WRカーが次々に脱落する波乱、ヒュンダイにまたも悲劇
地中海に浮かぶサルディーニャ島のグラベル(未舗装路)が舞台の第5戦は、前戦ポルトガル以上の荒れた展開となり、トップカテゴリーのWRカー勢は参戦10台中6台が途中リタイアする異例の展開となった。
最もダメージが大きったのが、有利な出走順を活かしてラリー初日の金曜日に1-2体制を築いていたヒュンダイ。
土曜午前ステージでそれまでに圧倒的なスピードで首位を独走していたオィット・タナックが、高速コーナリング中に前走車が掻き出した巨大な岩を避けきれずにヒット、左リアサスペンションを壊してストップしてしまう。タナックにとってはポルトガルに続く首位からの脱落となった。
さらにこの日の午後にはエバンスと2位を争っていたダニ・ソルドも、わずかなコースオフでタイヤを路肩に落とした途端に、草地に隠れていた岩にタイヤをとられて転倒してしまった。
両車ともにスーパーラリー(再出走)システムで日曜日には復活してマニュファクチャラーズ選手権で3〜4位のポイントは確保したものの、トヨタとの差を縮めることが至上命題だった今回のヒュンダイにとっては、痛すぎるアクシデントとなった。
サバイバルを生き残ったトヨタ、両選手権で大量リードを築く
ヒュンダイのアクシデントで大利を得たのがトヨタだった。
金曜日にタナックに唯一対抗していたカッレ・ロバンペラがサスペンションを壊して脱落したものの、スタート順を考えると「ヒュンダイと戦うのは厳しい」と思われていたオジェとエバンスが望外の1-2フィニッシュを飾った。
特に金曜日に最も不利な先頭スタートだったオジェは、神業的ドライビングでタイムロスを最小限に留めて3番手でこの日をフィニッシュすると、土曜日朝にはソルドを交わして2番手に浮上。その直後にタナックが脱落して転がり込んだ首位の座を確実に守りきった。
「(スタート順を考えれば)信じられない勝利。事前テストでクルマが仕上がって、金曜日に自信を持って走れたのが勝因」と喜んだオジェは、これで今季5戦3勝。ドライバーズ選手権ランキングで2番手エバンスとの差を11点に、3番手を維持したヌーヴィルとの差を29点とさらに広げることになった。
コンストラクターズ選手権では、今季3度目の1-2フィニッシュとなったトヨタが、ヒュンダイとの差を49点に広げている。また日本の勝田貴元はサバイバル戦を見事に生き残り、前戦に続く自己最上位タイの4位でフィニッシュしている。
次戦第6戦サファリ・ラリー・ケニアは、6月23〜27日にケニアの首都ナイロビ近郊のナイバシャを起点に開催される。伝統のサファリ・ラリーがWRCとして最後に開催されたのは2002年で、19年ぶりにWRCのカレンダーに復帰する。ステージはグラベル(未舗装路)で、高速区間と路面が荒れた区間の両方があり、スピードだけでなく耐久性が求められる。
2021年 WRC第5戦ラリー・イタリア・サルディーニャ 結果
1位 S.オジェ(トヨタ ヤリス WRC)3h19m26.4s
2位 E.エバンス(トヨタ ヤリス WRC)+46.0s
3位 T.ヌーヴィル(ヒュンダイ i20クーペ WRC)+1m05.2s
4位 勝田貴元(トヨタ ヤリス WRC)+6m11.2s
5位 J.フッツネン(ヒュンダイ i20 R5)+9m31.7s
6位 M.オストベルグ(シトロエン C3 ラリー2)+9m39.2s
7位 Y.ロッセル(シトロエン C3 ラリー2) +10m37.7s
8位 P.ロペス(シュコダ ファビア ラリー2エボ)+11m03.7s
9位 J.ソラン(シトロエン C3 ラリー2)+11m26.3s
10位 M.ブラシア(シュコダ ファビア ラリー2エボ)+11m34.6s
2021年 WRC ドライバーズランキング(第5戦終了時)
1位 S.オジェ(トヨタ) 106
2位 E.エバンス(トヨタ ) 95
3位 T.ヌーヴィル(ヒュンダイ)77
4位 O.タナック(ヒュンダイ) 49
5位 勝田貴元(トヨタ) 48
6位 K.ロバンペラ(トヨタ) 44
2021年 WRC コンストラクターズランキング(第5戦終了時)
1位 トヨタ 231
2位 ヒュンダイ182
3位 Mスポーツ フォード 82