イタリア発のエクストリーム ハイパーカーが、日本に初上陸
2019年8月、イタリアでワールドプレミアされたPagani Automobili(パガーニ アウトモビリ)の新作「ウアイラ ロードスターBC」の実車が、初めて日本の街角に姿を現した。一部メディア限定で、世界に1台しかないPR用車両の撮影が許されることになったのだ。
パガーニ アウトモビリは、1993年にイタリア モデナで創立された。創業者のオラチオ・パガーニはデザイナーであると同時にエンジニアリングについても造詣が深く、時に「ハイパーカー界のレオナルド・ダビンチ」とも称されるという。
そんな異才が生み出したマシンだけに、ダイナミックかつ野心的なインパクトをアピールしながら同時に、きわめてロジカルで洗練された空力性能をまとっている。実車を丹念に見ていくと、きわめてエレガントでありながらスマート。大胆不敵でありながら繊細極まりない。なんとも不思議な「パガーニワールド」にいつの間にか魅了されてしまった。
中でもとくに目を見張ったのが、アクティブに空力特性を操るフラップだ。フロントはボンネット絵前端、リアはテールランプの隣に左右2枚ずつの可動式ウイングが配されており、これがクルマの挙動に合わせて自動的に開閉する。リアのフラップはエンジンルーム内の温度管理も担いながら、たとえばフルブレーキング時には全開となって、まるで飛行機のエアブレーキのような効果を発揮するという。実際に、サーキットを走っているところを見てみたくなる個性的なシステムだ。
サーキット専用にあらず。ロードカーとしてのプライドも高い。
インテリアはエクステリア以上に華麗なデザインワークに彩られている。PR車両ということでカーボン、レザーといった上質なオプション素材がふんだんに配されていたためもあるのだろうが、スポーティなバイザー風のメーターまわりといい、ジェット機の吸気口を思わせるエアダクトとといい、エンターテインメントな味付けがふんだん。ドライバーの眼を、とことん楽しませてくれる。
アグレッシブなデザインワークについ目を奪われがちだが、同時にどこか懐かしい雰囲気を醸し出しているところが興味深い。ドグミッションふうのシフトレバーなど、20年代から60年代ごろのコンペティションマシンやグランツーリスモのテイストをモチーフに取り込んでいるという。
凝ったフォルムが与えられたスポーツシートは、まるでモダンファニチャーのようだ。その背もたれ後ろのスペースには、バックスキン加工のジャケットカバーや小さなバッグを収納。そうした「アクセサリー」のひとつひとつが、古き佳き時代のツアラー的な味わいまで醸し出している。「現在、過去、未来の姿を融合させる官能的な経験」というパガーニのこだわりは、けっして大言壮語ではない。
エクステリアだけを見れば、やはりサーキットユースのイメージが強く感じられるだろう。けれどインテリアからは、移動する時間を楽しむための「おもてなし」へのこだわりが、はっきりと伝わってくるように思えた。