1988年に5代目として登場したS13シルビア。流麗なスタイリングで、若者を中心に人気モデルとなった。当時数少なくなっていたFRスポーツで、洗練された走りも魅力だった。今回は当時のライバルであるプレリュードとの違いについて紹介しよう。(新刊 Motor Magazine Mook GTメモリーズ01 「S13シルビア」より)

高速安定性のHICAS-II、小回り性も重視した4WS

シルビア K's(HICAS-II)とプレリュード Si・4WS、2車の4輪操舵比較から見ていこう。シルビアはHICAS-II、舵角応動型4WSはプレリュードに装備される。

前者が油圧で車速と横Gから高速時の安定性のみに焦点を絞っているのに対し、後者は機械式で低速時の小回り性も重視した4WSとしているのが最大の違いだ。具体的にはHICAS-IIが同相のみ、舵角応動型が同相と逆相に動く。

実用上ではホンダの4WSは機械的に割り切ったもので、ホンダらしいポリシーそのものには共感するところが大きい。システム自体も違和感を感じなく、むしろ、機械的に動くぶんだけ人間の感性に素直なものがあった。

しかし、機械式だからこそ持つフリクションがウイークポイントでもある。操舵の際の機械的なほんの僅かな遅れとギクシャク感が気になるのだ。ステアリングギアレシオがクイックな設定のため、高速直進時にちょっとステアリングを握る手首に力が入ると安定が乱されてしまい、逆に神経を使うところがある。また大舵角で逆相になると、最初は戸惑ったこともあるが、慣れるとこの小回り感はなかなか捨てがたく便利である。

画像: 通常の速度域までは、プレリュードは安定感とスピードがマッチしたバランスがある。ロール/ピッチングを抑えたセッティングだ。

通常の速度域までは、プレリュードは安定感とスピードがマッチしたバランスがある。ロール/ピッチングを抑えたセッティングだ。

一方のHICAS-IIは、転舵速度が遅い時はディレイ制御が感覚的にマッチし、高速レーンチェンジではわからない程度に後輪を押さえ込んでくれ、安心感が高い。しかし、操舵速度が速くパッと切った時に、リアを押さえようとする動きが大き過ぎて、それまでの印象は一変する。4輪操舵の先駆者として高速安定性を狙うならばもう少しキメ細かい制御が欲しいところだ。

画像: たんにソフトなだけでなく、ロールしながらも路面を離さず、それでいて操作性は楽しいものをもつ。FRならではの楽しみ方だ。

たんにソフトなだけでなく、ロールしながらも路面を離さず、それでいて操作性は楽しいものをもつ。FRならではの楽しみ方だ。

テールを押さえ込みコントロールするシルビア、独特の感覚のプレリュード

サスペンションはシルビアのたっぷりとストロークを取ったものに対して、プレリュードはオン・ザ・レール感覚をどこまでも追求しているように見える。

サスペンション形式にも現れているが、シルビアの操安性と乗り心地はU12型ブルーバードから始まった、前後のピッチングをうまくバランスさせて前後トータルで自然に収束させるタイプといえよう。感覚的には粘り腰といえば良いだろうか。

これはFRであることも見逃せない。操舵輪と駆動輪を分けられるているから、ドライバーにはFFとは違った楽しみ方ができるのだ。

車両を比較すると通常体験する速度域まではプレリュードの方が安定感とスピードがマッチしたバランスがあるが、シルビアはそれを越えたところから真価を発揮する。

画像: シルビアは2本のアッパーリンク、前方にオフセットしたロアのAアーム、後方を支持するラテラルリンクからなるマルチリンクを採用。FRならではの走りを実現する。

シルビアは2本のアッパーリンク、前方にオフセットしたロアのAアーム、後方を支持するラテラルリンクからなるマルチリンクを採用。FRならではの走りを実現する。

プレリュードはハンドル操舵角に対応して、前輪と同相/逆相に後輪を作動させる舵角応動型4WSを採用。センターシャフトによって、リアステアリング・ギアボックスが操舵される。

エンジンはシルビアK'sは1.8Lターボ、プレリュードは2L NA(自然吸気)。両者とも4バルブDOHCだ。ホンダエンジンの滑らかさは定評のあるところで低中速域のトルクが豊かなのも特徴だ。ATでもマニュアルでも扱いやすく、また楽しめるフィーリングを持つ。つまり、プレリュードの持つ価値観に相応しい動力性能を提供してくれる。

一方、シルビアのCA18DETはより上質になったとはいえ、振動や音の点ではまだ不満が残るのも事実だ。パワーの点では、この種のスペシャリティであることを考えるとお釣りがくるほどで、この点では過給装置を持たないプレリュードに対して圧倒的なアドバンテージがある。

画像: CA18DET型。シリンダヘッドのデザインは日産新世代ツインカムに共通。少し狭めのバルブ挟角、高圧縮比、ラッシュアジャスター付き直動式バルブリフターを持つ。ターボ仕様は、空冷式インタークーラーを左フロントフェンダーに配置し、効果的な冷却効果を発揮している。

CA18DET型。シリンダヘッドのデザインは日産新世代ツインカムに共通。少し狭めのバルブ挟角、高圧縮比、ラッシュアジャスター付き直動式バルブリフターを持つ。ターボ仕様は、空冷式インタークーラーを左フロントフェンダーに配置し、効果的な冷却効果を発揮している。

画像: B20A型DOHC。ホンダ式スイングアーム式により、バルブリフト量の増大をはかり、ロングストロークと相まって、中低速トルクは絶大。ホンダ・エンジンらしい回転系チューンの良さが光る。

B20A型DOHC。ホンダ式スイングアーム式により、バルブリフト量の増大をはかり、ロングストロークと相まって、中低速トルクは絶大。ホンダ・エンジンらしい回転系チューンの良さが光る。

プレリュードはある枠からはみ出せない優等生的なところがあり、その点ではシルビアの不良っぽさが大いに魅力である。個性の差は歴然としていると言えよう。(新刊 Motor Magazine Mook GTメモリーズ01 「S13シルビア」より)

This article is a sponsored article by
''.