プレミアムコンパクトSUVに相応しい装備とライド感覚
日本仕様に設定されるのは当面GLK300 4マティックのみ。エンジンはC300アバンギャルドS同様に3LのV6だが、そのパワーは必要にして十分。「もう少し力があれば」といった不満が出るような場面は最後までなかった。ただしハンドル位置は左ハンドル仕様のみ。このあたりは、X3やティグアンが右ハンドル仕様となることから不満が残る。
GLKに採用される4マティックは、トルクを前輪45%、後輪55%の比率で配分するが、前輪に駆動を伝えるためのプロペラシャフトがトランスミッションの右側を通っているので、右ハンドルにするとドライバーの足下スペースを十分に確保することが難しいのだ。視線が高いSUVではあっても日本では左ハンドルは不便、いい解決策はないものだろうか。
安全性におけるトピックスとして、アダプティブブレーキライトとインテリジェントライトシステムが採用されていることが、メルセデスの安全性が新世代に進化していることを物語る。
アダプティブブレーキライトは、50km/h以上の速度で走行中にドライバーが急ブレーキを踏むと判断すると、後続のドライバーに注意を促すようブレーキランプが自動的に激しく点滅。さらに70km/h以上ではブレーキランプが激しく点滅して停止した後、ハザードランプが自動的に点滅する。
インテリジェントライトシステムは、「カントリーモード」「ハイウェイモード」「フォグランプ強化機能」「アダプティブブレーキライトシステム」「コーナリングライト」といった5つの機能を備え、さまざまな天候や走行状況でも視界を確保し安全性を向上させるようになっている。
乗り心地はSUVらしくない。いや、「SUVの枠を超えた上質なライド感」と言った方が適切かもしれない。メルセデス・ベンツのSUVはどれもそうしたライド感を持っているが、このGLKのそれはとても新鮮なもの。車高の高さによるデメリットはまったく感じられず、「シートポジションが高く視界の広がったCクラス」といった印象。さらに、NVHも抑えられていてプレミアムと謳うに相応しい仕上がりだ。
また、コーナリング時は、姿勢の変化がわかりやすく、安心してアクセルペダルを踏み込むことができる。路面が荒れた場面でもその印象に変わることはなく、路面からの入力はたしかに感じられるが、それをボディがゆったりと受け止めているといった印象。ハンドルに伝わってくるインフォメーションもこうしたSUVとしては多めで、悪いイメージはない。林道や砂利道にも踏み入れてみたが、そうした未舗装路では腰から下がしっかりと働いていることが伝わってくる。
このGLK、小回りは効くし視界も良好。フットワークだって軽快で、いままでに乗ったどのメルセデス・ベンツのSUVよりもそうした印象が強く残った。世界的にダウンサイジングの傾向が強まってきた今、まさに、GLKが担っている役割は、こうしたセグメントにもメルセデスらしさを投入することにあったのだと思う。(文:Motor Magazine編集部 千葉知充/写真:島村栄二)
メルセデス・ベンツ GLK300 4マティック主要諸元
●全長×全幅×全高:4530×1840×1685mm
●ホイールベース:2755mm
●車両重量:1860kg
●エンジン:V6DOHC
●排気量:2996cc
●最高出力:170kW(231ps)/6000rpm
●最大トルク:300Nm/2500-5000rpm
●トランスミッション:7速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・66L
●10・15モード燃費:9.0km/L
●タイヤサイズ:前235/50R19、後255/45R19
●車両価格(税込):675万円(2008年当時)