MINI ONE(2002年)
1994年にローバーグループを傘下に収めたBMWは、ローバー ミニ(以下、クラシック ミニと表記)をモチーフにした新しいミニを開発すると発表した。紆余曲折の末、2001年に発表された新型ミニ(以下、MINIと表記)は、今年(編集部註・2002年)の3月2日、「MINIの日」に日本デビューを果たした。
MINIは、クラシック ミニよりふたまわりくらい大きい。全長は約60cm長く、全幅は30cm近く幅広く、全高も5cm以上高い。ホイールベースも40cm以上長い。ディテールも、かなり違う。でも、あまりクルマ好きでなくてもクラシック ミニを知っている人なら、MINIを初めてみた途端に「ミニだ!」と認識するだろう。
ちょっとだけロングルーフの2BOXスタイル、四隅に配されたタイヤ&ホイール、丸型2灯のヘッドランプ、独立したフロントグリル、そして縦型のリアコンビネーションランプ・・・。クラシック ミニのアイデンティティは、このMINIにもしっかりと引き継がれている。
日本仕様のMINIは、エントリーグレードのONE(ワン)と、スポーティグレードのクーパー。外観上は、ONEはホイールがスチールになり、2トーンのルーフが選べないことくらいしか違わないが、エンジンが異なる。いずれもBMWとクライスラーが共同開発した1.6Lが搭載されるが、コンピュータチューンの違いでクーパーは116ps/15.2kgmを発生するのに対し、ONEは90ps/14.2kgmに抑えられている。組み合わされるトランスミッションは、どちらも5速MTとCVTが用意されている。
今回の試乗車は、ONEの5速MT。3ドアらしい少し大きめのドアを開けて乗り込むと、クラシック ミニからの伝統である大型のスピードメーターがダッシュボード中央に収まり、ステアリングの奥にはタコメーターが備わる。丸型基調のインテリアはMINIらしく遊び心にあふれたデザインだが、人間工学に基づいた適切なレイアウトで、伝統のトグル式スイッチも扱いやすい。このあたりは、いかにもBMWのプロデュースらしい。
クーパーのスペックを知っていたから、ONEではパワー不足かなと思って走らせてみると、けっしてそんなことはなかった。最高出力は90psとはいえ車両重量は1トンそこそこだから、5速MTで少し上の回転数まで引っ張って走ると、なかなか楽しい。そして何よりも、クラシック ミニからの伝統であるハンドリングの良さは引き継がれていた。
コーナリングでは、思ったようなラインをトレースしてくれる。クラシック ミニのゴーカート風フィーリングというほどではないが、むしろ乗り心地も良く、運動性能と高いレベルでバランスさせている。
残念ながら今回はクーパーやCVTには試乗できなかったが、機会をあらためて試してみたい。もっとも、MINIにはクーパーのホットバージョンでスーパーチャージャーを装着したクーパーSや、オープンモデルのコンバーチブルも計画されているという。MINIはクラシック ミニ同様に、日本でも人気を集めることは間違いないだろう。
■MINI ONE 主要諸元
●全長×全幅×全高:3625×1690×1415mm
●ホイールベース:2465mm
●車両重量:1040kg
●エンジン形式:直4・SOHC・縦置きFF
●排気量:1598cc
●最高出力:122kW(90ps)/5500rpm
●最大トルク:130Nm(14.3kgm)/3000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤ:175/65R15
●車両価格(当時):195万円