あらゆるハンドリング状況に対応する足回り
「Mr.ル・マン」の異名を持つ、寺田陽次郎氏のブランドというイメージが強い「オートエクゼ」はマツダ車の各種チューニングパーツを製造しているメーカーである。基本コンセプトは「ストリートベスト」。メインとなるのは一般道や高速道路、時折走るワインディングロードである。つまり、日常使いでの快適性に加え、シャープな走り、それがオートエクゼが目指しているポイントなのだ。
「ル・マン」で勝つ条件は、24時間走るからこその「高度な信頼性」や「積極的な安全性」に加え、「ドライバーを疲れさせない性能」と言われるが、それこそまさにストリートに通じる性能である。そこを主軸としたメーカーなのだ。
ところが今回の「マツダ3用チューニングキットBP-06S」は少々毛色が違う。ワインディングロードからサーキット走行も視野に入れた通常とは異なるチューニングキットになっているのだ。
とはいえ、単純にエンジンをパワーアップしているのではなく、高い限界を誇るハンドリングマシンを目指して、クルマ全体の俊敏性やドライバーの意思の伝わりやすさにこだわり、硬派なユーザーに向けて開発されたものとなっている。
そのハンドリングマシンを試乗したのは本庄モーターパーク。あいにくウエット路面でのテスト走行となったが、終始安定したフィーリングで、わざと挙動を乱すような乗り方をしてみても、クルマが暴れ出すことはなく、動きが至極わかりやすいのがいい。
誤解を恐れずに言うと決して速いマシンではない。試乗したモデルがディーゼルエンジンにATという組み合わせを考慮しても、より似合うのは低中速トルクを積極的に活かせるワインディングロードかもしれない。サーキットと違い、路面状況が刻々と変わる道を走行するという状況だからこそ、狙ったところにスッと動いてくれるハンドリングと、多様な操舵にも安定感を保ってくれる足まわりは、よりメリットが高くなるハズだ。
また、各エアロパーツも奢られているが、元々評価の高いマツダ3のデザインを上手に生かしつつ、派手過ぎず地味すぎずまとめられているところは好感が持てる。そんなところも加えて、With 「Le Mans」 Sprits「すべての道は『ル・マン』に通じる」コンセプトどおりのマシンに仕上がっている1台だった。(文:竹岡 圭/写真:永元秀和)