2009年5月、復活なったシロッコ(3代目)が日本に上陸することになるが、Motor Magazine誌ではフォルクスワーゲン特集の中でこの「上陸間近のシロッコ」に注目。明らかになってきた導入計画や当時のフォルクスワーゲンの狙いをふまえて、あらためてドイツ・ウォルフスブルグでの試乗の模様をレポートしている。ここではその模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2009年3月号より)

抜群のコーナリング感覚、GTIとはまた違う爽快さ

動力性能は、慣れ親しんだゴルフGTIに近い。野太く乾いたクォーンというエキゾースト音はやや大きめで、ここでもスポーツ気分が盛り上がる。

なおこのエンジンは、ゴルフV GTIのものより世代的には新しく、最高出力こそ同じ200psだが、280Nmの最大トルクをより低い1700rpmから発生させている。DSGの制御がより洗練されたこともあって、アクセルに力を込めたときの反応が良く、ターボにありがちなトルク変動はあまり感じられなかった。つまり、より扱いやすく、かつパワフルなのだ。

アウトバーンでは、その性能をフルに引き出して走らせることができたが、180km/hあたりまではDSGのリズミカルなアップシフトと共に、すぐに到達してしまう。そこから先は、空気の壁を感じる領域で速度の伸びは鈍るが、233km/hという最高速度に偽りはないだろう。

それでいてCO2排出量は179g/kmと、動力性能から考えるとかなり優秀な値となっている。ちなみにこれはゴルフV GTIの値よりも低い。

その秘密は軽量化にあるようだ。シロッコの車重は1318kgで、これはゴルフGTIよりも70kg以上軽い。リアサスペンションにアルミ製ロアアームを採用するなど、シェイプアップに努めているのも大きな特長なのだ。

少し気になったのは、バネ上重量が減ったせいか、乗り心地がやや硬めに感じられること。大きな入力はしっかり受け止めてダンピングも良く、ドシッといなしてくれるが、細かいコツコツとした突き上げが、振動となって伝わってくる。

オプションでDCCを装着してコンフォートモードを選択すれば、その硬さは解消されるのかもしれない。このあたりは、日本導入モデルの仕様設定も含めて楽しみな部分である。

それと、加速中は荷重が後方に移動するため、路面が滑りやすい状態だと、フロントタイヤがパワーを伝え切れず、若干暴れる傾向にある。もちろんそこはESPが即座に介入するが、軽いボディにトルクフルなエンジンを積んでいるため、時としてじゃじゃ馬的な面も見せる。それもまたスポーツクーペらしい魅力とは言えるが。

この2点を除けば、シロッコは魅力に溢れたクルマと言って良いだろう。

画像: 抜群のコーナリング感覚、GTIとはまた違う爽快さ

低重心/ワイドトレッドが生み出すフットワークは抜群に爽快である。しっかりとした手応えのステアリングを切り込むと、過敏過ぎずいい感じでヨーモーメントが起こる。コーナリング速度を上げていくと、FFゆえにどうしてもアンダー傾向は強まるが、そこからアクセルを離しても急な姿勢変化は起きず、気持ちよくノーズが入る。予想通りに動くから、安心感が高い。

安心感は高速走行でも感じられた。180km/hくらいの高速域でも、ビタッと路面に吸い付くようなのだ。現行ゴルフV GTIの高速スタビリティも乗る度に感心させられるが、シロッコはそのさらに上を行く。ともかく高速移動がラクで、コーナリングも無類に気持ちいいクルマである。

日本はクーペ市場の冷え込みがとくに激しく、国産モデルで価格面も手頃なモデルというと、もう数えるほどしか残っていない。しかもスポーツファンには後輪駆動に憧れる傾向が強いようで、FFのスポーツクーペというのはもはや皆無に等しい。

しかし、シロッコに乗ると「これはこれで、ありだなあ」としみじみ思う。1.4TSIが手頃な価格で上陸したら、それなりに市場を活性化してくれるのではないか? いや、そう望まずにはいられない期待のモデルである。(文:石川芳雄/写真:永元秀和)

フォルクスワーゲン シロッコ 2.0TSI 主要諸元

●全長×全幅×全高:4256×1810×1404mm
●ホイールベース:2578mm
●車両重量:1318kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:147kW(200ps)/5100rpm
●最大トルク:280Nm/1700-5000rpm
●トランスミッション:6速DCT
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:プレミアム・55L
●欧州総合燃費:13.2km/L
●タイヤサイズ:225/45R17
●最高速度:233km/h
●0→100km/h加速:7.1秒
※欧州仕様

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