レースモードで680ps、予選モードでは1088psを発生
31年前にポルシェカレラカップが始まって以来、カスタマーレーシングカーはスポーツカーメーカーであるポルシェにとって重要なジャンルであり、また4400台以上のカップカーが販売されるなどビジネスとしても大きな柱となっている。
今回発表されたコンセプトカー「ミッションR」は、カスタマーレーシングの電動化に向けての提案であり、フル電動マシンによるワンメイクシリーズ開催に向けての指標として注目される。
フル電動レーシングカーであるミッションRは、新開発の2つの電気モーターを搭載。フロントアクスルに最大で320kW(435ps)、リアアクスルに480kW(653ps)のパワーを供給する。
最高出力はレースモードで500kW(680ps)を発生し、予選モードでは800kW(1088ps)に達する。予選モードでは静止状態から100km/hまで2.5秒未満で加速し、最高速度は300km/hを超え、サーキットでは現行のポルシェ911 GT3カップと同じラップタイムで周回するという。
ダイレクトオイルクーリングを装備したバッテリーセルは約80kWhの容量を持ち、革新的な回生システムによって熱によるバッテリーの出力低下を抑えてパワーを持続する。
また、高度な900Vテクノロジーと充電システムによって、バッテリー残量5%からわずか15分で80%に充電することができる(最大340kWで充電することが可能)。
デザインも進歩的で、全長は4326mmと718ケイマンよりもわずかに短く、全幅はワイドな1990mmで、全高は1190mmと極めて低くなっている。
ボディにはノーズとリアウイングにドラッグリダクションシステム(DRS)を備えたポルシェアクティブエアロダイナミクス(PAA)を装備。エクソスケルトン(exoskeleton)と名付けられた新開発のカーボンルーフは、ドライバーの保護するケージと軽量なルーフパネルを組み合わた安全構造としている。
また持続可能性にも重点が置かれ、主に天然繊維強化プラスチック(NFRP)でできたエコロジー素材は、フロントスポイラーリップ、ディフューザー、サイドスカートをはじめ、インテリアドアパネル、リアバルクヘッド、シートなどインテリアにも幅広く使用されている。
インパネのディスプレイにはレース中の関連データが表示され、ステアリングコラム上のモニターにはサイドミラーカメラとセンタールームミラーカメラからの画像が表示される。車内にある他の多数のカメラを使用してエキサイティングなシーンを映し出すこともできる。
ポルシェは、すでにミッションE(2015年)とミッションEクロスツーリスモ(2018年)によって示したフル電動スポーツカーのコンセプトを、タイカン(2019年)とタイカンクロスツーリスモ(2021年)で具現化している。このミッションRではフル電動のカスタマーレーシングのコンセプトを示し、近い将来、実現していくことになるだろう。
ポルシェAGのオリバー・ブルーメ取締役会会長は「ポルシェは夢を実現する人々のためのブランドです。これはモータースポーツにも当てはまります。私達はサーキットで革新的な強さを体験し、新しい道を追求する勇気を示し、オーナーにスポーツカー然とした性能で喜びを与えます。フォーミュラE世界選手権への参戦に加えて、私達はここでE-モビリティの次の大きな一歩を踏み出します。このコンセプトモデルは、フル電動カスタマーモータースポーツに対する当社の展望を示します。ミッションRには、ポルシェを強くする全てのもの、つまり性能、デザイン、持続可能性が具現化されています」と語っている。