自動車メーカー純正で、スポーティなモデルに装着されていることが多い単筒式ショックアブソーバー。なんとなく高性能というイメージを持っているが、実際にどのような構造でどのようなメリットがあるのか解説しよう。

単筒式ショックアブソーバーに高圧ガスが封入されている

複筒式ショックアブソーバーが一般的だとすると、モータースポーツユースでよく用いられるショックアブソーバーに「単筒式」がある。開発者の名前をとって「ド・カルボン式」とも呼ばれ、複筒式のようなリザーバー室を持たない構造となっている。ショックアブソーバー本体内にオイルを満たしてその中をピストンが行き来する、という点で複筒式と同じだが、単筒式はリザーバー室のかわりにフリーピストンで区切られた高圧ガス室を持つ。

画像: スバルWRX STIもビルシュタインのショックを採用している。とくにフロントは担当の倒立式を採用している。

スバルWRX STIもビルシュタインのショックを採用している。とくにフロントは担当の倒立式を採用している。

複筒式は縮み側の減衰力を本体底部のベースバルブで出していたが、単筒式にベースバルブはない。そのため単筒式の減衰力は、伸び側、縮み側ともにピストンのバルブ部によって発生させる。伸び工程で、ピストン上室を加圧されるとオイルは伸び側を担当するバルブを通り抜け、減衰力を発生させながら下室に移動する。

このとき激しい走りをすると、複筒式の場合にリザーバー室の空気が本体のオイルの中に入り込むキャビテーションという現象を引き起こし、正規の減衰力を発生できないこともある。しかし、単筒式のガス室は別に仕切られており、キャビテーション現象を発生させない構造となっている。

画像: 「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載。

「きちんと知りたい!自動車サスペンションの基礎知識(飯嶋洋治 著/日刊工業新聞社)」より転載。

その逆に、縮み行程でオイルがピストンの下室から上室にバルブを通り抜ける。そのときの抵抗が減衰力となる。この場合、ピストン上室が負圧にならないようにガス室のガス圧力を高めてある。高圧ガスでフリーピストンが押されることによってサポートしてくるわけだ。

また単筒式の特徴としてショックアブソーバーを上下逆・・・本体側を上に、ピストンロッド側を下にするという倒立式にすることが可能となる。これは、下になるピストンを太いパイプのようなケースで支えることで、より強い強度を確保できる。ストラット自体が横力を受けるストラット式サスペンションで大きなメリットとなる。これも市販車での採用例がある。

画像: スバルWRX STIの卓越した走りも単筒式ショック(ビルシュタイン)で支えられている。

スバルWRX STIの卓越した走りも単筒式ショック(ビルシュタイン)で支えられている。

この他にも、複筒式と比較して単筒式は本体内のオイルを多くできることや、外筒を持たないため常に本体が外気に触れていることなどから、オイルへの負担も軽減される。そのために過酷なラリーをはじめとするモータースポーツで多く使われてきた。代表的なメーカーにビルシュタインやオーリンズがあり、こうしたブランドはモータースポーツで同じみだ。

デメリットはコストの増加や、一般走行時に高圧ガスの反力で乗り心地を悪化させるなどがある。そうした面で使用用途を選ぶとも言える。複筒式を新車標準装備するモデルが多いので、アフターパーツとして販売されている単筒式を装着して変化を楽しむのも面白い選択だ。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治)

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