「レースは技術の実験室」という信念のもとアウディはモータースポーツに挑戦し続けている。そこから市販車へフィードバックされたのがアウディスポーツのRやRSモデルである。今回はそんなアウディのスポーツモデルたちを富士スピードウェイ本コースで走らせる機会を得た。(Motor Magazine2021年2月号より)

アウディスポーツのDNAを大いに感じた

R8やRSモデルなどハイパワーを誇るアウディスポーツモデルは、公道ではそのパフォーマンスのほんのわずかしか引き出すことができない。その高性能を開放することができるのは、やはりサーキットのようなクローズドコースである。アウディは当然、それは理解していて、新型モデルが投入されると顧客や我々メディアにサーキットでRSモデルの試乗機会を与えてくれるのである。

今回も顧客向け「アウディエクスペリエンスディ」の翌日、「アウディスポーツ サーキット テストドライブ」として富士スピードウェイでの走行機会があった。

画像: 富士スピードウェイ本コース試乗に用意されたアウディスポーツは5モデルにeトロンスポーツバックも加わった。

富士スピードウェイ本コース試乗に用意されたアウディスポーツは5モデルにeトロンスポーツバックも加わった。

走行用に揃えられたのは、R8、RS5クーペ、TT RS、RS3セダン、RS Q3である。さらに特別にeトロン55スポーツバッククワトロ、そして同乗走行用に、GT300参戦マシンのR8やTCR参戦マシンのRS3にも乗る機会が与えられた。

画像: アウディスポーツ車はどのモデルもサーキット走行から普段使いまでオールマイティにこなせるのが特徴である。

アウディスポーツ車はどのモデルもサーキット走行から普段使いまでオールマイティにこなせるのが特徴である。

画像: RS5クーペに搭載されるのは、DEC型2.9L V6ツインターボエンジン。最高出力450ps、最大トルク600Nmを発生する。

RS5クーペに搭載されるのは、DEC型2.9L V6ツインターボエンジン。最高出力450ps、最大トルク600Nmを発生する。

GT300マシンへの同乗はとても貴重な体験だった。ドライバーはヒトツヤマレーシングの川端選手。特別に設置した助手席にシートベルトで固定されると、「縁石も使って攻めてもいいですか」と聞かれ、つい「はい」と答えてしまった。もちろん走行中は会話をする余裕もないほど攻めてくれたが、正直に告白すると、昼食の後でなくてよかったと思った。

画像: アウディチームヒトツヤマのマシン。前を走るRS3はTCR、その後のR8はGT300クラス参戦マシンである。

アウディチームヒトツヤマのマシン。前を走るRS3はTCR、その後のR8はGT300クラス参戦マシンである。

画像: ヒトツヤマレーシングチームから川端選手、近藤選手、篠原選手がR8 GT300マシン&RS3 TCRマシンの同乗走行ドライバーとして参加。試乗前に「縁石を使って攻めてもいいですか」と聞かれ、つい「はい」と言ってしまった。

ヒトツヤマレーシングチームから川端選手、近藤選手、篠原選手がR8 GT300マシン&RS3 TCRマシンの同乗走行ドライバーとして参加。試乗前に「縁石を使って攻めてもいいですか」と聞かれ、つい「はい」と言ってしまった。

鍛えられたサーキットこそRSモデルの独壇場である

画像: 特別にeトロンスポーツバックのサーキット試乗も許された。圧倒的な加速力とBEVとは思えない最高速がテストできた。

特別にeトロンスポーツバックのサーキット試乗も許された。圧倒的な加速力とBEVとは思えない最高速がテストできた。

ピュアEVのeトロンの試乗では、その圧倒的な加速力を味わった。実にBEVらしいものだが、サーキットも走りやすいということも新発見だ。独特のeトロンサウンドを奏でて走る経験は、なんとも不思議だった。さすがにR8のようにコーナリング最高! というわけではなかったがそれでも十分に高い実力を実感することができた。

どのRSモデルに試乗してもクワトロの安定感、ハイパフォーマンスを味わえた。開発のために鍛えられたサーキットがやはりとても似合うなと改めで感じた。

画像: 文句なしにR8でのサーキット走行は楽しいひとときだった。V10自然吸気エンジンの気持良さ、ストレートでは最高速度は280km/h以上に達し、そこからブレーキングして第一コーナーへ進入……すべてがエキサイティングだ。

文句なしにR8でのサーキット走行は楽しいひとときだった。V10自然吸気エンジンの気持良さ、ストレートでは最高速度は280km/h以上に達し、そこからブレーキングして第一コーナーへ進入……すべてがエキサイティングだ。

中でも今回の試乗車では、R8の印象が強く残った。5.2L V10自然吸気エンジンの持てる性能を解き放つ気持ち良さは格別。至福とも言えるひとときだった。背後から聞こえてくるエキゾーストノートも実に痛快だ。一番長いストレートでは、アクセルペダルを床まで踏み込み全開、そこから減速して1コーナーへ。相当な高速域であり、かなりエキサイティングな経験だったが、R8にとっては、それほど難しいことではなかったようだ。ピットに戻ったら、すぐに次のドライバーを乗せてコースインして行った。

やはりR8やRSモデルでサーキットを走るのがとても楽しい。まさにこれこそがアウディスポーツのDNAなのだろう。(文:千葉知充/写真:井上雅行)

画像: RS3セダン(スポーツバックも同様)が搭載するのは2.5L直5ターボエンジン。400ps/480Nmを発生。

RS3セダン(スポーツバックも同様)が搭載するのは2.5L直5ターボエンジン。400ps/480Nmを発生。

試乗モデル主要諸元
■RS Q3=エンジン型式 DNW型、エンジン 2.5L直5ターボ、最高出力400ps、最大トルク 480Nm、全長×全幅×全高 4505×1855×1605mm、価格 8,380,000円
■RS3セダン=エンジン型式 DAZ型、エンジン 2.5L直5ターボ、最高出力400ps、最大トルク 480Nm、全長×全幅×全高 4480×1800×1380mm、価格 8,690,000円
■RS5クーペ=エンジン型式 DEC型、エンジン 2.9L V6ツインターボ、最高出力450ps、最大トルク 600Nm、全長×全幅×全高 4715×1860×1365mm、価格 13,400,000円
■TT RS=エンジン型式 DAZ型、エンジン 2.5L直5ターボ、最高出力400ps、最大トルク 480Nm、全長×全幅×全高4200×1830×1370mm、価格 10,260,000円
■R8クーペV10パフォーマンス5.2FSIクワトロ Sトロニック=エンジン型式DMW型、エンジン 5.2L V10、最高出力620ps、最大トルク 580NNm、全長×全幅×全高 4430×1940×1240mm、価格 30,310,000円
■eトロン スポーツバック 55 クワトロ=モーター型式EAS-EAW型、定格出力 165kW(224ps)、最大出力 300kW(408ps)、最大トルク 664Nm、一充電走行距離(WLTCモード) 405km、交流電力量消費率(WLTCモード) 245Wh/km、総電圧 397V、総電力量 95kWh、全長×全幅×全高 4900×1935×1615mm、価格 13,270,000円

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