サーブ 9-3スポーツセダン(2003年)
サーブは2000年にGMの完全子会社となった。したがって新型9-3は、より一層GM色が強くなっている。1998年に発表された初代9-3は、前身の「900」をビッグマイナーチェンジして名称変更したモデルだった。だが2代目の新型9-3は、フロントマスクこそサーブ伝統の顔つきだが、900から継承されていた3ドア/5ドア ハッチバックのボディスタイルをやめて、普通の4ドアセダンになってしまった。
日本では「スポーツセダン」という車名が与えられた。インポーターである日本ゼネラルモーターズが発表した新型9-3のラインアップは、エントリーグレードの「リニア 1.8t」、中核グレードの「アーク 2.0t」、そしてスポーティグレードの「エアロ 2.0t」が設定されるが、エアロ 2.0tのみ発売が遅れるため、今回はアーク 2.0tをメインに試乗した。
プラットフォームは、同じGMグループのオペル ベクトラと共有化された。4ドアセダンとなり、全長こそ従来型と同じだがホイールベースは70mm延長され、全幅は50mm広く全高は10mm低められた。いわゆるDセグメント セダンとしては少し大きいほうに属するだろう。航空機メーカーをルーツに持つサーブらしく、Cd値は0.28を実現するなど空気抵抗も少ないスタイリングだが、フロントマスク以外は個性に欠けるのが惜しまれる。
ドライバーオリエンテッドなインパネまわりは踏襲された。イグニッションのキーホールはセンターコンソールに配したり、夜間はスピードメーター以外の照明をオフにできるナイトパネルなど、サーブのアイデンティティも継承されている。
エンジンを縦置きから横置きに変更してホイールベースが延長されたことで、室内の居住性は向上した。とくにリアシートはフットスペースやショルダールームがかなり拡大されている。
日本仕様のエンジンは、すべて2Lの直4 DOHCターボだが、グレードによってチューンが異なる。アーク 2.0tでは最高出力は175ps、最大トルクは27.0kgmを発生。トランスミッションはマニュアルモード付きの5速ATと組み合わされる。
ターボ付きだが、2000rpm以下でも最大トルクの90%を発生させるというエンジンの特性で、ターボを意識しない走りっぷりを見せる。スロットルレスポンスも良い。パワー的には十分以上ともいえ、気がつくとけっこうな速度に達していたりする。175ps仕様でこれなのだから、エアロ 2.0tの210psは相当速いに違いない。ちなみに、150psのリニア 1.8tにも少し乗ってみたが、これでもパワー的に不満はなかった。
乗り心地はけっこう硬めで、ドイツ車的な印象を受ける。そう、黙って乗せられたら(とくにリアシートに)、「ドイツのセダン?」と思う人が多いかもしれない。サーブがプレミアムセダンを目指して新型9-3を作り上げた結果だと思うのだが、スタイルを含めてサーブらしさが薄められてしまった。
サーブに乗っている人は、ドイツのセダンにはない「サムシング」を求めて手に入れた人が多いはず。それを考えると、サーブの行く末が少し心配になってしまう。(編集部註:2020年現在、サーブ オートモービルはNEVS社に買収され、サーブ ブランドは廃止されています)
■サーブ 9-3スポーツセダン アーク2.0t 主要諸元
●全長×全幅×全高:4635×1760×1465mm
●ホイールベース:2675mm
●車両重量:1480kg
●エンジン形式:直4・DOHCターボ・横置きFF
●排気量:1998cc
●最高出力:1295kW(175ps)/5200rpm
●最大トルク:265Nm(27.0kgm)/2200rpm
●トランスミッション:5速AT(マニュアルモード付き)
●タイヤ:215/55R16
●車両価格(当時):415万円