいなや人気沸騰で、かなりバックオーダーを抱えているらしい。
インパネまわりは基本的にはハッチバックと変わらず、フロントシートはオープンでもクローズドでも快適だが、2人掛けとされているリアシートはシートバックは立ち気味でスペースも狭く、エマージェンシー用か荷物置き場として考えたほうが賢明だろう。ちなみに、チャイルドシートの装着も不可能に近い。
搭載されるパワーユニットは、[ハッチバックと同じ最高出力108psと最大トルク15.0kgmを発生する1.6LのDOHC。トランスミッションは4速ATのみの組み合わせとなる。複雑な開閉機構とメタルルーフ、それにボディ剛性を確保するための補強もあって車両重量は1210kgとハッチバックよりも100kgほど重くなってはいるが、プジョーらしい元気の良いエンジンは、十分にスポーティな走りも楽しませてくれる。
オープンにしていても、サイドウインドーを上げておけばキャビンへ流れ込む風は抑えられ、パッセンジャーのヘアスタイルはトップがわずかに乱れる程度だ。風を感じたければウインドーを全開にすればいい。荒れた路面では、剛性の低下によるボディの揺れは感じられるし、操舵感もハッチバックよりは少しおっとりした傾向があるが、それは仕方ないだろう。
メルセデス・ベンツ SLKが登場して以来、メタルハードトップによるクーペカブリオレは世界的に人気を集めている。300万円を切るという戦略的なプライスも魅力だし、この206CCの登場で、日本でもクーペカブリオレのブームにさらに拍車がかかることは間違いなさそうだ。
■プジョー 206CC 主要諸元
●全長×全幅×全高:3810×1675×1380mm
●ホイールベース:2440mm
●車両重量:1210kg
●エンジン形式:直4・DOHC・横置きFF
●排気量:1587cc
●最高出力:80kW(108ps)/5800rpm
●最大トルク:147Nm(15.0kgm)/4000rpm
●トランスミッション:4速AT
●タイヤ:195/55R15
●車両価格(当時):292万9500円