日本の公道でD3 S本来の性能は解き放てない
世界的にディーゼルエンジンが減少している中、今回試乗したDS 3やD5 Sは貴重な存在と言えるだろう。長距離を走るユーザーはディーゼルを好む人も多く、アルピナはユーザーのそうしたライフスタイルに応えているのだろう。ラインアップを見ると現在10モデル中6モデルがディーゼルエンジンモデルである。今後もこうした状況は続くと見られる。
走り出してすぐにアルピナのディーゼルエンジンが実に気持ち良く回ることを実感できた。レスポンスも素晴らしくディーゼルのネガがまったく感じられない。ひとつひとつのパーツの精度の高さが感じられ、まるで精密な機械式時計のような感性を持つ。
搭載するのは3L直6ディーゼルツインターボエンジン。最高出力355ps、最大トルクは、なんと730Nmもある。ディーゼルエンジンで気になる高回転域での頭打ち感が少なくアクセルペダルを踏み増したときのタイムラグも感じることなく即座に反応する。
アルピナ初採用となる48Vマイルドハイブリッド技術も採用され、効率がさらに向上している。制動時のエネルギーは、48Vバッテリーに蓄えられ、ベルト駆動式のスタータージェネレーターを介して駆動力として再利用でき、最大8kW(11ps)の回生電力を瞬時に活用できるという。
ワインディングロードでは、アルピナの本領のほんの一部を解き放つだけでいい。本来持つパフォーマンスをすべて使い切ることは日本の公道では無理だ。サーキットに持ち込めば可能だろう。駆動方式はxDriveをベースにアルピナ流に開発された4WDとなる。スポーティな走りを実現するため後輪重視の設定だ。
通常は、ドライビングモードをコンフォートにするだけでアルピナらしい走りが味わえる。ほとんどの場面はこれでいいが、スポーツを選択するとさらに足は引き締まる。ワインディングロードでぜひ試してほしいモードだ。ちなみにコンフォートプラスモードは、アルピナ独自のドライビングモードとなる。
ベースとなる3シリーズは、路面が粗くなるとそれがダイレクトに乗員に伝わるが、D3 Sはそうした部分が薄まりどのような場面でもしっとりとした乗り心地を伝えてくる。サスペンションがいい仕事をしてくれていることがよくわかる。クルマとの一体感も濃密で饒舌なD3 Sとの生活を夢想しながら楽しいひとときが過ごせた試乗だった。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:井上雅行)
BMWアルピナ D3 S ツーリング 主要諸元
●全長×全幅×全高:4720×1825×1445mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1890kg
●エンジン:直6 DOHCディーゼルターボ
●総排気量:2992cc
●最高出力:261kW(355ps)/4000-4200rpm
●最大トルク:730Nm(74.4kgm)/1750-2750rpm
●トランスミッション:8速AT(スウィッチトロニック)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:軽油・59L
●WLTPモード燃費:13.2km/L
●タイヤサイズ:前255/35R19、後265/35R19
●車両価格(税込):1170万円