3.8Lに排気量アップされたエンジンは申し分ないパワーを発揮
トランスミッションは先代の4速ATから6速ATに進化し、街中でもスムーズな走りを味わわせてくれた。発進時に、ちょっといじわるして床までアクセルペダルを踏み込んでみたが、そうした場面ではホイールスピンを起こすほど鋭い加速力をみせてくれる。シフトチェンジもスムーズかつ静かだ。これも6速化のメリットなのだろう。100km/h走行時でも回転数は2000rpmに満たない。
シフトは先代のコラムタイプからフロアシフトに変更された。1列目から2列目へ移動することは考えていないようだ。またセレクターの位置も低く使いにくい。シフトチェンジをマニュアル操作できるオートスティック機構も用意されているが、これでは積極的に使おうという気にならない。これはもったいない。
NVHは向上している。日本車のミニバンは室内の静かさには定評があるが、グランドボイジャーもそれに劣らない静粛性能を手に入れた。これは空力性能の改善やボディ剛性をアップさせたこと、さらにリアサスペンションがリーフリジッドからコイルスプリング式のアクスルビームに変更されたことなどが大きく貢献しているようだ。このリアサスペンションの変更は、リアの居住性などを犠牲にせずに乗り心地の改善にも繋がっている。
排気量は先代の3.3Lから3.8Lにアップされた。それにともない最高出力も19ps、最大トルクは27Nmアップして、走りに不満を感じることは少なくなったが、10・15モード燃費では先代の7.1km/Lから6.8km/Lにダウンした。これはCO2排出量に直すと14g/km多くなる。「パフォーマンスと引き替えに燃費性能はダウンしてしまいました」ということなのだろうが、時代に逆行していることは否めない。また燃料もレギュラー仕様からプレミアム仕様に変更された。できるならばレギュラー仕様のまま燃費性能もぜひ向上させてほしいものだ。
シートアレンジで大きな注目ポイントは、3列目シートが電動格納式となり、カーゴ部に用意されたボタンひとつで4通りのシートアレンジができるようになったこと。とくに後ろ向きに倒したテールゲートポジションは活躍の場は多いだろう。
さらに2、3列目のパッセンジャーの状態を確認できるリアビューカンバセーションミラーやサイドビューカメラ、2列目のパワーウインドウ、電動クオーターガラスなどに加え、HDDナビゲーションシステム(アルパイン製)モニター画面が特等席に用意されたことなど、国産ミニバンの贅沢装備に慣れた日本のユーザーも満足できる内容だ。
日本国内至る所でこれだけミニバンが幅をきかせていると、やはり差別化、つまり人とは違ったミニバンに乗りたくなるという気も起きるというもの。国産ミニバンに勝るとも劣らないアイテムを揃えた新しいグランドボイジャーは、そうした志向の人にとって選択肢のひとつになることだろう。(文:千葉知充/Motor Magazine 2008年7月号より)
クライスラー グランドボイジャー リミテッド 主要諸元
●全長×全幅×全高:5145×2005×1755mm
●ホイールベース:3080mm
●車両重量:2090kg
●エンジン:V6OHV
●排気量:3782cc
●最高出力:193ps/5200rpm
●最大トルク:305Nm/4000rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:546万円(2008年)
クライスラー グランドボイジャー ツーリング 主要諸元
●全長×全幅×全高:5145×2005×1755mm
●ホイールベース:3080mm
●車両重量:2030kg
●エンジン:V6OHV
●排気量:3782cc
●最高出力:193ps/5200rpm
●最大トルク:305Nm/4000rpm
●駆動方式:FF
●トランスミッション:6速AT
●車両価格:460万9500円(2008年)