WRCで頂点に立ったセリカGT-FOURが装着していたホイールが日本で大人気に!
初めてOZホイールに出会ったのは1980年代半ば、フィアット・パンダの輸入販売元のJAXのショールームだった。そこにパンダ用のオプションとして展示されていた。ちょっとオシャレなディッシュホイールでセンターに「(Z)」とあった。訊けば「オーゼット」とのこと。とくに気にも留めず「ふーん、オーゼットねえ」で終わっていた。
そんなOZのネーミングを呼び覚ましてくれたのが、1991年に日本に登場した「ラリーレーシング」だった。1990年にトヨタ セリカGT-FOURを駆るC.サインツがWRCでチャンピオンに輝く。そのセリカに装着されていたのがOZだった。ホワイトのディスク面に刻まれたレッドの「O.Z. Racing」のロゴが印象的なホイールで、そのデザインのまま市販されたのだ。
大きなディスクから短い20本のスポークがリムに繋がる1ピースのディッシュ風デザインは新鮮だった。元々はラリーのグラベルステージでブレーキを守るべくデザインされたのだが、ディスク面のロゴが引き立つことから一躍注目され、日本でも類似品が出現したほどだ。1994年あたりからロゴが今に繋がる「OZ RACING」へ変更されている。1994年にはスタイルセンターのデザインラボを設立しているので、そのためと思われる。
とは言え当時のOZの定番は「フッツーラ」に代表されるようなオーソドックスな5本スポークであり、イタリアンな丸穴をアレンジした「モデナ」であった。ピアスボルトを誇示した2ピースや3ピースが高級感を醸し出していたのである。20年ほど前に一世を風靡した5本スポークの「オペラ」もこの延長線上にあったと言っていい。
21世紀になるとレース&ラリーで得たノウハウが続々と市販品に導入されるようになる。その代表格が2004年に登場したスーパーツーリズモだ。キリッとした佇まいの16本スポークは、WRCでのシトロエン クサラの足下を支えていたデザインそのもの。強度を保持するセンターディスクを持ちながらリムエンドまでしっかり伸ばされたスポークが高いスポーツ性をアピール。こちらにWRC、そしてサーキット向けにGTと言うサブネームを付けたのも憎い演出だった。スーパーツーリズモは今やOZの定番となっている。
個人的にインパクトを受けたのは、2006年に登場した「スーパーレッジェーラ」である。ダブル6本スポークのすっきりしたデザインで、そのスポークの細さが際立っていた。「OZ=細いスポーク」と言うデザインイメージは、このスーパーレッジェーラから始まった。レッジェーラとは軽量化のことでスーパーカーにもよく用いられるイタリア語だけに馴染みがあった。後にさらなる軽量化を果たしたモデル「ウルトラレッジェーラ」が登場。スーパーの上はウルトラしかないのだ。
OZは毎年のように新製品を投入する。その中には必ず「おっ、その手があったか」と驚かされる。デザインは言うに及ばず、カラーリングやロゴの配置、センター部のアレンジなど、いつも何らかの革新を盛り込んでくる。ホイールという円には常に「機能」+「美」が求められる。大径になるほどに技術的なハードルは高まることになる。創業50年のOZ、そのホイール作りへの挑戦はまだまだ続く。