「温故知新」の逆というわけではないが、最新のプジョー車に乗りながら、古(いにしえ)のプジョー車に思いを馳せてみたい。今回は、プジョー 508SWに乗りながら、フランスの公用車にもなった大型高級車たち、を振りかえってみたい。(タイトル写真は、上が現行型の508SW、下が1975年に発表された604)

現在のフランス大統領専用車はSUVの5008!

セダンの場合、ルーフ形状のために後席ヘッドルームが少し犠牲になっている。そのことで、じつは前々から気になっていたことがある。プジョーの上級セダンは昔からエリゼ宮(大統領官邸)をはじめ、公用車に使われてきたが、そういったニーズにどう対応するのか、ということだ。

運転好きのオーナードライバーならばそれでも良いとしても、お偉い方々を後席で運ぶことをメインとする公用車や社用車では、508セダンの後席居住性能はちょっと心許ない気もする。その点、508SWの長所は後席の居住性とラゲッジスペースの広さだ。ひょっとして、こうした用途に使われるのは508SWの方ではないだろうかと、ちょっと思ったのだ。

しかし現実には違った。現在マクロン大統領の移動用車両として採用されているのはSUVの5008だ。近年、アメリカ大統領の警護用車両にSUVがよく使われており、さらに大統領リムジンでさえ中身はSUVをベースにしていることもあるらしいから、フランス大統領だって5008のほうがクールなのだろう。

画像: マクロン大統領を乗せてエリゼ宮から出動する5008の大統領専用車。

マクロン大統領を乗せてエリゼ宮から出動する5008の大統領専用車。

ちなみに、エリゼ宮中庭に並んだ5008の大統領専用車と508セダンの写真が、プジョーの公式ツイッターのトップ写真に使われていたこともあった。これに関連するフランスの記事で、大統領の車両として508セダンが採用されることはないと断言されているが、公用車としては今後も採用される可能性はあるとのことだ。

過去を振り返ってプジョーの大統領専用車として知られているのは、ジスカール・デスタン大統領(在任期間:1974〜1981年)の604リムジンであるが、実はこのほかに大統領専用車として使われた例は多くない。

プジョーと同じくフランスのブランドで、第1次世界大戦で戦車や航空機を生産して勝利に貢献したルノーは、第2次世界大戦前まで大統領専用車に多く使われた。また、シトロエンは第2次世界大戦でレジスタンス寄りの立場をとり、レジスタンスの英雄だったシャルル・ド・ゴール大統領(在任期間:1959〜1969年)に贔屓にされ、戦後に多く採用されてきた。

では、なぜプジョーモデルの採用例が少ないのか、これは大型高級車をあまりつくってこなかったからだ。

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