ねじり剛性が160%も向上した新プラットフォームを採用
クロカンファンの間で「ハイラックスサーフは軟弱なクロカンだ」と言われていた時代があった。そう囁いていた人の大半がランドクルーザーやジープなどに乗る生粋のクロカンマニアだった。彼らにとって、大きな四駆をカッコよく乗りたい若者をターゲットにして開発されたサーフの存在を軟弱に感じたのかもしれない。
確かにコンセプトはそうだったかもしれないが、だからとって車両自体は決して軟弱ではなかった。それは「スペシャルティカーの若々しさとタフネスの融合」をキャッチフレーズとして2002年に登場した4代目、N210系(4WDは215)サーフにも継承され、オンロードとオフロードの走行性能には濃い味付けが施されていた。
さて、その濃い味付けのひとつが、先代モデル比でねじり剛性を160%もアップさせた新開発のプラットフォームだ。モノコックボディへ移行する4WD車が多い時代に、フレームを持つオフロード4WDはタフな四駆の代名詞でもあった。N210系サーフは、そのフレームを進化させることで性能アップに対応したのだ。サスペンションはフロントコイル式のダブルウイッシュボーン、リアはコイル式リジッドを採用しているのもかかわらず、その高剛性フレームのおかげで腹下にホーシングを持っているとは思えないほど、しなやかな走りを実現した。
2005年のマイナーチェンジで歴代最大の4L V6エンジンを搭載
先代モデルに採用された左右連携ショックシステムをさらに改良し、対角X連携することでロール剛性、ピッチング制御までをコントロールする相互連携ショックアブソーバーシステム「X-REAS
( Relative Absorber System)」を搭載した。
他にも、前後トルク配分を40対60とする新開発のトルセンLSDやセンターデフを生かしたままローレンジを使用可能とし、そのローレンジ比も悪路走行時を考慮した2.566とするなど、タフな4WDだからこそ与えられた特性が目白押しだ。
さらにあらゆる路面に対応する2WD/4WDの全モード(パートタイム4WD)の切り替えは、これまでシフトノブの横にあった専用レバーから、ダイヤル式スイッチに変更された。
エンジンは、ガソリンが3378cc・V6の5VZ-FE型(185ps・30.0kg-m)と、2693cc・直4の3RZ-FE型(150ps・24.0kg-m)。ディーゼルは、インタークーラーターボを備えた直4・2982ccの1KD-FTV型(170ps・39.5kg-m)の3基で展開。新しい型式ではなかったが、他の部分の進化により必要かつオン・オフでも十分な動力性能を発揮した。
これらに組み合わされるトランスミッションは、燃費を大幅に改善するフレックスロックアップ制御付き4速AT(ETC-E)を採用。ディーゼルエンジンにETC-Eが採用されたのはこのサーフが最初だった。
2004年には2.7Lの3RZ-FE型から同排気量の2TR-FE型(163ps・25.1kg-m)へ、2005年には3.4Lの5VZ-FE型が4L V6の1GR-FE型(276ps・38.8kg-m)へ換装された。さらに4Lエンジンには、AI(人工知能)SHIFT制御を備えた5スーパーECT5速ATを設定した。
なお、このマイナーチェンジで1KD-FTV型を廃止した。1980~1990年代に大人気だったディーゼルエンジンのサーフは、ここで姿を消すこととなった。
先代モデルと比べ、さらに拡大されたインテリア
一方、車内空間は、車内高+30mm、車内長+45mm、車内幅+120mmも拡大するなど、居住性を大幅にアップした。斬新なボディアレンジも加わり、こちらも高剛性を確保しつつ、ロードノイズ、風切り音、エンジン浸過音などを確実に抑え、静粛性と優れた乗り心地と走行安定性を実現。
なお、このモデルからはランドクルーザープラド120系と同様のプラットフォームとエンジンが採用され、兄弟車「プラド」との関係性もより強くなった。しかし、方向性はしっかりと区別され、プラドはランドクルーザーファミリーとした強さとプレミアムSUVとしての資質を強めたのに対し、サーフは「スタイリッシュSUV」をキーワードに若者をターゲットとした4WDをアピールした。だが、同じように進化を遂げたがゆえに、だんだんと違いが伝わりにくくなっていく。
こういった経緯から、2009年にプラドがモデルチェンジを迎えると共に、ハイラックスサーフは国内販売を終了し、すべてを150プラドへ受け渡した。しかし、北米では「フォーランナー」という名称でいまだに販売されており、国内復活のウワサもちらほら…。楽しみな話だ。